にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 10-4

 輝王の声が甲板に響く。
「――ハハッ」
 仮面の下からくぐもった笑い声が聞こえてくると同時、ガクンと船体が揺れた。
 自然のままに吹いていた風に、方向性が生まれる。水をかき分ける音が下方から響いてきた。
 貨物船が動き出したのだ。
 目的地は、海を隔てた先にあるシティ――その中心部にある治安維持局だろう。
「言い争ってる暇はねえみたいだな……いいぜ。お前の提案を飲んでやる」
 イタコは縁に積まれていた木箱を強引に開けると、中からデュエルディスクを取り出し、右腕に装着する。高良と同じ、左利きということだ。
 輝王は周囲の雑音を意識の外へ追い出し、神経を集中させる。
 アカデミア時代。高良のプレイングは荒く、隙が多かった。直接対決では、生まれた隙を的確に突いた輝王が勝利することがほとんどだった。
 だが、高良は敗北の許されない大一番で、決して負けなかった。
 それこそ、漫画や小説の主人公のように。
「……始めるぞ」
「こっちの準備はとっくに出来てるつーの」
 甲板の中央で、2人は距離を取って向かい合う。
 イタコの立ち振る舞いは、至る所に高良の面影を感じさせる。
 ――意識するな、というのは無理だな。だが、惑わされるな。
 心中で言い聞かせ、輝王は眼前の相手を見据える。

「「デュエル!」」

 2つの音が重なったのは、果たしていつ以来だったろうか。









「先攻はもらうぞ。ドロー」
 コインの裏表を当てることに成功した輝王が、先攻を取る。
 ドローしたカードを加え、最初の手札は6枚。その中には、<AOJ>の効果を発揮していく上で重要なキーカード<エレメントチェンジ>がある。
 ――よし。
 輝王はざっといくつかの戦術プランを組み立て、モンスターカードを選び取る。
「<AOJサウザンド・アームズ>を召喚」
 先陣を切ったのは、左右3本ずつ、計6本の腕にそれぞれ形状の違う獲物を構えた機械の兵士だ。頭や両肩、両膝にも鋭利な刃が見える。

<A・O・J サウザンド・アームズ>
効果モンスター
星4/闇属性/機械族/攻1700/守   0
このカードは相手フィールド上に表側表示で存在する
光属性モンスターに1回ずつ攻撃をする事ができる。
光属性以外のモンスターと戦闘を行う場合、
そのダメージ計算前にこのカードを破壊する。

「永続魔法<機甲部隊の最前線>を発動。カードを1枚セットして、ターンエンドだ」
 <機甲部隊の最前線>は、機械族モンスターが戦闘で破壊され墓地に送られたとき、そのモンスターより攻撃力の低い同じ属性の機械族モンスターを特殊召喚できる。戦線維持にはうってつけのカードだ。

<機甲部隊の最前線>
永続魔法
機械族モンスターが戦闘によって破壊され自分の墓地へ送られた時、
そのモンスターより攻撃力の低い、
同じ属性の機械族モンスター1体を自分のデッキから特殊召喚する事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 伏せたカードは当然<エレメントチェンジ>。相手フィールド上の属性を変更できる永続罠だ。
 十分すぎるほど整った戦場。あとは、相手の出方次第だろう。

【輝王LP4000】 手札3枚
場:AOJサウザンド・アームズ(攻撃)、機甲部隊の最前線、伏せ1枚
【イタコLP4000】 手札5枚
場:なし

「俺のターンだ。ドロー」
 イタコがカードを引く。覗き穴の存在しないあの仮面を被った状態で、カードの確認ができるのだろうか。輝王は疑問に思ったが、それをわざわざ問うような間抜けな真似はしない。何しろ降霊術という不可思議な力を使う相手だ。常識では計り知れない方法で、視界を確保していると考えるのが妥当だ。
「<手札断殺>を使うぜ。互いのプレイヤーは手札を2枚墓地に送り、デッキからカードを2枚ドローする」

<手札断殺>
速攻魔法
お互いのプレイヤーは手札を2枚墓地へ送り、デッキからカードを2枚ドローする。

 先にカードを2枚選び墓地に送ったイタコに続き、輝王も手札から墓地に送るカードを選ぶ。
 相手の狙いは墓地肥やしか手札交換。あるいはその両方か。
 イタコ、輝王共に処理が完了したところで、イタコが次の動作に移る。
「<ドラグニティ―トリブル>を召喚!」
 現れたのは、鳥の頭を模した兜を被り、背に4枚の白き羽を生やす鳥人だった。

<ドラグニティ―トリブル>
効果モンスター
星1/風属性/鳥獣族/攻 500/守 300
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
自分のデッキからレベル3以下の
ドラゴン族モンスター1体を墓地へ送る事ができる

 久しぶりに見る高良の<ドラグニティ>モンスターに、輝王は感慨を覚える。まさか、今になってもう一度鳥人たちの姿を見ることになるとは、思ってもいなかった。
 だが、呑気に過去に浸っていられる状況ではない。
 ――あれが本当に高良のデッキだと決まったわけではないしな。
「<トリブル>が召喚に成功した時、自分のデッキからレベル3以下のドラゴン族モンスターを1体墓地に送ることができる。俺は<ドラグニティ―ファランクス>を選択する」
 イタコはデッキからカード1枚抜きとると、墓地へと送る。
 <ドラグニティ>は鳥獣族モンスターとドラゴン族モンスターの混成デッキだ。今墓地に送られた<ドラグニティ―ファランクス>はドラゴン族モンスター。ドラゴン族は、他のモンスターに装備されることによって効果を発揮するものが多く、その中でも<ドラグニティ―ファランクス>は装備状態から自らをフィールドに特殊召喚できる強力なチューナーモンスターだ。
「カードを1枚セットする。ターンエンドだ」
 低攻撃力の<ドラグニティ―トリブル>を場に残したまま、イタコのターンが終了した。

【輝王LP4000】 手札3枚
場:AOJサウザンド・アームズ(攻撃)、機甲部隊の最前線、伏せ1枚
【イタコLP4000】 手札3枚
場:ドラグニティ―トリブル(攻撃)、伏せ1枚