にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 10-5

 カードをドローしつつ、輝王はイタコの初手について考えを巡らせる。
 光属性以外のモンスターと戦闘を行うと自壊してしまう<AOJサウザンド・アームズ>に攻撃を仕掛けてこなかったのは、伏せカードを警戒してのことだろう。
 そうなると、ダメージを覚悟してまで<ドラグニティ―トリブル>の効果発動が必要だったのか。確かに、<ドラグニティ―ファランクス>は強力なカードだが……それとも、伏せカードを使いダメージを防ぐつもりだろうか。だとしたら、序盤に使わせるに越したことはない。
「<AOJガラドホルグ>を召喚。さらに伏せカード<エレメントチェンジ>を起動し、お前の場のモンスターの属性を光に変更する」
 橙色の装甲を纏う人型の機械が、2本の光の剣を構えて戦場に現れる。

<A・O・J ガラドホルグ>
効果モンスター
星4/闇属性/機械族/攻1600/守 400
光属性モンスターと戦闘を行う場合、
ダメージステップの間このカードの攻撃力は200ポイントアップする。

<エレメントチェンジ>
永続罠(オリジナルカード)
発動時に1種類の属性を宣言する。
このカードがフィールド上に存在する限り、
相手フィールド上の全ての表側表示モンスターは自分が宣言した属性になる。

 <エレメントチェンジ>によって、イタコのモンスターは全て光属性に変更された。これで、多くの<AOJ>モンスターは効果を発動することができる。
「相変わらず<エレメントチェンジ>におんぶにだっこか。変わんねえな、正義」
「…………」
 イタコの揶揄を聞き流す。確かにこの戦法はアカデミア時代から使ってきたものであるが、本当の高良なら、輝王の戦術がこれだけではないことを知っているはずだ。
 ――それを踏まえたうえで、挑発しているのかもしれないがな。
 いずれにしろ、付き合ってやる必要はない。
「戦闘を行う。<ガラドホルグ>で<トリブル>を攻撃!」
 二刀を水平に構えた<AOJガラドホルグ>が、スラスターを噴かせて飛んだ。
 <ドラグニティ―トリブル>は4枚の羽と両腕でその身を覆い隠す。
「<ガラドホルグ>は光属性モンスターと戦闘を行うとき、攻撃力が200ポイントアップする――プラズマブレード・ツヴァイ!」
 <AOJガラドホルグ>が持つ光の剣の出力が増し、刀身が膨れ上がる。
 標的の遥か手前で空中へと飛んだ機械兵は、着地と同時に剣を振り下ろす。
 バシュッ! と光が煌めく。
 瞬間、鳥人はその体に「X」の文字を刻まれていた。
「チッ……」

【イタコLP4000→2700】

 <AOJガラドホルグ>の攻撃力は1800に上昇していたため、1300ポイントのダメージが発生する。加えて、輝王の攻撃はまだ終わっていない。
「……伏せカードを使う気がないのなら、遠慮なくいかせてもらうぞ。<AOJサウザンド・アームズ>でダイレクトアタック!」
 <AOJサウザンド・アームズ>の得物が、一斉に牙を向いた。
「ぐっ!」
 イタコが仮面の下からうめき声を漏らす。
 微細に時間をずらし、6つの刃がイタコの体を切り裂いた。
 最も、その刃は立体映像だ。実際に肉体を傷つけたわけではない。

【イタコLP2700→1000】

 しかし、イタコのライフポイントは大きく削られた。これで先程の<ドラグニティ―トリブル>召喚のような、安易な手は打てないはずだ。
 追い詰めてなお、輝王は神経を尖らせる。
 これまでの経験からして――イタコが本当に高良の霊を降ろしているとしたら――逆境に立てば立つほど、あいつは強くなる。
「カードを1枚セット。ターンを終了する」

【輝王LP4000】 手札2枚
場:AOJサウザンド・アームズ(攻撃)、AOJガラドホルグ(攻撃)、機甲部隊の最前線、エレメントチェンジ(光指定)、伏せ1枚
【イタコLP1000】 手札3枚
場:伏せ1枚

「けっ、憎たらしいほど冷静だな。圧倒的に有利だってのに、微塵も隙を感じさせねえ」
「……いい反面教師がいたんでな」
「うるせえよ」
 仮面に隠され表情は分からないが――おそらくは苦笑いを浮かべているのだろう。
 そんなことを考えた時だった。

「――治安維持局の許可がない船舶の航行は禁止されている! 速やかに船を停止させ、投降せよ! 繰り返す! 直ちに船を停止させ――」

 スピーカーを通した大音量で、男の声が響き渡った。
 ――この声は、セキュリティ本部の人間か!?
 この貨物船を制圧するための作戦に失敗してから動きを見せなかった本部が、ここに来てようやく腰を上げたのだろうか。
「余所見してていいのか? 俺のターンだぜ」
 輝王が視線を外したのを目ざとく見つけたイタコが、すぐに挑発を飛ばしてくる。
 響き渡る声に対して何の反応もないということは、この事態は予測済みということか。または、レボリューションがどうなろうと知ったことではないという意志表示か。
 輝王がイタコに対し意識を戻すと同時――
 貨物船の前方から、爆発音が生まれた。