にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 10-6

「――ッ!?」
 爆発音が響いた方向に目を向ければ、空に向かって黒煙が立ち上っている。
 黒煙の位置から考えると、この船が攻撃を受けたわけではないようだ。
「……邪魔者は力ずくで消す、ってか。気に食わねえ連中だ」
 イタコが不快そうに吐き捨てる。高良が言いそうなセリフだった。
 大音量で響き渡っていた声は消え、時折不気味な炎が黒煙の中でちらつく。
 おそらく、停止勧告をしていたセキュリティの船が、サイコデュエリストの攻撃を受けたのだろう。状況の行方は気になるが、輝王にはそれよりも優先しなければならないことがある。
「おっと。ダメですよ高良さん。僕が体を貸すのは、あなたが復讐を果たすまで。それ以上は契約違反です」
 突然、イタコは輝王が最初に聞いた捉えどころのない声を出す。
「……分かってるよ」
 まるで一人芝居をするかのように頷いたイタコの声は、高良のそれに戻っていた。
 これも演技なのか――輝王は何度も自問した謎を、もう一度己に問う。
 だが、答えは出ない。
「――デュエルを続行するぜ。俺は<ドラグニティ―ブランディストック>を召喚」
 頭に矛を生やし、つるりとした水色の甲羅を纏った小さな竜が、イタコのフィールドに現れる。

<ドラグニティ―ブランディストック>
チューナー(効果モンスター)
星1/風属性/ドラゴン族/攻 600/守 400
このカードがカードの効果によって装備カード扱いとして装備されている場合、 
装備モンスターは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。

「そして、召喚した<ブランディストック>を墓地に送ることで、手札からこのモンスターを特殊召喚する――来いッ! <ドラグニティアームズ―ミスティル>!」
 <ドラグニティ―ブランディストック>が鳴き声を上げて光に包まれる。
 その光の中から姿を現したのは、鮮やかな黄色の鱗を纏い、その手に長剣を握ったドラゴンだった。尻尾の近くには鳥の羽を模した2枚の翼が生え、丁寧に姿勢を整えている。
 携える長剣は刃の中腹あたりがわずかに湾曲しており、リーチが読みづらい。

<ドラグニティアームズ―ミスティル>
効果モンスター
星6/風属性/ドラゴン族/攻2100/守1500
このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する
「ドラグニティ」と名のついたモンスター1体を墓地へ送り、
手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが手札から召喚・特殊召喚に成功した時、
自分の墓地に存在する「ドラグニティ」と名のついた
ドラゴン族モンスター1体を選択し、
装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。

「な……」
 高良の<ドラグニティ>デッキとは何度も対戦したが、初めて見るモンスターだ。
 驚きの中で、輝王はイタコの持つデッキが高良のものと違うことを考えるが、
「<ドラグニティアームズ>……俺がセキュリティに入ってからデッキに入れたカード。奴らを――レボリューションを追い詰めるために欲した、新しい力だ」
 イタコの言葉に、その考えを中断する。セキュリティに入ってからは、高良のデッキを見る機会がほとんどなかったからだ。
「<ミスティル>の効果発動! このカードが手札から召喚・特殊召喚に成功した時、墓地に存在する<ドラグニティ>と名のついたドラゴン族モンスター1体を、装備カード扱いとして装備することができる! 俺が選ぶのは、さっき墓地に送った<ブランディストック>だ!」
 墓地に送られた<ドラグニティ―ブランディストック>がぴょんと飛びだし、自分の首や腕を甲羅の中へ引っ込め、<ドラグニティアームズ―ミスティル>の握る長剣の柄の部分に装着される。
「そして、<ブランディストック>を装備したモンスターは、1度のバトルフェイズ中に2回攻撃をすることができる――バトル! <ドラグニティアームズ―ミスティル>で攻撃!」
 ――来る!
 <ドラグニティアームズ―ミスティル>が長剣を斜め下に構え、双翼を羽ばたかせる。
 豪風が生まれ、黄の鱗で覆われた体が一気に加速する。
 月明かりを反射する刃が、弧を描くように振るわれる。
 最初の標的になったのは、<AOJガラドホルグ>だ。
「……ッ!」
 <AOJガラドホルグ>は光の剣で迫る刃を防ごうとするが、それよりも速く<ドラグニティアームズ―ミスティル>の振るった剣が、機械兵の体を斬り上げる。<AOJガラドホルグ>の攻撃力は自身の効果で200ポイント上昇していたが、<ドラグニティアームズ―ミスティル>の2100には届かない。

【輝王LP4000→3700】

 破損した箇所からジジジ……と火花を散らし、橙色の機械兵が崩れ落ちる。
 それを見届けることなく、竜の剣士はスッと剣を引き、続く標的に狙いを定める。
 <AOJサウザンド・アームズ>が6本の得物で守りを固めるが――
 ゴッ! と。
 空気を裂いて突き出された剣は、重なりあった得物の隙間を通り抜け、<AOJサウザンド・アームズ>を貫いた。
 2体のモンスターが、同時に爆散する。
 その爆発を背に、<ドラグニティアームズ―ミスティル>はイタコのフィールドへと戻っていった。

【輝王LP3700→3300】

「これで、お前のモンスターは全滅だな」
 竜の戦士の活躍に、イタコは勝ち誇ったような声を上げる。
「……忘れたわけではあるまい。<AOJサウザンド・アームズ>が破壊され墓地に送られたとき、<機甲部隊の最前線>の効果を発動。攻撃力1700以下で闇属性の機械族モンスターを特殊召喚できる」
「そういやそのカードがあったな。で? 後続に何を呼んでくる?」
「俺が選択するのは――」
 イタコの場には<ドラグニティ―ブランディストック>を装備した<ドラグニティアームズ―ミスティル>と、伏せカードが1枚。そして、<エレメントチェンジ>がすでに発動しているため、イタコのモンスターは全て光属性になっている。
 光属性モンスターとの戦闘で破壊されたときにフィールド上のカードを2枚破壊する<A・ボム>を特殊召喚すれば、<ドラグニティアームズ―ミスティル>の脅威は取り除くことができるかもしれない。
 だが、仮に<A・ボム>を表側守備表示で特殊召喚したとして、2枚のカードが破壊されると知りながら、無策で攻撃を仕掛けてくるとも思えない。
 気になるのは、イタコの伏せカード。
 先のターン、<AOJサウザンド・アームズ>のダイレクトアタック時に発動しなかったということは、攻撃反応型や蘇生カードではない可能性が高い。
 そして、高良の<ドラグニティ>デッキには、「あの」カードが入っている。それが伏せられていたとしたら――
「――<AOJブラインド・サッカー>を守備表示で特殊召喚する」

<A・O・J ブラインド・サッカー>
効果モンスター
星4/闇属性/機械族/攻1600/守1200
このカードと戦闘を行った光属性モンスターの効果は無効化される。

「そいつで<ミスティル>の効果を無効にする気か? ったく、厄介なモンスター呼んでくれるぜ。俺はバトルフェイズを終了し、ターンエンドだ」
 言うものの、イタコの声色に緊張は感じられない。

【輝王LP3300】 手札2枚
場:AOJブラインド・サッカー(守備)、機甲部隊の最前線、エレメントチェンジ(光指定)、伏せ1枚
【イタコLP1000】 手札2枚
場:ドラグニティアームズ―ミスティル(攻撃・ブランディストック装備)、伏せ1枚