にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-06 サイドM】

「いいぜェ……来いよ、輝王ォ!」
 輝王の雰囲気が変わったことを察したのだろう。戒斗は犬歯を剥き出しにして吠える。
「永続罠<エレメントチェンジ>を発動。相手フィールド上のモンスターの属性を、光に変更する」

<エレメントチェンジ>
永続罠(オリジナルカード)
発動時に1種類の属性を宣言する。
このカードがフィールド上に存在する限り、
相手フィールド上の全ての表側表示モンスターは自分が宣言した属性になる。

「あァン? どォいうつもりだ?」
「まあ見ていろ――<ドラグニティ―レギオン>を召喚!」
 輝王が召喚したのは、屈強な肉体を持つ鳥人の戦士だった。肩や腕に分厚い鎧を装備しており、背中からは深緑の羽を生やしていた。

<ドラグニティ―レギオン>
効果モンスター
星3/風属性/鳥獣族/攻1200/守 800
このカードが召喚に成功した時、
自分の墓地に存在するレベル3以下の
「ドラグニティ」と名のついたドラゴン族モンスター1体を選択し、
装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。
自分の魔法&罠カードゾーンに存在する
「ドラグニティ」と名のついたカード1枚を墓地へ送る事で、
相手フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を破壊する。

「<レギオン>は召喚に成功したとき、墓地の<ドラグニティ>と名のついたレベル3以下のドラゴン族モンスター1体を装備することができる。<ドラグニティ―ファランクス>を装備し……<ファランクス>の効果発動! 自身を特殊召喚する!」
 体は小さいが、その闘志は隣の戦士に引けを取らない――両腕についた円形の盾をガチガチとこすり合わせながら、<ドラグニティ―ファランクス>が姿を現す。

<ドラグニティ―ファランクス>
チューナー(効果モンスター)
星2/風属性/ドラゴン族/攻 500/守1100
このカードがカードの効果によって
装備カード扱いとして装備されている場合に発動する事ができる。
装備されているこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「<レギオン>の効果を使わなくてよかったのか? そいつの効果なら、<ラビエル>を破壊できたはずだぜェ」
「……そのセリフは、対策があると言っているようなものだぞ」
「よォく分かってるじゃねェか。その通りだ」
 ――やはり、効果破壊を回避したことは正解だったようだ。
「だが、その雑魚2匹で<ラビエル>をどォにかできるとも……いや、お手並み拝見といかせてもらうか」
 途中で言葉を引っ込めた戒斗は、苦虫を噛み潰したような顔で視線を逸らす。どうやら嫌な記憶を思い出してしまったようだ。
 <ドラグニティ―レギオン>のレベルは3。<ドラグニティ―ファランクス>はレベル2のチューナーモンスター。
 一瞬、かつて最も頼りにしていたシンクロモンスターが頭をよぎるが、すぐに選択肢から外す。破壊効果は無効にされてしまうし、都合のいいときだけ過去のカードに頼るのは虫が良すぎる。
 それに、すでに<幻魔皇ラビエル>攻略のためのカードは手中にある。そのために<エレメントチェンジ>を発動したのだ。
 <ドラグニティ・レギオン>を召喚したことによって、相手フィールドには幻魔トークンが守備表示で特殊召喚されているが、あれは大した脅威にはならないだろう。
「なら、遠慮なく行かせて貰うぞ。魔法カード<シャイニング・アブソーブ>を発動!」
 輝王がそのカードを発動すると、<幻魔皇ラビエル>の体が眩いほどの光に包まれる。
 いや、正確に言えば違う。
 光に包まれているのではなく、<幻魔皇ラビエル>の内側から光が溢れているのだ。
「こいつは……!?」
 戒斗の目の色が変わる。
 溢れた光は2つの塊へと形を変え、輝王のモンスターたちに吸い込まれていく。
 2体の<ドラグニティ>が強烈な光のオーラを纏い、それぞれの拳を構える。
「……どんな手品を使いやがッた?」
「<シャイニング・アブソーブ>は、相手フィールド上の光属性モンスター1体の攻撃力を、自分フィールド上の全てのモンスターに加算することが出来る」

<シャイニング・アブソーブ>
通常魔法
相手フィールド上に表側表示で存在する
光属性モンスター1体を選択して発動する。
自分フィールド上に表側攻撃表示で存在する
全てのモンスターの攻撃力はエンドフェイズ時まで、
選択したモンスターの攻撃力分アップする。

「チッ、だから<エレメントチェンジ>を……」
 輝王が<AOJ>のデッキを使っていたころ、相手の場の光属性モンスター全てに攻撃できる<AOJサウザンド・アームズ>と共に愛用していたコンボだ。
 親友から受けついだデッキ――そのまま使うだけでは、親友の動きを再現するだけで自らの成長には繋がらない。そう思った輝王は、自分の色を出すために<エレメントチェンジ>や<シャイニング・アブソーブ>といったカードを投入したのだ。
「幻魔の力……光に変えて頂いたぞ」
 <幻魔皇ラビエル>の攻撃力4000――その数値が、<ドラグニティ―レギオン>と<ドラグニティ―ファランクス>の攻撃力に加算される。<ドラグニティ―レギオン>は5200、<ドラグニティ―ファランクス>は4500まで攻撃力が上昇した。
「――面白ェ」
 戒斗は、言葉少なに輝王の攻撃を待つ。
 その瞳には、デュエルが始まったころと変わらない揺るぎない自信が浮かんでいた。
 輝王が勝つためには、戒斗が抱く絶対の自信を突き崩さなければならない。
 途方もなく高い壁だが、やるしかない。
「――バトルだ。まずは<ドラグニティ―ファランクス>で<ラビエル>を攻撃!」
 小さな竜が、背中の羽を懸命に羽ばたかせ、幻魔の皇へと向かっていく。
 その背中は、巨大な敵に対する恐れなど微塵も感じさせない。
 勇気に満ちた光を宿した<ドラグニティ―ファランクス>が、闇の根源を討つべく空を翔ける。
 そこで、戒斗は動いた。
「残念だが、こっから先は通行禁止だァ! 罠カード<セキュリティー・ボール>発動ォ! 攻撃モンスターの表示形式を変更するぜェ!」

<セキュリティー・ボール>
通常罠
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
その攻撃モンスター1体の表示形式を変更する。
相手の魔法・罠カードの効果によって、
セットされたこのカードが破壊され墓地へ送られた時、
フィールド上に存在するモンスター1体を選択し破壊する。

 けたたましい警告音を響かせながら、宙を飛ぶ球体型のガードロボットが現れる。
 その音に驚いた<ドラグニティ―ファランクス>は、空中でバランスを崩して落下してしまった。
(無効系のカウンター罠ではなく、攻撃を防ぐカードだったか)
 しかし、もう1枚の伏せカードが破壊を無効にするものである、という予測は正しいはずだ。ならば、二撃目を防ぐ術はない。
「続けて攻撃を行なう! 頼むぞ、<レギオン>!」
 主人の命に対し、力強く頷いた鳥人の戦士は、うずくまる小竜を飛び越して、魔皇へと直進する。
「――迎え撃てェ! <ラビエル>!」
 戒斗がそう叫ぶと、幻魔の皇は巨大な右腕を振り上げた。
 同時、<ドラグニティ―レギオン>も右拳を強く握り、中段の位置に構える。
 構えた拳に<シャイニング・アブソーブ>によって得た光が収束し、<幻魔皇ラビエル>のそれに引けを取らないほどの巨大な拳を作り上げる。
 対し、<幻魔皇ラビエル>の拳も、あらゆるものを呑み込み押し潰すブラックホールのような、黒色のオーラを纏う。

「勝負だ――永洞戒斗!」
「潰してやるよ――輝王ォ!!」

 光と闇。
 2つの拳がぶつかり合う――
 その瞬間だった。

 風が、氷の粒を運んできた。

 ガキィン! と甲高い音が響き渡ったかと思うと、今まさに衝突しようとしていた2体のモンスターが、一瞬にして氷漬けになる。
 足元を冷気が駆け抜け、戦いの熱に浮かされていた空間が一気に凍りつく。
「チッ、どォいうことだ」
 突然の現象に戒斗は警戒心を強めているようだったが、輝王はこの現象に見覚えがあった。

「お楽しみ中のところ悪いけど、被害者同士で争っている場合ではないの。だから、強制的にデュエルを中断させてもらったわ」

 しかし、聞こえてきたのは予想とは違う女性の声だった。