にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-05 サイドM】

「……まァこんなもンだろ。本来ならこの空間に収まりきらないほど巨大なんだが、俺もちッとは力をセーブする術を磨いておかねェとなァ。どッかの優等生がうるさくて敵わねェからな」
 つまり、戒斗は力をセーブすることで、本来のサイズよりも小さな<幻魔皇ラビエル>を実体化させたということだ。
「これで力を抑えている、か。恐ろしいな」
 幻魔の皇が発する強大な圧迫感に身を晒しながら、輝王はため息を吐く。
 どの程度力をセーブしているのかは分からないが、<幻魔皇ラビエル>の本当の姿は、これよりもさらに巨大なものなのだろう。当然、発するプレッシャーも、今とは比較にならないほど強力になっているはずだ。並の人間だとしたら、<幻魔皇ラビエル>の姿を見ただけで卒倒してもおかしくはない。
 ただ、戒斗の<幻魔皇ラビエル>からは、不思議と邪気を感じなかった。
 そこに在るのは、純粋な「力」を具現化させた象徴。
 自分の力を持って、他者を叩き潰す。そこに遺恨や邪念は一切存在しない。
(……いい決闘者だな)
 かつて復讐のために力を振るっていた輝王にとっては、今の戒斗の姿は、ある種の理想なのかもしれない。
「<幻魔皇ラビエル>の効果を使うぜェ。場のモンスター1体……<幻銃士>をリリースすることで、その攻撃力分<ラビエル>の攻撃力を上昇させる!」
 <幻銃士>の体が紫の光を放つ炎へと変わり、魂を代価として生まれたその炎を、<幻魔皇ラビエル>は軽々と握りつぶす。
 直後、炎の色と同じ紫色のオーラが<幻魔皇ラビエル>の全身に宿り、その肉体をさらに強固なものへと変える。
「攻撃力、5100……!」
「そんなチンケなドラゴンじゃ、<ラビエル>の足元にも及ばねェぞ! <ラビエル>!<ガジャルグ>をぶッ潰せェ!!」
 主人の許可を得て、ついに幻魔の力が解き放たれる。
 <幻魔皇ラビエル>が右腕を振り上げると、その屈強な腕とぶつかった天井の照明が割れ、ガシャガシャとガラス片が降り注ぐ。
 照明が消えたことで、より闇が深くなる。
 深紅の竜にまたがった騎士は、攻撃の気配を鋭敏に感じ取り、回避のために動き始める。
 だが。
 その拳の前に、逃げ場など存在しない。
 圧倒的な質量。

「天界蹂躙拳、ッてなァ!」

 ゴシャアアアアアアア! という隕石が落下してきたかのような轟音と共に、<幻魔皇ラビエル>の拳が、<ドラグニティナイト―ガジャルグ>を巻き込んで地面を穿つ。
 コンクリートの地面がいとも簡単に砕かれ、巻き起こった衝撃波が、破片や粉塵を舞い上げる。地面が崩落してもおかしくない程の衝撃だった。
 攻撃を終えた<幻魔皇ラビエル>が拳をどけると、そこには巨大なクレーターが出来上がっていた。無論、そこに<ドラグニティナイト―ガジャルグ>の姿は無い。
 実体化した幻魔の攻撃は、当然竜騎士の主にもダメージを与える――
 そのはずだった。
「……加減したとはいえ、<ラビエル>の攻撃を受けてそんなに涼しい顔されるとなァ。ムカつくぜ、オイ」
 言葉とは対照的に、挑戦的な笑みを広げながら、戒斗が吐き捨てる。

【輝王LP4000→1300】

 戒斗の指摘通り、輝王はすさまじいほどの衝撃波が荒れ狂っている中でも、無傷のまま微動だにしていなかった。
「……己の弱さを痛感したときから、自分の身を守る術を徹底的に鍛えたからな。これくらいは防いでみせるさ」
「へッ、言うねェ」
 輝王が身に着けた力――<術式>は、サイコデュエリストとは違い、デュエルに関しては何の役にも立たない力だ。
 しかし、実体化した攻撃から自分の身を守るくらいのことはできる。
 かつて、自分よりも年下の男に気遣われ、意図せず彼の足を引っ張ってしまったことが、輝王の心に大きなしこりを残していた。だからこそ、輝王は<術式>の力を得たのだ。
「けど、守ってばかりじゃ勝てないぜェ。俺はカードを2枚伏せて、ターンを終了する。さァ、<ラビエル>を倒してみせろォ!」
 幻魔という強大な力に酔いしれることなく、戒斗は輝王に向けて叫ぶ。
 大きく局面が動いたこのターン。格好の攻め時と言える。

【戒斗LP4000】 手札2枚
場:幻魔皇ラビエル(攻撃)、伏せ2枚
【輝王LP1300】 手札4枚
場:伏せ2枚

「俺のターン!」
 <幻魔皇ラビエル>が発する重圧の中、輝王はカードをドローする。
 輝王の有する<ドラグニティ>モンスターたちでは、攻撃力4000の壁を越えることはかなり厳しい。
 だとすれば、戦闘破壊以外の方法で突破するしかないが――
 幸い<幻魔皇ラビエル>には、効果に対する耐性は無い。容易に破壊できる。
(……しかし)
 戒斗は、それを承知の上で<幻魔皇ラビエル>を召喚したはずだ。
 先程の<マジカルシルクハット>からのコンボで、戒斗はモンスターカード以外のカードを、2枚手札に加えている。手札に加えるカードは、<幻魔皇ラビエル>を呼ぶことを前提にして選んでいる可能性が高い。
 戒斗の場に伏せられている2枚のカードは、確実に幻魔の皇を援護するためのものだろう。
 モンスターを除去する手段として、一番簡単なのは「モンスターの効果破壊」だ。破壊効果を持つカードは豊富で、たった1枚でフィールド上のモンスターを全て破壊できる魔法カードも存在する。その反面、破壊に対するカウンターカードも多い。戒斗が伏せたカードの1枚は、確実に破壊を防ぐカードであろう。
 気になるのは、もう1枚のカードだ。魔法・罠カードの発動を無効にするカウンター罠か、それとも「対象に取る効果」を無効にするカードか……
(――推測はここまでだな。後は、仕掛けるのみ!)