にわかオタクの雑記帳

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遊戯王オリジナルstage 【幕間-2】

 <軍神ガープ>が放った突きが化け物の胴を貫くと、息絶えた化け物の体は泥のように溶け、地面へと吸い込まれて行った。
「チッ、この程度じゃウサ晴らしにもなりゃしねェな。<ラビエル>を呼ぶまでもねェ」
 舌打ちと共に侮蔑の言葉を漏らした永洞戒斗の周囲に、すでに敵の姿はない。
 トカゲ頭とのデュエルの後、突然正体不明の化け物群に襲われた戒斗、輝王、愛城、ティトの4人。輝王が転送装置の元へ走るのを見届けたあと、残った3人はそれぞれ単独で戦い始めた。仲たがいしたわけではなく、それが最善だと判断したのだ。3人の力は強すぎるがゆえに、下手に連携を取ろうとすると、互いの力に干渉してしまう恐れがある。だからこそ、個々で戦ったほうが気兼ねなく力を振るえるのだ。
 愛城は最初の場所に残り、ティトは<氷結界の龍グングニール>を実体化させ、トカゲ頭を連れて井戸の天井目がけて飛び去って行った。
 戒斗は、壁の一部が崩落したことによって存在が明るみになった横穴へと進み、化け物共の発生源であろう奇妙な装置を破壊し、残党の掃討を行っていたのだが――
「……輝王を行かせるべきじゃなかったかもなァ」
 トカゲ頭の言うことを信じるなら、彼が向かった先にはこの世界を作り出した主――戒斗たちをこの世界に引きずり込んだ張本人が待ち構えている。おそらく、優等生の野郎が迂闊に信じたアイツだ。気弱な風貌な裏に、何かを隠した青年。ここに残るよりも、その「主様」とデュエルしていたほうが、いくらかマシだったかもしれない。
 晴れない気持ちを舌打ちで表すと、戒斗は<軍神ガープ>の実体化を解き、元来た道を引き返し始める。この分なら、愛城やティトもさして苦戦することなく化け物の群れを撃破しているだろう。戒斗が通ってきた横穴はそれなりの広さで、大人4人が並んで歩いても余裕があるくらいの幅と高さを備えていた。非常用の隠し通路としては広すぎるため、元々繋がっていた道を何らかの理由で封鎖したのだろう。
 そんなことを考えながら歩いていると、
「……あン?」
 ふと、壁の一部が目にとまった。
 注意して見なければ分からないレベルだが、塗装が若干新しい。大きさ的には、成人男性1人が通れるぐらい。
(……ここにも隠し通路があンのか?)
 不審に思った戒斗は、再度<軍神ガープ>を実体化させる。
「<ガープ>!」
 戒斗がその名を呼ぶと、甲冑を纏ったような甲殻の悪魔は、両肩から生えた巨大な2本の爪を、壁に向かって突き刺す。
 放たれた爪は苦もなく貫通し、ガラガラと音を立てて壁を構成していたブロックが崩れる。その先には、暗闇に覆われた通路が続いていた。
「上等じゃねェか」
 戒斗はニヤリと口元を釣り上げて喜色を顕わにすると、躊躇せず暗闇の中を進んでいく。今度は、<軍神ガープ>の実体化は解かない。随伴させ、不意の攻撃に備える。
 隠し通路の中は暗かったが、完全な闇というわけではない。天井からわずかに日の光が差し込んでいる。戒斗にとっては、それだけの明かりがあれば十分だった。
 5分ほど歩くと、突き当たりであろう小部屋に出る。
 そこには、輝王が使ったものと同型の転送装置が鎮座していた。
「……へェ」
 見たところ、稼動はしていないが目立った損傷も見られない。傍らに置かれたコンソールを操作すれば、すぐにでも動きそうだ。
 しかし、この転送装置が「主様」――輝王が向かった元へと転送してくれるものとは限らない。もし、敵が仕掛けた罠だった場合、戒斗は間違いなく窮地に陥ることになるだろう。
「まァ、どっちにしても俺にとっちゃ好都合だなァ。乱入するも良し、敵の手中に放り込まれるのも悪くねェ」
 そう言って転送装置を軽く叩いた戒斗は、その鋭い瞳にギラついた光を宿し、コンソールの操作を始めた。