にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 7-1

「皆本……創志……!?」
 <ジュラック・タイタン>を従えた大原竜美は、信じられない光景を見ているかのように呻く。
 火球が残した熱気を払うように、海から吹きつける潮風が、創志の全身を包む。
 創志は自分の首元に軽く触れる。そこには、黒のチョーカーが巻きつけられていた。
(……とりあえずは、実戦でも使いものになるみたいだな)
 左腕に装着したデュエルディスクの方へ視線を動かす。そこには<攻撃の無力化>というカードがセットされていた。
 現実に干渉してくるサイコデュエリストの攻撃。下手な兵器よりも強力な攻撃を防ぐために、一番効果的なのは――
 同じ土俵に上がることだ。
 セラから渡された「試作品」の具合は、特に問題ないようだった。
「あんたは光坂に負けたあと、支部の爆破に巻き込まれたはず……どうやって生き延びたの?」
「悪いが詳しくは話せねえんだ。俺を助けてくれたヤツから口止めされててな。どうしても知りたいっていうんなら――」
 少年の纏う空気が変わる。
「俺を倒してみろ」
 竜美のように熱気を起こすわけでも、ティトのように冷気を纏うわけでもなかったが、少年の視線には相手を畏怖させるだけの力があった。
「……ちょうどいいわ。そこのグズのせいでムラムラしてたとこだし。アンタでウサ晴らしをさせてもらおうかしら。色々訊きたいこともあるしね」
 表情から戸惑いを消した竜美は、獲物を狩る獣のように舌なめずりをする。
「そうし……? 本当に、そうしなの?」
 状況についていけず呆けていたティトが、か細い声で呟く。
 創志は首肯したあと、銀色の少女の姿を見た。
 灰色の瞳は涙に濡れ、赤くなってしまっている。肌も病的なまでに白く、腹部の衣服は裂かれ、痛々しい赤い筋が戦いの爪痕を残していた。
 ……彼女をこんな状態にしたのは、自分が弱かったから。
 錆びついた鉄のような、苦い後悔がじわりと心中に広がる。
「ごめんな、ティト」
 こらえ切れなくなり、謝罪の言葉を漏らす。謝ったところでティトの負った傷が癒えるとは思えなかったが、それでも口に出さずにはいられなかった。
 しかし、創志は謝るためにここに来たのではない。

「もう、お前に辛い思いはさせない。今度は……今度こそ、俺がお前を守る」

 果たせなかった「約束」を果たすために、創志は再び剣を取ったのだ。
「絶対にだ」
 決意を確かめるように、創志は強く宣言する。
「……うん」
 かすかな喜びを交えながら、ティトが頷く。
 それを見ていた竜美は、創志たちを侮蔑するような視線を向ける。
「ハッ! 口だけなら何とでも言えるわ! 『守る』なんて甘っちょろい戯言を抜かすガキに、世間の厳しさってヤツを教えてあげる!」
 ディスクにセットされたカードを外し、デッキに戻した竜美は、創志に噛みつくように吠える。
「私は光坂のように甘くはないわよ。確実に殺してあげるわ……焼死か、圧死かくらいは選ばせてあげるけどね!」
「せっかく拾った命だ――ここでくたばる気はねえ!」
 互いにデッキからカードを5枚引き、次の戦いが始まる。
「「デュエル!!」
 少女を守るために――そして、もう1つの目的を胸に、途切れていた線が再び軌跡を描きだす。
 ――終着点は、近い。