遊戯王 New stage 27
奥歯を噛みしめ、創志は目の前の光景をただ見ているしかない。
<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>の効果では、<聖なるバリア―ミラーフォース―>を防ぐことはできない。
このまま機竜が破壊されたとしても、効果により墓地の<ジェネクス>または<AOJ>モンスターを蘇生させることができるが、それでは<レアル・ジェネクス・ジエンド>の餌食になるのが目に見えている。
しかし、創志に打つ手はない。
創志が持つのは<レアル・ジェネクス・ジエンド>を倒すカードであって、<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>を守るカードではない。
だから。
「光坂……お前は言ったな。『君たちを侮り勝ちを逃すほど自分は愚かではない』と。だとしたら、分かっていたはずだ。俺たちは1人で戦っているのではない」
声を発したのは、創志の隣に立つ青年。
「皆本創志は俺に力を貸せと言った。まさか、俺の力が<ウィキッド・リボーン>だけだと思っていたわけではあるまい?」
光坂の表情が揺らぐ。
ここで驚くのだとしたら――光坂は分かっていなかったのだ。
自分が、2人の決闘者を相手にしているのだということを。
「伏せカードを起動――<デストラクション・ジャマー>! 手札を1枚捨て、フィールド上のモンスターを破壊する効果を無効化し、それを破壊する!」
ガラスが割れるような音が響き、闇の悪魔を守っていた障壁が砕け散る。
<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>の効果では、<聖なるバリア―ミラーフォース―>を防ぐことはできない。
このまま機竜が破壊されたとしても、効果により墓地の<ジェネクス>または<AOJ>モンスターを蘇生させることができるが、それでは<レアル・ジェネクス・ジエンド>の餌食になるのが目に見えている。
しかし、創志に打つ手はない。
創志が持つのは<レアル・ジェネクス・ジエンド>を倒すカードであって、<A・ジェネクス・クレアシオン・ドラグーン>を守るカードではない。
だから。
「光坂……お前は言ったな。『君たちを侮り勝ちを逃すほど自分は愚かではない』と。だとしたら、分かっていたはずだ。俺たちは1人で戦っているのではない」
声を発したのは、創志の隣に立つ青年。
「皆本創志は俺に力を貸せと言った。まさか、俺の力が<ウィキッド・リボーン>だけだと思っていたわけではあるまい?」
光坂の表情が揺らぐ。
ここで驚くのだとしたら――光坂は分かっていなかったのだ。
自分が、2人の決闘者を相手にしているのだということを。
「伏せカードを起動――<デストラクション・ジャマー>! 手札を1枚捨て、フィールド上のモンスターを破壊する効果を無効化し、それを破壊する!」
ガラスが割れるような音が響き、闇の悪魔を守っていた障壁が砕け散る。
これで、機竜の行く手を阻むものはない。
ダメージステップ。創志は1枚のカードを選び取った。
「――速攻魔法発動! <リミッター解除>!!」
数々の危機を超えてきた、必殺の一撃を叩きこむために。
ダメージステップ。創志は1枚のカードを選び取った。
「――速攻魔法発動! <リミッター解除>!!」
数々の危機を超えてきた、必殺の一撃を叩きこむために。
<リミッター解除> 速攻魔法(制限カード) このカード発動時に、自分フィールド上に表側表示で存在する 全ての機械族モンスターの攻撃力を倍にする。 この効果を受けたモンスターはエンドフェイズ時に破壊される。
「光坂! これが俺たちの意志だ! ジェネシック・ブリットッ!!」
限界を超える力を手に入れた機竜の体全体が、眩い閃光に包まれる。
その姿は、刃よりも弾丸。
光の弾丸が、闇を貫く。
悪魔の胸に風穴を開ける。
自らを模っていた鎧を失った闇が、行き場をなくしてざわざわと蠢く。
そして、消えていく。
戦場を覆っていた闇が、夜空へと溶けていく。
「終焉」が、終わっていく。
その姿は、刃よりも弾丸。
光の弾丸が、闇を貫く。
悪魔の胸に風穴を開ける。
自らを模っていた鎧を失った闇が、行き場をなくしてざわざわと蠢く。
そして、消えていく。
戦場を覆っていた闇が、夜空へと溶けていく。
「終焉」が、終わっていく。
【光坂LP800→0】
創志は「いつもの日常」を取り戻すために、勝利を掴んだ。
「――なるほど。僕の、負けか」
その意志に屈した男は、力無く空を見上げた。
光坂の瞳に浮かぶ感情は、創意には読むことのできないものだった。
「――なるほど。僕の、負けか」
その意志に屈した男は、力無く空を見上げた。
光坂の瞳に浮かぶ感情は、創意には読むことのできないものだった。
「そうしっ!」
駆け寄ってきたティトに抱きつかれ、創志はデュエルが終わったことに気がついた。
――勝ったんだよな、俺たち。
あれほど貪欲に勝利を求めていたのに、いざそれが手に入ると実感が湧かない。
「そうし……よかった……」
胸に顔をうずめ、小刻みに体を震わせるティト。
そんな彼女の頭を撫でながら、
「……来てくれたんだな、ありがとう」
創志は礼を言う。<レアル・ジェネクス・ジエンド>の攻撃を受けたとき、ティトたちの声が届かなければ、創志はあのまま再起不能になっていただろう。
胸の中で、ティトが「うん」と頷くのが分かった。
「大したもんだ。まさか、本当に勝っちまうとはな」
リソナを背負った神楽屋が、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
「言ったろ。無理を通して、無茶をして、約束を果たすって」
「……にしても、無茶しすぎだ。少しは見ているヤツの気持ちも考えろ」
ティトは、安心して創志に身をゆだねている。
守ると言ったのに、この少女には心配をかけてばかりだ。
「すまぬ、輝王……わしの代わりに……」
「――俺はお前の手助けをするためにここに来た。なら、お前の代わりに戦うのは当然だろう? 謝られる筋合いはない」
「ぬ……じゃが……」
隣では、輝王と切が何かを言いあっている。
輝王の口調はぶっきらぼうだったが、その顔に穏やかな笑みが浮かんでいるのを創志は見逃さなかった。
「それに、お前には俺より先に駆け寄らなければならない人がいるはずだ」
「あ……」
輝王の視線の先には、横たわるレビンの姿があった。そのそばには、しゃがみ込むジェンスがいる。
切の視線に気付いたのか、ジェンスはこちらに振り向くと、
「気を失っているだけだ。命に別条はない」
大声で叫んだ。それを聞き、切は胸をなでおろす。
「……魔王討伐を目指した勇者が、ただの村人にやられちゃうとはね。実に滑稽な舞台だった」
空を見上げたまま、誰に向けるでもなく光坂は告げる。
「だけど、認めよう。君たちの勝ちだ。現時点を持って、レボリューションはその活動を――」
駆け寄ってきたティトに抱きつかれ、創志はデュエルが終わったことに気がついた。
――勝ったんだよな、俺たち。
あれほど貪欲に勝利を求めていたのに、いざそれが手に入ると実感が湧かない。
「そうし……よかった……」
胸に顔をうずめ、小刻みに体を震わせるティト。
そんな彼女の頭を撫でながら、
「……来てくれたんだな、ありがとう」
創志は礼を言う。<レアル・ジェネクス・ジエンド>の攻撃を受けたとき、ティトたちの声が届かなければ、創志はあのまま再起不能になっていただろう。
胸の中で、ティトが「うん」と頷くのが分かった。
「大したもんだ。まさか、本当に勝っちまうとはな」
リソナを背負った神楽屋が、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
「言ったろ。無理を通して、無茶をして、約束を果たすって」
「……にしても、無茶しすぎだ。少しは見ているヤツの気持ちも考えろ」
ティトは、安心して創志に身をゆだねている。
守ると言ったのに、この少女には心配をかけてばかりだ。
「すまぬ、輝王……わしの代わりに……」
「――俺はお前の手助けをするためにここに来た。なら、お前の代わりに戦うのは当然だろう? 謝られる筋合いはない」
「ぬ……じゃが……」
隣では、輝王と切が何かを言いあっている。
輝王の口調はぶっきらぼうだったが、その顔に穏やかな笑みが浮かんでいるのを創志は見逃さなかった。
「それに、お前には俺より先に駆け寄らなければならない人がいるはずだ」
「あ……」
輝王の視線の先には、横たわるレビンの姿があった。そのそばには、しゃがみ込むジェンスがいる。
切の視線に気付いたのか、ジェンスはこちらに振り向くと、
「気を失っているだけだ。命に別条はない」
大声で叫んだ。それを聞き、切は胸をなでおろす。
「……魔王討伐を目指した勇者が、ただの村人にやられちゃうとはね。実に滑稽な舞台だった」
空を見上げたまま、誰に向けるでもなく光坂は告げる。
「だけど、認めよう。君たちの勝ちだ。現時点を持って、レボリューションはその活動を――」
「待ってください光坂さん。まだ戦いは終わってません」
新たに響いた声に、弛緩していた空気が一気に張り詰める。
澄んではいるが、その中にとてつもない狂気を隠した声色だ。
「僕がいる限り――革命の楔は砕けない」
姿を現したのは、漆黒のスーツを身にまとった少年。
創志よりもやや背が低く、線の細さを隠すように全身に力を漲らせながら歩いてくる。
「勝負だ、兄さん。僕はあなたを倒し、この腐った世の中を変える」
「信二……!」
そうだ。
幕を引くには、まだ早すぎる。
澄んではいるが、その中にとてつもない狂気を隠した声色だ。
「僕がいる限り――革命の楔は砕けない」
姿を現したのは、漆黒のスーツを身にまとった少年。
創志よりもやや背が低く、線の細さを隠すように全身に力を漲らせながら歩いてくる。
「勝負だ、兄さん。僕はあなたを倒し、この腐った世の中を変える」
「信二……!」
そうだ。
幕を引くには、まだ早すぎる。