遊戯王 New stage サイドS 7-10
海から吹いてくる温い潮風が、戦いの空気を押し流していく。
パラパラと<ジュラック・メテオ>の破片が降り注ぐ中、創志はデュエルディスクからカードを取り外す。
ソリッドビジョンは消えたが、彼らが残した戦いの爪痕は、甲板のいたるところにしっかりと残されていた。
「…………」
無言のまま、竜美に向かって一歩を踏み出す。
パラパラと<ジュラック・メテオ>の破片が降り注ぐ中、創志はデュエルディスクからカードを取り外す。
ソリッドビジョンは消えたが、彼らが残した戦いの爪痕は、甲板のいたるところにしっかりと残されていた。
「…………」
無言のまま、竜美に向かって一歩を踏み出す。
「偽善者」
竜美の低い声が、創志の鼓膜を突き刺す。
その一言で、両足が地面に縫いつけられたような錯覚に陥る。
「同情してるんでしょ? そして、私の過去を根掘り葉掘り聞こうとしてる」
違う、と否定したかったが、声は出なかった。あそこまで「勝ち」にこだわっていた理由を訊こうと思ったのは確かだった。
「……昔の事を語るのは好きじゃないの」
そう言った竜美は、くるりと身をひるがえし、創志たちに背を向ける。
深紅のロングコートを纏った背中は、とても小さく見えた。
その一言で、両足が地面に縫いつけられたような錯覚に陥る。
「同情してるんでしょ? そして、私の過去を根掘り葉掘り聞こうとしてる」
違う、と否定したかったが、声は出なかった。あそこまで「勝ち」にこだわっていた理由を訊こうと思ったのは確かだった。
「……昔の事を語るのは好きじゃないの」
そう言った竜美は、くるりと身をひるがえし、創志たちに背を向ける。
深紅のロングコートを纏った背中は、とても小さく見えた。
「だから、私なんかに手を差し伸べるのはやめなさい。アンタが守らなきゃいけない人は……他にいるでしょ」
創志は面食らうと、ガリガリと頭を掻く。
「……エスパーかよ」
まさに、竜美の言うとおりだ。
目の前に「あんな」顔をした人がいるなら、事情を訊かずにはいられない。助けずにはいられない。手を差し伸べずにはいられない。
「単純なのよ。顔を見ればすぐ分かる。あのとき……支部の中で会ったときも、弟のことが気になって仕方がない、って顔してたわ」
竜美が呆れ気味に呟く。
他人を支えることで、生きられる。
それが皆本創志という人間だった。
「そうし……」
近くに寄ってきたティトが、パーカーの裾をきゅっ、と掴む。
創志は「待ってろ」という意味を込めてティトに視線を送る。
「弟は……皆本信二はどこだ?」
ここに来たもう一つの目的を果たすために、問う。
「さあ? 光坂と一緒にいるんじゃない? ここのところあの2人はべったりだったから……まあ、この船の中にいるのは確かよ」
投げやりな答えを返してくる竜美に対し、
「――それだけ分かれば十分だ。サンキュな」
創志は軽く礼をし、船内に通じる階段に向かって歩を進める。
「……言っておくけど」
それを呼びとめるように、背を向けたままの竜美が告げる。
「あの子は……皆本信二は、自分の意思でここにいるわ。光坂に洗脳されたわけじゃない。アンタの助けなんて必要としてないのよ。それでも行くの?」
「当たり前だろ」
立ち止った創志は、一度深呼吸をしたあと、自分の覚悟を口にする。
「あいつが何考えてるかなんて関係ないんだ。俺は、何があろうと信二を連れ戻す」
まだチリチリと焼けるような痛みが残る頭の中を、強引にクリアにする。
「……エスパーかよ」
まさに、竜美の言うとおりだ。
目の前に「あんな」顔をした人がいるなら、事情を訊かずにはいられない。助けずにはいられない。手を差し伸べずにはいられない。
「単純なのよ。顔を見ればすぐ分かる。あのとき……支部の中で会ったときも、弟のことが気になって仕方がない、って顔してたわ」
竜美が呆れ気味に呟く。
他人を支えることで、生きられる。
それが皆本創志という人間だった。
「そうし……」
近くに寄ってきたティトが、パーカーの裾をきゅっ、と掴む。
創志は「待ってろ」という意味を込めてティトに視線を送る。
「弟は……皆本信二はどこだ?」
ここに来たもう一つの目的を果たすために、問う。
「さあ? 光坂と一緒にいるんじゃない? ここのところあの2人はべったりだったから……まあ、この船の中にいるのは確かよ」
投げやりな答えを返してくる竜美に対し、
「――それだけ分かれば十分だ。サンキュな」
創志は軽く礼をし、船内に通じる階段に向かって歩を進める。
「……言っておくけど」
それを呼びとめるように、背を向けたままの竜美が告げる。
「あの子は……皆本信二は、自分の意思でここにいるわ。光坂に洗脳されたわけじゃない。アンタの助けなんて必要としてないのよ。それでも行くの?」
「当たり前だろ」
立ち止った創志は、一度深呼吸をしたあと、自分の覚悟を口にする。
「あいつが何考えてるかなんて関係ないんだ。俺は、何があろうと信二を連れ戻す」
まだチリチリと焼けるような痛みが残る頭の中を、強引にクリアにする。
「あいつの兄貴としてな」
「……まったく。無茶苦茶にもほどがあるわ」
創志の言葉を聞き、竜美は乾いた笑いを漏らした。
「――行きなさい、偽善者。私の気が変わらないうちにね」
創志の言葉を聞き、竜美は乾いた笑いを漏らした。
「――行きなさい、偽善者。私の気が変わらないうちにね」
創志とティトの姿が船内に消える。
一人ぼっちになった甲板で、竜美は夜空を見上げる。
たった一度の敗北で、竜美の居場所は崩れてしまったのだろうか。
レボリューションは、創志の言う「本当の居場所」なのだろうか。
「――確かめてみるか」
赤の女性が向かう先は、彼女にしか分からない。
一人ぼっちになった甲板で、竜美は夜空を見上げる。
たった一度の敗北で、竜美の居場所は崩れてしまったのだろうか。
レボリューションは、創志の言う「本当の居場所」なのだろうか。
「――確かめてみるか」
赤の女性が向かう先は、彼女にしか分からない。