遊戯王 New stage サイドM 6-11
デュエルの勝敗がついた瞬間、ストラの周囲にある壁が激しく燃え上がる。
「ストラ! ストラッ!!」
最後の攻撃を終えた彼女は、糸が切れた操り人形のように、力無く倒れる。
輝王は部屋を隔てる強化ガラスを殴りつけるが、ヒビひとつ入らない。
すでに室内の気温はかなり高くなっている。が、この程度の熱ではビクともしないらしい。
このままでは、ストラは炎に焼かれて……。
脳裏によぎる最悪の事態を振り払い、輝王は全力で強化ガラスに体をぶつける。
何度繰り返しても、ガラスが割れることはない。
しかし、輝王に「後輩を見捨てて脱出する」という選択肢はなかった。
壊れてしまった、自分の目的。
それでも、自分を救ってくれたストラだけは――
「下がれ! 輝王!!」
輝王の背後から、鋭い叫び声が響く。
振り返れば、そこには若草色の着物を着た少女の姿があった。
「友永……!」
デュエルに勝利したことで、輝王側の扉は開いていた。
「わしに任せるのじゃ!」
切は左腕のディスクを展開し、素早くカードをセットする。
「頼むぞ! <六部衆の師範>!」
呼び出された隻眼の老将は、居合の構えを取り、静かに腰を落とす。
「清流……」
刀を握る<六部衆の師範>の右腕が、微動する。
「一閃!!」
煌めく銀色の光。
次の瞬間には、ガラスが両断され、上半分がズルリと倒れる。幸い、ストラが倒れているところには落ちなかった。
「くっ……」
切の体がふらりとよろめく。
駆け寄ろうとした輝王に、
「何をしとる……! 早くストラを……!」
自分は大丈夫だと左手を振るい、ストラを助けるように促す。
「――ああ!」
燃え上がる炎も気にせず、輝王はストラの体を抱きかかえる。
両膝の裏に右腕を入れ、左腕で肩を支えて持ちあげる。気を失っている後輩は、驚くほど軽かった。
「ここはもうダメじゃ! 脱出するぞ!」
<六部衆の師範>を従えた切が、扉の方に駆けだしながら叫び、輝王もそれに続く。
扉を出た先は、一面火の海だった。
「こっちじゃ!」
老将の白刃が煌めく。
起こした風で炎を消し、人がかろうじて通れるほどの道が出現する。
切の先導によって、輝王たちは入ってきた大穴から脱出した。
「ストラ! ストラッ!!」
最後の攻撃を終えた彼女は、糸が切れた操り人形のように、力無く倒れる。
輝王は部屋を隔てる強化ガラスを殴りつけるが、ヒビひとつ入らない。
すでに室内の気温はかなり高くなっている。が、この程度の熱ではビクともしないらしい。
このままでは、ストラは炎に焼かれて……。
脳裏によぎる最悪の事態を振り払い、輝王は全力で強化ガラスに体をぶつける。
何度繰り返しても、ガラスが割れることはない。
しかし、輝王に「後輩を見捨てて脱出する」という選択肢はなかった。
壊れてしまった、自分の目的。
それでも、自分を救ってくれたストラだけは――
「下がれ! 輝王!!」
輝王の背後から、鋭い叫び声が響く。
振り返れば、そこには若草色の着物を着た少女の姿があった。
「友永……!」
デュエルに勝利したことで、輝王側の扉は開いていた。
「わしに任せるのじゃ!」
切は左腕のディスクを展開し、素早くカードをセットする。
「頼むぞ! <六部衆の師範>!」
呼び出された隻眼の老将は、居合の構えを取り、静かに腰を落とす。
「清流……」
刀を握る<六部衆の師範>の右腕が、微動する。
「一閃!!」
煌めく銀色の光。
次の瞬間には、ガラスが両断され、上半分がズルリと倒れる。幸い、ストラが倒れているところには落ちなかった。
「くっ……」
切の体がふらりとよろめく。
駆け寄ろうとした輝王に、
「何をしとる……! 早くストラを……!」
自分は大丈夫だと左手を振るい、ストラを助けるように促す。
「――ああ!」
燃え上がる炎も気にせず、輝王はストラの体を抱きかかえる。
両膝の裏に右腕を入れ、左腕で肩を支えて持ちあげる。気を失っている後輩は、驚くほど軽かった。
「ここはもうダメじゃ! 脱出するぞ!」
<六部衆の師範>を従えた切が、扉の方に駆けだしながら叫び、輝王もそれに続く。
扉を出た先は、一面火の海だった。
「こっちじゃ!」
老将の白刃が煌めく。
起こした風で炎を消し、人がかろうじて通れるほどの道が出現する。
切の先導によって、輝王たちは入ってきた大穴から脱出した。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ――そう言えば、あの2人はどうしたのじゃ?」
肩で息をしながら、切が時間を惜しむように訊いてくる。
切の言う「あの2人」とは、皆本創志とティト・ハウンツのことだろう。
「……支部の前で待たせてある。ついてくるな、と言っても聞きそうになかったからな」
「なら、あやつらと合流して、ひとまずは病院に向かった方がよさそうじゃな」
「……ああ」
輝王が抱きかかえたストラは、かろうじて息はしているものの、ひどく衰弱しているのが一目で分かった。病院か、せめてベッドがある安全なところで休ませなければならない。
燃え盛る拘置所と同じように、第17支部もまた激しく燃える炎に包まれていた。
正面玄関付近に2人の姿はない。玄関の扉が開け放たれていることから、中に入った可能性が高い。
「ぬ! あやつ、あんなところで何を――!」
切が見つけたのは、オフィスに繋がる扉の前で、もがいている銀髪の少女だった。
どうやら、天井の一部が崩落し、扉を塞いでしまっているようだ。
「わしが行く。輝王はそこで待っておれ」
輝王が行動を起こすより先に、切がティトの元へと駆けだす。
このまま炎の勢いが強まれば、支部の中にいるのは非常に危険だ。
(皆本創志が中にいるのか……?)
先刻別れた少年と、その後ろに隠れるティトの姿を思い出す。
「何をしておる! ここは危険じゃ! 早く逃げないと――」
「……!」
切の忠告を無視して、ティトは一心不乱に壁を殴り続けている――輝王の位置からでも、2人の様子が見えた。
ティトの両拳はすでに血に染まっている。どれだけの時間、ああして壁を殴っていたのだろう。
「もうやめるのじゃ!」
見かねた切が、ティトの両手を掴んで動きを止める。
「――離して! そうしを! そうしを助けないと……!」
「そうし……!? あの少年のことかの?」
切が尋ねたそのとき、ティトの瞳がぎらつく。
「――それ貸して!」
「ぬあっ!?」
ティトは、切の左腕に装着されたデュエルディスクを強引に奪い取り、自分の腕に取り付ける。
「来て! <グングニール>――!」
「氷の魔女」が、しもべを呼びだそうとした瞬間。
肩で息をしながら、切が時間を惜しむように訊いてくる。
切の言う「あの2人」とは、皆本創志とティト・ハウンツのことだろう。
「……支部の前で待たせてある。ついてくるな、と言っても聞きそうになかったからな」
「なら、あやつらと合流して、ひとまずは病院に向かった方がよさそうじゃな」
「……ああ」
輝王が抱きかかえたストラは、かろうじて息はしているものの、ひどく衰弱しているのが一目で分かった。病院か、せめてベッドがある安全なところで休ませなければならない。
燃え盛る拘置所と同じように、第17支部もまた激しく燃える炎に包まれていた。
正面玄関付近に2人の姿はない。玄関の扉が開け放たれていることから、中に入った可能性が高い。
「ぬ! あやつ、あんなところで何を――!」
切が見つけたのは、オフィスに繋がる扉の前で、もがいている銀髪の少女だった。
どうやら、天井の一部が崩落し、扉を塞いでしまっているようだ。
「わしが行く。輝王はそこで待っておれ」
輝王が行動を起こすより先に、切がティトの元へと駆けだす。
このまま炎の勢いが強まれば、支部の中にいるのは非常に危険だ。
(皆本創志が中にいるのか……?)
先刻別れた少年と、その後ろに隠れるティトの姿を思い出す。
「何をしておる! ここは危険じゃ! 早く逃げないと――」
「……!」
切の忠告を無視して、ティトは一心不乱に壁を殴り続けている――輝王の位置からでも、2人の様子が見えた。
ティトの両拳はすでに血に染まっている。どれだけの時間、ああして壁を殴っていたのだろう。
「もうやめるのじゃ!」
見かねた切が、ティトの両手を掴んで動きを止める。
「――離して! そうしを! そうしを助けないと……!」
「そうし……!? あの少年のことかの?」
切が尋ねたそのとき、ティトの瞳がぎらつく。
「――それ貸して!」
「ぬあっ!?」
ティトは、切の左腕に装着されたデュエルディスクを強引に奪い取り、自分の腕に取り付ける。
「来て! <グングニール>――!」
「氷の魔女」が、しもべを呼びだそうとした瞬間。
――何故その「異変」に気付いたのかは、輝王自身にも分からなかった。
ただ、胸の内から「危険」を訴える声が激しく響き。
「離れろッ!!」
気付くと、輝王は叫んでいた。
それに反応した切が、ティトを抱きかかえて無理矢理跳ぶ。
氷の龍の影が揺らめくのと同時。
「離れろッ!!」
気付くと、輝王は叫んでいた。
それに反応した切が、ティトを抱きかかえて無理矢理跳ぶ。
氷の龍の影が揺らめくのと同時。
轟音。
第17支部の内部から、爆発が起こった。
――どれくらい、その場に呆けていただろうか。
夜の闇を塗りつぶすように、燃え上がる赤い炎。
「うっ……うっ……」
隣で座り込む銀髪の少女が、嗚咽を漏らす。
「そうし……そうしぃ……」
その涙に呼応するかのように、暗い空から雨粒が降り注いだ。
夜の闇を塗りつぶすように、燃え上がる赤い炎。
「うっ……うっ……」
隣で座り込む銀髪の少女が、嗚咽を漏らす。
「そうし……そうしぃ……」
その涙に呼応するかのように、暗い空から雨粒が降り注いだ。