遊戯王 New stage サイドM 6-10
――時間は遡る。
黒煙を噴き上げる第17支部と拘置所からは、少し離れた雑居ビルの屋上。
漆黒の夜空の下に、多数の男たちがうめき声を上げながら倒れている。命に別条はないものの、どこかしらに傷を負った者ばかりだ。
彼らは、拘置所から脱走したレボリューションのメンバーだった。
黒煙を噴き上げる第17支部と拘置所からは、少し離れた雑居ビルの屋上。
漆黒の夜空の下に、多数の男たちがうめき声を上げながら倒れている。命に別条はないものの、どこかしらに傷を負った者ばかりだ。
彼らは、拘置所から脱走したレボリューションのメンバーだった。
「<魔轟神レイジオン>でダイレクトアタック……これで、お前のライフはゼロだ」
黒の翼をはためかせ、金色の甲冑に身を包んだ悪魔の騎士が飛ぶ。
その拳が、少女――友永切の腹部へめり込む。
「がっ……」
ポニーテールの黒髪が跳ね、うめき声を漏らし、切の体は後方へと吹き飛ばされる。
「ぐ……ぬっ……」
空中で姿勢を制御し、何とか受け身を取ることに成功する。
だが、<魔轟神レイジオン>から受けたダメージは重く、すぐに立ち上がることは困難だった。
「かはっ……あっ……」
「加減はしておいた。お前なら死なないだろ――切」
着物の少女を見降ろすように立つ、<魔轟神レイジオン>の主。
栗色の髪が夜風に揺れ、少年と呼んだほうがしっくりくるような童顔。それでいて、纏う空気は重く、冷たかった。
夜の闇に溶け込んでしまいそうな黒い服を着た男は、けだるげにデュエルディスクからカードを取り外す。
「レビン……お主は……」
男――レビン・ハウンツは、切から視線を外し、周囲に倒れる男たちを見回す。
「俺は、俺自身の手でみんなを守るためにこの道を選んだ。邪魔をするっていうんなら……仲間でも、容赦はしない」
レビンの瞳は、倒れる「元」仲間たちではなく、その奥に映るものを見ている。
拘置所から脱走したレボリューションのメンバーたちは、自分たちを氷漬けするよう指示したリーダーの姿を見つけ、彼に詰めよった。どういうことだ、事情を説明しろ、と。
彼らに対し、レビンは一言だけ告げた。
「俺にデュエルで勝ったら、理由を教えてやる」
その結果が、この惨状だった。
輝王たちより先行していた切は、燃える建物から出てくるレビンの姿を見つけ、独断でここまで追ってきた。
しかし、その末路は倒れる男たちと同じ、敗北だった。
「今のお前じゃ、俺には勝てない」
そう言い残し、レビンは屋上を後にしようとする。
「待て! ……わしは……わしは……」
もがきながら右腕を伸ばし、レビンの体を掴もうとする切。
自分が止めなければならない。かつての友が、仲間が、道を踏み外そうとしているのだ。
例え手遅れだったとしても、手を伸ばさずにはいられない。
そのために、輝王に協力を仰ぎ、ここまで来たのだ。
だが、切の右手がむなしく空を掻く。
その拳が、少女――友永切の腹部へめり込む。
「がっ……」
ポニーテールの黒髪が跳ね、うめき声を漏らし、切の体は後方へと吹き飛ばされる。
「ぐ……ぬっ……」
空中で姿勢を制御し、何とか受け身を取ることに成功する。
だが、<魔轟神レイジオン>から受けたダメージは重く、すぐに立ち上がることは困難だった。
「かはっ……あっ……」
「加減はしておいた。お前なら死なないだろ――切」
着物の少女を見降ろすように立つ、<魔轟神レイジオン>の主。
栗色の髪が夜風に揺れ、少年と呼んだほうがしっくりくるような童顔。それでいて、纏う空気は重く、冷たかった。
夜の闇に溶け込んでしまいそうな黒い服を着た男は、けだるげにデュエルディスクからカードを取り外す。
「レビン……お主は……」
男――レビン・ハウンツは、切から視線を外し、周囲に倒れる男たちを見回す。
「俺は、俺自身の手でみんなを守るためにこの道を選んだ。邪魔をするっていうんなら……仲間でも、容赦はしない」
レビンの瞳は、倒れる「元」仲間たちではなく、その奥に映るものを見ている。
拘置所から脱走したレボリューションのメンバーたちは、自分たちを氷漬けするよう指示したリーダーの姿を見つけ、彼に詰めよった。どういうことだ、事情を説明しろ、と。
彼らに対し、レビンは一言だけ告げた。
「俺にデュエルで勝ったら、理由を教えてやる」
その結果が、この惨状だった。
輝王たちより先行していた切は、燃える建物から出てくるレビンの姿を見つけ、独断でここまで追ってきた。
しかし、その末路は倒れる男たちと同じ、敗北だった。
「今のお前じゃ、俺には勝てない」
そう言い残し、レビンは屋上を後にしようとする。
「待て! ……わしは……わしは……」
もがきながら右腕を伸ばし、レビンの体を掴もうとする切。
自分が止めなければならない。かつての友が、仲間が、道を踏み外そうとしているのだ。
例え手遅れだったとしても、手を伸ばさずにはいられない。
そのために、輝王に協力を仰ぎ、ここまで来たのだ。
だが、切の右手がむなしく空を掻く。
「――俺たちを止めたいんなら。1週間後サワヒラ港まで来い。それが、最後のチャンスだ」
そんな彼女に、レビンは何かを期待するように声をかける。
「それと、忘れものだ」
振り返ったレボリューションのリーダーは、切に向かって1枚のカードを投げつける。
綺麗に回転したそれを、逡巡ののちに受け取る切。
カードをめくると、そこに描かれていたのは、くすんだ紅色の鎧を纏った武士の姿。
<大将軍 紫炎>。
そのカードを見た瞬間、切は心がざわつくのを感じた。
「そいつがあってこそ、お前の<六部衆>は完成する。使えたら、の話だが……じゃあな。1週間後、また会おう」
まるで、切が止めにくることを見越しているかのような言葉だった。
遠ざかる背中。
動かない足。
……レビンの姿が完全に見えなくなったあと、切は右拳を地面に叩きつけた。
同時に、拘置所の方から爆炎が上がる。
「――輝王」
震える足に活を入れ、少女は駆けだした。
「それと、忘れものだ」
振り返ったレボリューションのリーダーは、切に向かって1枚のカードを投げつける。
綺麗に回転したそれを、逡巡ののちに受け取る切。
カードをめくると、そこに描かれていたのは、くすんだ紅色の鎧を纏った武士の姿。
<大将軍 紫炎>。
そのカードを見た瞬間、切は心がざわつくのを感じた。
「そいつがあってこそ、お前の<六部衆>は完成する。使えたら、の話だが……じゃあな。1週間後、また会おう」
まるで、切が止めにくることを見越しているかのような言葉だった。
遠ざかる背中。
動かない足。
……レビンの姿が完全に見えなくなったあと、切は右拳を地面に叩きつけた。
同時に、拘置所の方から爆炎が上がる。
「――輝王」
震える足に活を入れ、少女は駆けだした。