遊戯王 New stage サイドM 6-5
「先攻はどうぞ。わたしは先輩を愛していますから」
最早会話も成立しないような一方的な理由で、ストラは輝王に先攻を譲った。
「……分かった。俺が先攻をもらおう。ドロー」
変わり果てた後輩の姿を見ながら、輝王は最初のドローを行う。
――どうすればいいのか。
ともかく、ストラが正気に戻るまではデュエルを続行するしかないだろう。
しかし、その後は?
いつも持ち歩いているはずの拳銃は、今日に限って支部にある机に置いたままだった。切との捜索のあと、そのまま大石の取り調べを行う予定だったからだ。
体当たりなどの原始的な方法では、部屋を隔てている強化ガラスや、背後にある扉をぶち破ることはできないだろう。
輝王の額から、ポタリと汗が落ちる。
(――熱、か)
すでに室内は相当の熱気に包まれている。部屋の外がどのような状況になっているか詳しく知ることはできないが、もし火の手が激しくなっているなら、炎や熱によって扉が歪む可能性もある。
現状、それに賭けるしか方法はない。そう判断した輝王は、6枚のカードから、戦略を練り始める。
「らしくないですね、先輩。初手から長考なんて。そんな先輩もカッコいいですけど」
……ストラの淡々とした声は、聞いているだけで精神を摩耗する。
「モンスターをセット。カードを2枚セットしてターンエンドだ」
なるべく意識しないようにしながら、輝王はデュエルに集中しようとする。
場に現れた3枚のセットカード。果たして、ストラはどう動いてくるか……。
最早会話も成立しないような一方的な理由で、ストラは輝王に先攻を譲った。
「……分かった。俺が先攻をもらおう。ドロー」
変わり果てた後輩の姿を見ながら、輝王は最初のドローを行う。
――どうすればいいのか。
ともかく、ストラが正気に戻るまではデュエルを続行するしかないだろう。
しかし、その後は?
いつも持ち歩いているはずの拳銃は、今日に限って支部にある机に置いたままだった。切との捜索のあと、そのまま大石の取り調べを行う予定だったからだ。
体当たりなどの原始的な方法では、部屋を隔てている強化ガラスや、背後にある扉をぶち破ることはできないだろう。
輝王の額から、ポタリと汗が落ちる。
(――熱、か)
すでに室内は相当の熱気に包まれている。部屋の外がどのような状況になっているか詳しく知ることはできないが、もし火の手が激しくなっているなら、炎や熱によって扉が歪む可能性もある。
現状、それに賭けるしか方法はない。そう判断した輝王は、6枚のカードから、戦略を練り始める。
「らしくないですね、先輩。初手から長考なんて。そんな先輩もカッコいいですけど」
……ストラの淡々とした声は、聞いているだけで精神を摩耗する。
「モンスターをセット。カードを2枚セットしてターンエンドだ」
なるべく意識しないようにしながら、輝王はデュエルに集中しようとする。
場に現れた3枚のセットカード。果たして、ストラはどう動いてくるか……。
【輝王LP4000】 手札3枚
場:伏せモンスター、伏せ2枚
【ストラLP4000】 手札5枚
場:なし
場:伏せモンスター、伏せ2枚
【ストラLP4000】 手札5枚
場:なし
「わたしのターンですね。ドロー」
ドローしたカードを手札に加えたストラは、
「……そういえば、先輩はわたしの新しいデッキを見たことがあるんでしたよね。確か、使ったカードは<コアキメイル・アイス>と<コアキメイル・ルークロード>。」
自分の胸元に右手を置き、思い出したように訊いてくる。
レボリューションのメンバー、大石とのデュエルで見せた、2枚のカード。輝王の記憶では、彼女は<神聖魔導王エンディミオン>を中心としたデッキを組んでいたはずだった。
思い返せば、あのデュエルの時、すでにストラはマインドコントロールを受けていたのかもしれない。竜美とジェンスがグルだったのならば、1人になった彼女を光坂の元へ連れて行くことなどたやすいだろう。
「――ああ」
今度は輝王の返事を待ってから、ストラは言葉を吐き出す。
「それなら、その2枚は使いません。先輩には、常に新しいわたしを見ていてほしいですから」
「……手加減をする、ということか?」
後半のくだりは考えず、プレイに制約を加えたことについて尋ねる。
<コアキメイル・アイス>は手札を1枚捨てることで、特殊召喚されたモンスターを破壊するモンスター。<コアキメイル・ルークロード>は、召喚に成功したとき、墓地に存在する<コアキメイル>と名のついたカードを除外することで、フィールド上のカードを2枚まで破壊できる、強力な上級モンスターだったはずだ。
どちらのモンスターも、輝王の<AOJ>にとっては脅威となりえる。
「古い自分を見せるのは嫌なんです。先輩が、他の女を思い出しちゃうかもしれないから。現在のわたし、未来のわたしを見てください、輝王先輩」
……今のストラと、まともに会話を交わすことは難しいな。
「好きにしろ」
そう考えた輝王は、それ以上追及せずに、狂った後輩を突き放す。
「はい。好きにします。わたしは<コアキメイル・ドラゴ>を召喚」
召喚円から現れたのは、体全体を薄い水色で統一した、4枚の羽を持つ竜だ。
水色の中で唯一赤く光る瞳が、輝王を威圧するかのように輝く。
ドローしたカードを手札に加えたストラは、
「……そういえば、先輩はわたしの新しいデッキを見たことがあるんでしたよね。確か、使ったカードは<コアキメイル・アイス>と<コアキメイル・ルークロード>。」
自分の胸元に右手を置き、思い出したように訊いてくる。
レボリューションのメンバー、大石とのデュエルで見せた、2枚のカード。輝王の記憶では、彼女は<神聖魔導王エンディミオン>を中心としたデッキを組んでいたはずだった。
思い返せば、あのデュエルの時、すでにストラはマインドコントロールを受けていたのかもしれない。竜美とジェンスがグルだったのならば、1人になった彼女を光坂の元へ連れて行くことなどたやすいだろう。
「――ああ」
今度は輝王の返事を待ってから、ストラは言葉を吐き出す。
「それなら、その2枚は使いません。先輩には、常に新しいわたしを見ていてほしいですから」
「……手加減をする、ということか?」
後半のくだりは考えず、プレイに制約を加えたことについて尋ねる。
<コアキメイル・アイス>は手札を1枚捨てることで、特殊召喚されたモンスターを破壊するモンスター。<コアキメイル・ルークロード>は、召喚に成功したとき、墓地に存在する<コアキメイル>と名のついたカードを除外することで、フィールド上のカードを2枚まで破壊できる、強力な上級モンスターだったはずだ。
どちらのモンスターも、輝王の<AOJ>にとっては脅威となりえる。
「古い自分を見せるのは嫌なんです。先輩が、他の女を思い出しちゃうかもしれないから。現在のわたし、未来のわたしを見てください、輝王先輩」
……今のストラと、まともに会話を交わすことは難しいな。
「好きにしろ」
そう考えた輝王は、それ以上追及せずに、狂った後輩を突き放す。
「はい。好きにします。わたしは<コアキメイル・ドラゴ>を召喚」
召喚円から現れたのは、体全体を薄い水色で統一した、4枚の羽を持つ竜だ。
水色の中で唯一赤く光る瞳が、輝王を威圧するかのように輝く。
<コアキメイル・ドラゴ> 効果モンスター 星4/風属性/ドラゴン族/攻1900/守1600 このカードのコントローラーは自分のエンドフェイズ毎に 手札から「コアキメイルの鋼核」1枚を墓地へ送るか、 手札のドラゴン族モンスター1体を相手に見せる。 または、どちらも行わずにこのカードを破壊する。 このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、 光属性及び闇属性モンスターを特殊召喚する事はできない。
「<コアキメイル・ドラゴ>が表側表示で存在する限り、光属性と闇属性モンスターの特殊召喚はできません。先輩の<AOJ>モンスターは、ほとんど闇属性でしたよね?」
「――ッ」
厄介なモンスターを召喚された。<コアキメイル・ドラゴ>を処理しない限り、輝王の特殊召喚は封じられたと言っていい。
しかも、<コアキメイル・ドラゴ>の攻撃力は、下級アタッカーとしては高い1900。何らかのサポートを受けなければ、<AOJ>の下級で突破することは難しいだろう。
輝王の手札には<AOJサウザンド・アームズ>と<ジャスティス・セイバー>がある。<AOJ>モンスターの攻撃力を上げる<ジャスティス・セイバー>を使えば、<コアキメイル・ドラゴ>を撃破できなくもないが……。
「そうですね。わたしはカードを1枚セットして、エンドフェイズに移行します」
「攻撃はしないのか?」
挑発の色を含んだ輝王の発言に、ストラは相変わらずの調子で答える。
「――先輩の伏せモンスター<A・ボム>じゃないですか? そして、伏せカードに<エレメントチェンジ>がある。わたしのモンスターを光属性にして、<A・ボム>での破壊を狙っている」
ストラの予想は、1つは外れで1つは当たりだった。
輝王の場の伏せカードの1枚は、確かに<エレメントチェンジ>――相手フィールドのモンスターの属性を変更する罠カードだ。
しかし、セットモンスターは<A・ボム>ではなく、<AOJアンリミッター>だった。
「わたしは、ずっと先輩を見ていたんですから。これくらいの予測は立ちます」
相手が自分のことをよく知るストラだったからこそ、輝王が仕掛けたブラフ――セットモンスターを<A・ボム>だと警戒させる――が成功した。
「エンドフェイズ。<コアキメイル・ドラゴ>の維持コストに、手札にあるもう1枚の<コアキメイル・ドラゴ>を見せて、ターン終了です」
<コアキメイル>モンスターは、強力なステータスと引き換えに、維持コストが必要になる。戦いを長引かせ、息切れを狙うのも1つの手かもしれない。
「――ッ」
厄介なモンスターを召喚された。<コアキメイル・ドラゴ>を処理しない限り、輝王の特殊召喚は封じられたと言っていい。
しかも、<コアキメイル・ドラゴ>の攻撃力は、下級アタッカーとしては高い1900。何らかのサポートを受けなければ、<AOJ>の下級で突破することは難しいだろう。
輝王の手札には<AOJサウザンド・アームズ>と<ジャスティス・セイバー>がある。<AOJ>モンスターの攻撃力を上げる<ジャスティス・セイバー>を使えば、<コアキメイル・ドラゴ>を撃破できなくもないが……。
「そうですね。わたしはカードを1枚セットして、エンドフェイズに移行します」
「攻撃はしないのか?」
挑発の色を含んだ輝王の発言に、ストラは相変わらずの調子で答える。
「――先輩の伏せモンスター<A・ボム>じゃないですか? そして、伏せカードに<エレメントチェンジ>がある。わたしのモンスターを光属性にして、<A・ボム>での破壊を狙っている」
ストラの予想は、1つは外れで1つは当たりだった。
輝王の場の伏せカードの1枚は、確かに<エレメントチェンジ>――相手フィールドのモンスターの属性を変更する罠カードだ。
しかし、セットモンスターは<A・ボム>ではなく、<AOJアンリミッター>だった。
「わたしは、ずっと先輩を見ていたんですから。これくらいの予測は立ちます」
相手が自分のことをよく知るストラだったからこそ、輝王が仕掛けたブラフ――セットモンスターを<A・ボム>だと警戒させる――が成功した。
「エンドフェイズ。<コアキメイル・ドラゴ>の維持コストに、手札にあるもう1枚の<コアキメイル・ドラゴ>を見せて、ターン終了です」
<コアキメイル>モンスターは、強力なステータスと引き換えに、維持コストが必要になる。戦いを長引かせ、息切れを狙うのも1つの手かもしれない。
【輝王LP4000】 手札3枚
場:伏せモンスター、伏せ2枚
【ストラLP4000】 手札4枚
場:コアキメイル・ドラゴ(攻撃)、伏せ1枚
場:伏せモンスター、伏せ2枚
【ストラLP4000】 手札4枚
場:コアキメイル・ドラゴ(攻撃)、伏せ1枚