にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 6-4

「信二……!」
 創志が振り向くよりも先に、信二は光坂の横に並んだ。
 病弱で、サテライトに来てからは歩くこともままならなかった信二が、自分の足で歩いて、だ。
 黒のスーツに身を包んだ童顔の少年は、間違いなく皆本信二その人だ。
 夢であってほしかった。
 あれほど幻覚を否定していたのに、今は視界に映る姿が幻覚であってほしいと願っている。
「で、どうするんです?」
 信二は創志の方を見ようともせずに、光坂に話を投げかける。
「うーん、予定が狂っちゃったな。創志は絶対仲間になってくれると思ってたから、色々喋ったのになぁ……」
「今さら情報漏洩を気にしてもしょうがないでしょう。これだけ派手にやったんだから」
「それもそうか……」
 創志の記憶に、光坂と信二が対面した事実はない。
 しかし、二人は気心のしれた友人のように言葉を交わしている。
 ――何も考えられない。
 脳が完全にフリーズしている。
 創志は、天井が崩落し塞がれてしまった入口から、事態を見守っているティトの存在すら忘れてしまっていた。
「でも、僕には責任があるからね」
「兄さんにデュエルモンスターズを渡した、ですか?」
「そう。だからさ――」
 最早茫然と立ち尽くすことしかできない創志に、光坂は軽やかに告げる。

「仲間になってくれないなら、始末しなきゃいけない。自分でまいた種は、自分で刈らないと」

 それは、死刑宣告だった。
 光坂の左腕に装着されたデュエルディスクが、無機質な機械音と共に展開する。
 パチパチと火の粉が爆ぜるオフィスで、ソリットビジョンの駆動音が響き渡る。
「構えるんだ、創志。君も決闘者だろう?」
 光坂の声で、ようやく創志は現実に復帰する。
 ――これは夢だ。
 強引に思いこもうとしても、周囲で燃える炎がそれを許さない。
 それなら。
 ――2人は、レボリューションの誰かに操られてるんだ。
 そうだ。
 そうに決まっている。
 絶対そうに決まっている。
 それなら。
「――俺が、助けないと」
 誰にも聞こえない声で、ボソリと呟いた創志は、借り物のデュエルディスクを展開させる。
「……やる気になったみたいだね」
「いいぜ、デュエルだ! 先生! 信二! 今から、お前らの目を覚まさせてやるッ!」
 決意に満ちた声で叫んだ兄の姿は、果たして弟の瞳にどう映ったのか――
 オフィスの外――拘置所の方から聞こえてきた爆発音にかぶせるようにして、誰かが言った。

「滑稽だな」