にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 5-4

「――――!」
「っ!」
「な……!?」
 その場にいた全員が、爆発音のした方に目を向ける。
 日が落ち、黒く染まりかけている空を、さらに闇に落とすかのごとく吹き上がる黒煙。
「輝王! あの方角は――!」
 物陰に隠れていたはずの切が、にゅっと顔を出す。
「おわぁっ! あ、あんたどっから……」
 切の出現に驚いた創志が飛び退いたことで、モンスターを投影していたソリッドビジョンが消える。まだ決着はついていないが、これ以上デュエルを続けている状況ではない。
「ああ。第17支部のある方角だ」
 輝王は切の言葉に頷く。
 第17支部の周辺には、爆破事故を起こすような施設もなければ、テロリストの襲撃を受けるような輩も住んでいない。
 つまり、あの爆発は――
「おい、どういうことなんだよ? あの爆発は何なんだ!?」
 事態が急変したことを察し、創志が駆け寄ってくる。
「……あくまで推測だが、セキュリティ第17支部がテロリストの襲撃を受けた。いや、受けている、か」
「セキュリティの支部が……!?」
 サテライトの住人にとって、治安維持局というのは、決して逆らってはいけない存在だ。公平とは程遠いこの場所では、彼らのさじ加減ひとつで、一生を更生施設の中で終えることにもなりかねない。
 目の前の少年、創志もまた、それを知っているのだろう。支部が攻撃されたことに、驚きを隠せないようだった。
「こんなことをする連中は、やはり――」
 悔しげに唇を噛む切の中に浮かんだ組織は、輝王が思い浮かべたものと同じだろう。

「行くぞ、友永切。奴らを……レボリューションを止める」

「……うむ」
 言い終わるや否や、切は即座に駆けだした。
 輝王は創志と、その後ろにいるティトに向き直る。
「悪いが、お前との決着はまた今度だ。後日、改めて話を――」
 聞かせてもらう、と続けようとしたところで、少年が割り込むように口を開いた。
「レボリューション、だって? あそこに連中がいるのか?」
 そう言って、創志は立ち昇る黒煙に視線を向ける。
 輝王は、この爆発がレボリューションの引き起こしたものであると確信していたが、
「……推測、だ。本当に奴らの仕業なのかどうかは、確かめないと分からん」
 しかし、その曖昧な返答が、少年の心に火をつけてしまった。
「――俺も行くぜ。連中には、聞きたいことが山ほどあるんだ」
 創志は振り返ると、佇む銀色の少女を見つめる。
「構わないな? ティト」
「わたしは、そうしを手伝うって決めた。だから、絶対一緒に行くよ」
「……分かってるさ」
 ティト・ハウンツはレボリューションと関わりがあるとはいえ、この場に彼らを巻き込むのは得策ではない。必要以上に状況が混乱し、大きな手掛かりをつかみ損ねる可能性がある。
 そう輝王は考えていた。
「――足手まといにはなるなよ。ついてこい」
 だが、口から出てきたのは、理性に反した言葉だった。
 彼とのデュエルを通して、本能が察したのだ。
 この少年を止めることなどできないと。






 交わった2つの線は、新たなる戦場で再び分かたれる。
 片方の線が途切れることによって。