にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 3-7

 互いに最初の手札を引き、2人のデュエリストがエントランスで対峙する。
「先攻は俺だ! ドロー!」
 相手に噛みつくように吠えた大石が、カードを引く。つい数分前まで氷の中にいたとは思えないほど活発な動きだ。
 対して、ストラは余裕の表情を崩さないまま自分の手札を見ている。
 輝王にとって、ストラのデュエルを見るのはこれが初めてではない。訓練で実際に手合わせしたこともある。
 セキュリティの職員にとってデュエルの腕は重要視される要素のひとつだ。いくら前線に出た経験が少ないとはいえ、エリート街道を順調に歩んできたストラが負けることはありえないだろう。
 しかし、輝王の中で「何か」が引っかかっていた。
「俺は<切り込み隊長>を召喚!」

<切り込み隊長>
効果モンスター
星3/地属性/戦士族/攻1200/守 400
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
相手は表側表示で存在する他の戦士族モンスターを攻撃対象に選択する事はできない。
このカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下のモンスター1体を
特殊召喚する事ができる。

 その「何か」の正体が分からぬまま、デュエルは進んでいく。
 大石のフィールドに現れたのは、2本の剣を携え、銀色の鎧に身を包んだ騎士だ。顔に刻まれた傷から、数々の戦場をくぐりぬけてきた雄姿がうかがい知れる。
「<切り込み隊長>の効果発動! このカードが召喚に成功したとき、手札からレベル4以下のモンスターを1体特殊召喚できる! 俺は<チューン・ウォリアー>を特殊召喚だ!」

<チューン・ウォリアー>
チューナー(通常モンスター)
星3/地属性/戦士族/攻1600/守 200
あらゆるものをチューニングしてしまう電波系戦士。
常にアンテナを張ってはいるものの、感度はそう高くない。

 <切り込み隊長>の効果で特殊召喚されたのは、赤いボディの胸や肩に電波の感度を図るメーターを取り付け、両腕がイヤホンジャックになった電波系戦士。レベル3のチューナーモンスターだ。
 となれば、狙いはひとつ。
「<切り込み隊長>に<チューン・ウォリアー>をチューニング! 俺のエースを見てビビんじゃねぇぞ! シンクロ召喚!」
「やはり、シンクロ召喚か」
 <切り込み隊長>が3つの光輪に取り込まれ、その中を光の柱が貫く。
「駆けろ! <大地の騎士ガイアナイト>!」
 光が取り払われ、漆黒の馬にまたがった騎士が召喚される。馬と同じ漆黒の鎧を纏い、深い赤色に染まった2本のランスが月の光を受けて輝く。

<大地の騎士ガイアナイト>
シンクロモンスター
星6/地属性/戦士族/攻2600/守 800
チューナー+チューナー以外のモンスター1体以上

「1ターン目からシンクロ召喚……さすがレボリューションのメンバーだけあって、少しはできるようね」
 輝王の隣に立つ竜美が、感心したように呟く。
 何の効果も持たないとはいえ、攻撃力2600のモンスターは容易に突破できるものではない。
「先攻1ターン目は攻撃できないからな……てめえのターンだ!」

【大石LP4000】 手札4枚
場:大地の騎士ガイアナイト(攻撃)
【ストラLP4000】 手札5枚
場:なし

「そうですか。ブラフでも伏せカードをセットした方がいいと思いますよ」
 ……あんな挑発を言えるということは、ストラの手札に<大地の騎士ガイアナイト>を処理できるカードがあると思って間違いない。
「うるせえ! さっさとしやがれ!」
「なら、ドローさせてもらいます」
 大石の声に臆することなく、ストラが静かにカードをドローする。
 数瞬手札を見渡し、すぐにカードを選びとる。

「わたしは<コアキメイル・アイス>を召喚します」

 現れたのは、氷の体を持つ巨人だ。雪の結晶の形をした盾と、氷柱状の槍を持っている。

<コアキメイル・アイス>
効果モンスター
星4/水属性/水族/攻1900/守1200
このカードのコントローラーは自分のエンドフェイズ毎に
手札から「コアキメイルの鋼核」1枚を墓地へ送るか、
手札の永続魔法カード1枚を相手に見せる。
または、どちらも行わずこのカードを破壊する。
手札を1枚墓地へ送る事でフィールド上に存在する
特殊召喚されたモンスター1体を破壊する。

「……!?」
 それを見て驚愕したのは、輝王だけだった。
 大石はもちろん、竜美やジェンスも、ストラのデュエルを見るのは初めてだ。ゆえに、彼女がどんなデッキを使うのかを知らない。
 だが、輝王は違った。
(どういうことだ……?)
 ストラと初めて会ったときから、彼女は<神聖魔導王エンディミオン>を主軸したデッキを愛用していたはずだ。<魔法都市エンディミオン>と<魔力掌握>を駆使し魔力カウンターを溜め、派手さはないが堅実な戦術を得意としていた。
 たった今ストラのフィールドに召喚された<コアキメイル・アイス>は魔力カウンターに関係した効果を持っていなければ、そもそも魔法使い族ですらない。
「<コアキメイル・アイス>の効果発動。手札を1枚墓地に送ることで、特殊召喚されたモンスターを破壊します」
 輝王の疑念を置き去りに、戦いは加速する。
 サテライトに来てから今まで、ストラのデッキを確認したことはない。異動に伴い、デッキを新調したのだろうか。
「対象はもちろん<大地の騎士ガイアナイト>。行きますよ――アイシング・ブレイク!」
 雪の結晶型の盾から、無数の雹が発射される。
 黒の騎士は2本のランスで懸命に払いのけるが、それを上回る速度で雹が襲いかかる。
 騎士がまたがる馬が悲鳴を上げるようにわななき、主人と共に砕け散る。
「ぐっ……」
「これであなたのフィールドにモンスターはいなくなりました。<コアキメイル・アイス>でダイレクトアタックです。ダイヤモンドランサー!」
 氷の巨人の槍が、大石の腹を深々と貫く。
「ぐあっ……」

【大石LP4000→2100】

 もちろん立体映像のため実際に腹に穴が開いたわけではないが……。
 切の思いつめた表情が、輝王の頭の中を掠める。
 あれがもし、サイコデュエリストによる攻撃だったら――
「わたしはカードを1枚セットして、エンドフェイズに移行します」
 輝王は思い浮かべてしまった光景を振り払い、目の前のデュエルに集中する。
「<コアキメイル・アイス>を場に維持するためのコストとして、<コアキメイルの鋼核>を1枚墓地に送ります。ターンエンドです」

<コアキメイルの鋼核>
通常魔法
このカードが墓地に存在する場合、
自分のドローフェイズ時に通常のドローを行う代わりに、
このカードを手札に加える事ができる。
また、自分のドローフェイズ時に
手札から「コアキメイル」と名のついたモンスター1体を墓地へ送る事で、
自分の墓地に存在するこのカードを手札に加える。

「へぇ……効果も強力だしステータスも高いけど、維持コストが必要なモンスターか。なかなか面白いカードを使うわね、ストラちゃん」
「…………」
 つまり、維持コストが払えなければ、場に維持できないということだ。
 かつての……シティにいたころのストラとは違う戦術。
 輝王の中で、違和感がますます膨らんでいく。

【大石LP2100】 手札4枚
場:なし
【ストラLP4000】 手札2枚
場:コアキメイル・アイス(攻撃)、伏せ1枚