にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 2-4

「ふむ。この辺でいいかの」
 先を歩いていた切が、周りを見回したあと立ち止まる。
「…………」
 ストラが警戒を強めるのも無理はない。
 先ほどの食堂があった通りから離れたここには、最早建物としての原型をとどめていない瓦礫の山があるだけだ。通りを歩いているときにあちこちから感じていた視線は、全くなくなっていた。
「では、さっそく始めようかの、輝王」
 そう言って、切は左腕のデュエルディスクを展開させる。
「レボリューションはデュエルギャングじゃ……たとえどれだけ腐ろうともな。奴らとの決着は、デュエルでつけることになるじゃろう」
 だからこそ、人目のつかないところで実力を確かめておきたいということか。
「……少しでも妙な動きをしたら、撃ちますよ」
 拳銃を構えたストラが、険しい顔をしながら言い放つ。
「好きにせい。ただし、デュエルの邪魔はせぬようにな」
「少し下がれ、ロウマン」
「先輩……」
 輝王も自らのデュエルディスクを展開させる。ソリッドビジョンシステムが作動し、虹色の光が戦いの開始を告げる。
「さあ! 全力でかかってくるがよい!」
「……いいだろう。ドロー」
 先攻をもらった輝王が、1枚目の剣を抜く。
 切の言っていることが本当なら、レボリューションの人間とデュエルするのは2回目。
 しかし、宇川は本気を出していなかった。実質、これが初の手合わせになるのだろう。
(――見せてもらおう。レボリューションの実力を)
「俺はAOJブラインド・サッカーを召喚」
 ヘルメットを思わせる球体から2本の腕が生え、蟹のような足を持った機械兵が、召喚輪から飛び出す。

<A・O・J ブラインド・サッカー>
効果モンスター
星4/闇属性/機械族/攻1600/守1200
このカードと戦闘を行った光属性モンスターの効果は無効化される。

「カードを1枚セットして、ターンエンドだ」
「まずは相手の出方を窺うか……しかしじゃ!」
 切がカードを引く。黒髪のポニーテールがなびき、凛、と空気が張り詰める。
 それはまるで、居合いで刀を抜き放つ一瞬のようだった。
「遅いぞ輝王! わしは六武衆ニサシを召喚!」
 深緑の鎧を纏った侍が、薄く発光する2本の刀を振りかざし、フィールドに現れる。

<六武衆―ニサシ>
効果モンスター
星4/風属性/戦士族/攻1400/守 700
自分フィールド上に「六武衆-ニサシ」以外の
「六武衆」と名のついたモンスターが存在する限り、
このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
このカードが破壊される場合、代わりにこのカード以外の
「六武衆」と名のついたモンスターを破壊する事ができる。

「六武衆……?」
 その姿は、戦国時代の武将そのもの。初めて見るカードだ。
「さらに、手札から六武衆の師範を特殊召喚!」
 右目に眼帯をつけた白髪の老将が、音もなく現れる。

<六武衆の師範>
効果モンスター
星5/地属性/戦士族/攻2100/守 800
自分フィールド上に「六武衆」と名のついたモンスターが
表側表示で存在する場合、このカードは手札から特殊召喚する事ができる。
このカードが相手のカードの効果によって破壊された時、
自分の墓地に存在する「六武衆」と名のついたモンスター1体を手札に加える。
「六武衆の師範」は自分フィールド上に1枚しか表側表示で存在できない。

「六武衆の師範は、自分フィールド上に<六武衆>と名のついたモンスターがいるとき、手札から特殊召喚できるのじゃ!」
 どうだ、と言わんばかりに胸を張る切。実際、半上級モンスターがいきなり出てくるのは、厳しいものがある。
「攻め時じゃ! 六武衆の師範でブラインド・サッカーを攻撃!」
 輝王の場の伏せカードは<エレメント・チェンジ>。加えて<AOJブラインド・サッカー>は、戦闘を行った光属性モンスターの効果を無効にできる。
 しかし、<六武衆の師範>の効果を無効にしたところで、次につながる手があるのか……?
 考える暇もなく、すでに<六武衆の師範>は機械兵の眼前に立っていた。
「――清流一閃!」
 しゃぁん、と涼やかな音と共に<AOJブラインド・サッカー>が真っ二つに分断され、爆散する。
「ぐっ……」

【輝王LP4000→3500】

「たたみかけるぞ! ニサシでダイレクトアタックじゃ!」
 緑の侍が輝王に迫る。
 実体を持たぬ刃が、守る術を持たぬ青年を切り裂く。

【輝王LP3500→2100】

「まだじゃ! ニサシは、フィールド上に他の六武衆がいるとき、2回攻撃できる! 双龍撃!」
 刀を振りぬいた侍は、その勢いのまま体を回転させ、左手に握った2本目の刃を振るう。
「ぐっ……!?」
 その瞬間、輝王の頬を何かが掠める。
 感じたのは、デュエルディスクから伝わるわずかな痛みだけではない。
「先輩!」
 ストラが悲痛な叫び声を上げる。

【輝王LP2100→700】

 <六武衆―ニサシ>が切のフィールドに戻ったのに合わせて、輝王の頬を鮮血が伝う。
「お前ッ……! 一体何をした!!」
 怒鳴り声を上げて、ストラが切に銃を向ける。
「よせ! ロウマン!」
 輝王には、なぜ自分が傷を負ったのかが分かっていた。
「でも、先輩ッ――」

「サイコデュエリスト

 この場にいる全員に聞こえるように、はっきりと輝王は告げる。
「聞いたことがあるはずだ。カードの力を実体化させるなど、特異な力を持ったデュエリストがいると」
「それは……」
「これが『百聞は一見にしかず』か、友永切。つまり、レボリューションの黒幕、光坂が集めているのは――」
「そうじゃ。わしの力は他の者たちと比べると随分弱いが……わしは、サイコデュエリストじゃ」
 何かをこらえるような声で、切は答える。
「わしを含め――光坂はサイコデュエリストを集めて、何かを企んでおる」
「……あなたはそれを知ってるんですか?」
 食堂のときと同じ、ストラの質問。
 切はそっと目を伏せたあと、口を開く。
「――またお主の実力を確かめておらんぞ、輝王。続きじゃ」
 少女の瞳に宿る覚悟が増した。
「いいだろう」
 望むところだ、と輝王は視線に力を込める。
 サイコデュエリストが集まっているのであれば――輝王の親友は、組織の何者かに「殺された」可能性が高いのだ。
 当然、目の前の少女も容疑者の1人。
 絶対に逃がしはしない。