にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 1―3

「伏せカードオープン! 永続罠アストラルバリア!」
 伏せてあったカードが開き、眩く発光する。

<アストラルバリア>
永続罠
相手モンスターが自分フィールド上モンスターを攻撃する場合、
その攻撃を自分ライフへの直接攻撃にする事ができる。

 その光に導かれるように黒炎の息吹は方向を変え、創志に襲い掛かった。
「ぐっ……うう」
【創志LP3500→700】
「ちっ。自分のライフを犠牲にしてモンスターを守りやがったか……ターンエンドだ」
 アストラルバリアの効果によって<ハイドロ・ジェネクス>は守られた。だが、次に<魔王ディアボロス>の攻撃が自分に向けば、耐えられるだけのLPは残っていない。
「俺のターン……」
 創志がカードをドローしようとした瞬間。
「待ちな! ここでディアボロスの効果が発動するぜ! デッキの一番上のカードを俺に見せな!」
「くっ……」
 創志は仕方なく、ドローしようとしたカードを金盛に晒す。
「おおっと、リミッター解除か! 危ねえ危ねえ。じゃ、そのカードはデッキの一番下に戻してもらうぜ」
(くそっ……)
 創志は舌打ちをして、逆転への可能性をデッキの一番下へと戻す。リミッター解除で<ハイドロ・ジェネクス>の攻撃力を2倍にしていれば、<魔王ディアボロス>を倒したあと、一気に勝負を決めることができたかもしれないのに……。
(――いや、まだだ)
 創志は自分のデッキを見つめる。そこに眠る『可能性』を引き出すッ――!
「ドロー!」
 自分フィールドには<ハイドロ・ジェネクス>と永続罠が2枚。
 相手フィールドには<魔王ディアボロス>のみ。
 ――十分だ。
「魔法カード発動! シンクロキャンセル!」
「なんだと!?」

<シンクロキャンセル>
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在するシンクロモンスター1体をエクストラデッキに戻す。
さらに、エクストラデッキに戻したこのモンスターのシンクロ召喚に使用した
モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、
この一組を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

 <ハイドロ・ジェネクス>が眩い光に包まれ、デッキへと戻っていく。
 その代わりに、フィールドに<ジェネクス・コントローラー>と<ジェネクスウンディーネ>が特殊召喚された。
「壁を増やしてしのぐつもりか? そんなモン、時間稼ぎにもならねえぞ!」
 <シンクロキャンセル>を使った意図が分からないのか、金盛は困惑しながら野次を飛ばしてきた。
「てめえに見せてやるぜ。これが俺の――」
 先生から託され、信二の手を借りて作り上げた、俺だけの!

「ジェネクスデッキの力だ!!」

 金盛を倒し、弟を迎えに行く――そのために、創志は手札からモンスターを召喚する。
「現れろ! ジェネクス・ヒート!!」
 体の中心にある筒型の炉から炎を吹き出し、青いモノアイを光らせ<ジェネクス・ヒート>がフィールドに現れる。
「な……レベル5モンスターをリリースなしで召喚だと!?」
「ジェネクス・ヒートは、自分フィールド上にジェネクス・コントローラーが存在するとき、リリースなしで召喚できる!」

<ジェネクス・ヒート>
効果モンスター
星5/炎属性/炎族/攻2000/守1300
自分フィールド上に「ジェネクス・コントローラー」が表側表示で存在する場合、
このカードはリリースなしで召喚する事ができる。

「ちいっ……」
 創志の気迫に押された金盛が、じり……と後ずさるのが見えた。
「ジェネクス・ヒートに、ジェネクス・コントローラーをチューニング!」
 再び<ジェネクス・コントローラー>が光の玉に姿を変え、<ジェネクス・ヒート>に取り込まれる。
「原初の煌めきが、新たな力の結晶を生み出す! 集え! 炎の力よ!!」
 <ジェネクス・ヒート>の体を包んだ光の柱が消えると同時に、轟、と青白い炎の柱がいくつも吹きだす。

シンクロ召喚! 燃え盛れ! サーマル・ジェネクス!!」

 群青色の巨大な球体型のエンジンから煙を噴く機械の剛腕が伸び、頭部の目に光が灯る。
 炎のシンクロモンスター<サーマル・ジェネクス>が、召喚された。
「サーマル・ジェネクスは、自分の墓地に存在する炎属性モンスター1体につき攻撃力が200ポイントアップする!」

<サーマル・ジェネクス>
シンクロ・効果モンスター
星8/炎属性/機械族/攻2400/守1200
「ジェネクス・コントローラー」+チューナー以外の炎属性モンスター1体以上
このカードの攻撃力は自分の墓地に存在する
炎属性モンスター1体につき200ポイントアップする。
このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊した場合、
自分の墓地の「ジェネクス」と名のついたモンスター
×200ポイントダメージを相手ライフに与える。

 創志の墓地には先ほどシンクロ召喚の素材とした<ジェネクス・ヒート>がいる。よって、<サーマル・ジェネクス>の攻撃力は2600。
「くく……はははっ!! 大げさに見栄張った割に、その程度かよ!? そいつじゃディアボロスを倒せねぇぞ!」
 創志のプレイングミスを指摘し、金盛は愉快そうに笑い始める。

「――まだだ」

「……あ?」
 そう、まだ終わりじゃない。
 確かに、今の<サーマル・ジェネクス>では<魔王ディアボロス>を倒すことはできない。
 しかし、このカードがあれば話は別だ。
「俺は永続罠誘導信号の効果を使う! ライフを500支払い、手札のタービン・ジェネクス特殊召喚する!」
【創志LP700→200】
丸みを帯びた戦車のような形をしたモンスター<タービン・ジェネクス>がフィールドに現れる。
「タービン・ジェネクスの効果発動! このカードが自分フィールド上に存在する限り、自分の場の<ジェネクス>と名のついたモンスターの攻撃力は400ポイントアップする!」

<タービン・ジェネクス>
効果モンスター
星4/地属性/機械族/攻1400/守1300
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分フィールドに表側表示で存在する「ジェネクス」と名のついた
モンスターの攻撃力は400ポイントアップする。

「ぐぎッ……!?」
 この効果により、<サーマル・ジェネクス>の攻撃力は3000。<魔王ディアボロス>の攻撃力を上回った。
「攻撃だ! サーマル・ジェネクス! バーニング・バスターカノン!!」
 <サーマル・ジェネクス>の体の中央にある穴から、青白い轟炎が射出される。
 その炎に飲まれた<魔王ディアボロス>は、断末魔の叫びを上げ、砕け散った。
【金盛LP3600→3400】
「サーマル・ジェネクスは相手モンスターを破壊したとき、自分の墓地に存在する<ジェネクス>と名のついたモンスター1体につき、200ポイントのダメージを与える!」
 濃い群青色の巨体が、ぬうと金盛に近づく。
「ひっ……」
 創志の墓地に、ジェネクスと名のついたモンスターは4体。よって、800ポイントのダメージ。
「スモーク・ブレイズ!」
 熱を含んだ煙が吹き出し、金盛を覆っていく。
「ぐあああっ!?」
【金盛LP3400→2600】
「これで終わりだ! 2体のジェネクスでダイレクトアタック!!」
 攻撃力1800の<タービン・ジェネクス>と、攻撃力1600の<ジェネクスウンディーネ>が金盛に襲い掛かる。
「うわあああああああっ……」
【金盛LP2600→0】



 がくりと膝をつく金盛。創志は覇気の消えた金盛に近づくと、その胸ぐらを掴んだ。
「約束だ。弟のところに案内しろ」
「……し、知らねぇ。俺は何も聞いてねぇんだ」
 しらを切る金盛に業を煮やした創志は、一発ぶん殴ってやろうと右拳に力をこめる。
「わ、分かった! 話す! 話すから暴力はやめてくれー!」
 その言葉を聞いて、創志は掴んでいた手を離す。どすんと情けない音を立てて尻もちをついた金盛を見降ろしながら、創志はとっくに痛みの引いた頬をさする。
(――悪ぶった格好や挑発的な言動で相手をビビらせ、自分の弱さをひた隠していたってわけか。……その割には、いいパンチだったけどな)
 デュエルを通じて化けの皮がはがれた金盛は、創志の顔色を窺いながら話し始める。
「……たぶん、弟が連れていかれたのは『処刑人』のところだ」
「処刑人?」
 随分と物騒な単語だ。創志は眉根を寄せて、続きを促す。
「知らないか? 昔美術館だった跡地に、魔女が住んでるって噂。その魔女は、『組織』の仲間だって話だ」
「組織っていうのは?」
「お、俺もよくわからん。ホントだぞ! 俺はお前の弟を『処刑人』のところに連れていくまでに邪魔が入ったら、そいつを止めるよう金で雇われただけだからな!」
 よほど殴られるのが嫌なのか、金盛が必死にわめき散らす。
(……『組織』ってやつは、魔女のところに信二を連れて行って一体何しようってんだ?)
 処刑人、なんて呼ばれるやつのところに連れていかれたんだ。いいことでないのは間違いない。
 髪をがしがしと掻きながら考えてみるが、すぐにあきらめる。
 考えるより先に、まずは行動だ。
「じゃ、その魔女のところに案内しろ。そういう約束だったからな」
「い、今からかよ!?」
「当たり前だろ」
「……今日はもう遅いし、明日にしないか――ぎゃっ!」
 ふざけたことを言う金盛のケツを思いっきり蹴り上げる。
 蹴られた尻をさすりながら創志をうらめしげに見つつ、金盛は渋々歩き始めた。
「あ、そうだ」
 その肩を掴み、創志は金盛に告げる。
 それは、約束と同じくらい大切なこと。

「信二のデッキは返してもらうぜ。お前の腕じゃ、到底使いこなせないだろうからな」




サイドS 1   了