遊戯王オリジナルstage 【ep-02】
「――――」
かづな。
何度も聞いたはずのその名前は、遥か彼方で響いているような感じがした。
珍しい名前だし、おそらく治輝の記憶にある少女と同一人物だろう。
――色んなものを押し付けてしまった、女の子。
(……落ち着け)
まずは、少年から詳しい事情を聞き出さなければならない。
浮足立つ心を抑えながら、まずは少年に対して冷静になるよう促そうとするが、
珍しい名前だし、おそらく治輝の記憶にある少女と同一人物だろう。
――色んなものを押し付けてしまった、女の子。
(……落ち着け)
まずは、少年から詳しい事情を聞き出さなければならない。
浮足立つ心を抑えながら、まずは少年に対して冷静になるよう促そうとするが、
「――お喋りはそこまでですよ」
新たに響いた声が、それを遮った。
治輝が、やや遅れて少年が、声のした方に振り返ってみると、そこには見覚えのある青年が立っていた。
「お前は……」
一見すると、気の弱そうな風貌。
しかし、その裏には得体の知れない「怖さ」を隠している。
治輝は、「怖さ」の片鱗を体感していた。
そう。
この世界に飛ばされる直前に。
「余興はここまでです。いい加減僕も焦れてきました」
最早隠す気もないのか、青年からは濃い殺気が全方位に向けて放たれている。
その左腕には、髑髏の装飾があしらわれた漆黒のデュエルディスクが装着されており、死神が持つ命を狩り取る鎌を連想させた。
「……何だよ、テメエは」
かづなの知り合いらしき少年は、彼のことを知らないようだ。
だが、治輝にとってはずっと探していた人物である。
「焦れてきた、か。その言葉、そっくりそのまま返す」
殺気に気圧されないよう緊張感を高めながら、治輝は言葉を放つ。
「お前には聞きたいことが山ほどあるんだ。どうして俺たちをこの世界に飛ばした? 俺や戒斗の他に、どれほどの人を巻き込んだ?」
青年が発動した<次元誘爆>。それが引き起こした現象により、治輝はこの世界に飛ばされた。
神楽屋や少年の話からすると、他にも同じように飛ばされた人間がいるらしい。
理由は知らない。
いや。
理由は大した問題ではない。
「答えろ……!」
どんな理由であれ、七水たちを危険な目に合わせた。それを許すことはできない。
すると、青年はうつむき、くっくっくっと含み笑いを漏らしてから、
治輝が、やや遅れて少年が、声のした方に振り返ってみると、そこには見覚えのある青年が立っていた。
「お前は……」
一見すると、気の弱そうな風貌。
しかし、その裏には得体の知れない「怖さ」を隠している。
治輝は、「怖さ」の片鱗を体感していた。
そう。
この世界に飛ばされる直前に。
「余興はここまでです。いい加減僕も焦れてきました」
最早隠す気もないのか、青年からは濃い殺気が全方位に向けて放たれている。
その左腕には、髑髏の装飾があしらわれた漆黒のデュエルディスクが装着されており、死神が持つ命を狩り取る鎌を連想させた。
「……何だよ、テメエは」
かづなの知り合いらしき少年は、彼のことを知らないようだ。
だが、治輝にとってはずっと探していた人物である。
「焦れてきた、か。その言葉、そっくりそのまま返す」
殺気に気圧されないよう緊張感を高めながら、治輝は言葉を放つ。
「お前には聞きたいことが山ほどあるんだ。どうして俺たちをこの世界に飛ばした? 俺や戒斗の他に、どれほどの人を巻き込んだ?」
青年が発動した<次元誘爆>。それが引き起こした現象により、治輝はこの世界に飛ばされた。
神楽屋や少年の話からすると、他にも同じように飛ばされた人間がいるらしい。
理由は知らない。
いや。
理由は大した問題ではない。
「答えろ……!」
どんな理由であれ、七水たちを危険な目に合わせた。それを許すことはできない。
すると、青年はうつむき、くっくっくっと含み笑いを漏らしてから、
「――答える必要はない」
一刀両断に切り捨てた。
そして、前髪をかき上げながら、芝居のように大げさに上半身を起こす。
それだけの動作で、青年の雰囲気が一変する。
今までは裏に隠れていた「怖さ」が、前面に押し出ている。
何かに飢えた瞳がギラリと光り、握った右拳がバキバキと音を立てる。眉毛は無く、不気味なほど白い肌が、微かな明かりの元に浮かび上がる。
「貴様らは俺様の『贄』だ。黙って俺様に搾取されていればいい」
言葉遣いも変わっている。まるで、人格が入れ替わってしまったかのようだ。
「テメエは……! あの時の!」
少年が何かに気付いたようだが、青年はそれを無視し、
「さあ、始めようか――最後の晩餐を」
両手を広げ、高らかに宣言する。
「まずは前菜だ。精々俺様を楽しませるんだな。時枝治輝、皆本創志、そして――」
言葉を切った青年は、視線を後方に投げ、ニヤリと口元を歪める。
そして、前髪をかき上げながら、芝居のように大げさに上半身を起こす。
それだけの動作で、青年の雰囲気が一変する。
今までは裏に隠れていた「怖さ」が、前面に押し出ている。
何かに飢えた瞳がギラリと光り、握った右拳がバキバキと音を立てる。眉毛は無く、不気味なほど白い肌が、微かな明かりの元に浮かび上がる。
「貴様らは俺様の『贄』だ。黙って俺様に搾取されていればいい」
言葉遣いも変わっている。まるで、人格が入れ替わってしまったかのようだ。
「テメエは……! あの時の!」
少年が何かに気付いたようだが、青年はそれを無視し、
「さあ、始めようか――最後の晩餐を」
両手を広げ、高らかに宣言する。
「まずは前菜だ。精々俺様を楽しませるんだな。時枝治輝、皆本創志、そして――」
言葉を切った青年は、視線を後方に投げ、ニヤリと口元を歪める。
「輝王正義」
その名前が告げられた瞬間、黒のコートを纏った長髪の男が姿を現した。