にわかオタクの雑記帳

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遊戯王 New stage 番外編 リボーン・ドライブ-25

 アームズコード――それは、槍を用いるナイトコードとは別の、<ドラグニティ・ドライブ>が生み出す刃の形。
 東吾曰く、シンプルな強さを発揮するナイトコードと違い、アームズコードは蘇生や特殊召喚効果の解釈が難しく、必殺技になりうる形での具現化が難しい。そのため、東吾はナイトコードの習得を勧めた。
 術式によるカード効果の具現化は、相応の知識が求められる。ただカードの効果を把握しているくらいでは武装や技としての具現化すら難しく、効果の解釈を誤れば、本来そのカードが持ち合わせているスペックを十分に引き出せないこともある。
 輝王が親友の<ドラグニティ>デッキを譲り受けてから短いとは言えないほどの時が流れたが、カードに対しての理解はまだまだ浅いと考えている。
 それでも――他のナイトコードの習得よりも、アームズコード<レヴァテイン>にこだわったのは。
(……これ以上ないほどの手本がいたからな)
 肩を並べて戦ったとき、向かい合って戦ったとき……とある青年の姿を思い浮かべれば、イメージを固定することはたやすいと輝王は思っていた。
 それが間違いでなかったことは、握った大剣が教えてくれる。
「決着をつけよう。瀧上轟」
 アームズコードの起動には成功したものの、輝王の体はとうに限界を越えていた。少しでも気を抜けばコードは解除され、そのまま崩れ落ちてしまうだろう。
 けれど、倒れない。背中を支えてくれる人たちがいる限り。
「……いいぜ。小細工は抜きだ。俺の拳で、テメエの最後の希望ってやつを砕いてやるよ」
 ゴウ! と瀧上の拳を覆う黒い炎が激しく燃え上がる。
 避けられるだけの体力は残っていない。この一撃に、全てを賭ける――
 両者が動いたのは、全くの同時。
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」
「ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!」
 気迫を咆哮に変え、駆ける。
 血塗られた欲望を止めるために。
 清廉すぎる正義を壊すために。
 輝王は、大剣を背負うように振りかぶる。
 瀧上は、黒の拳を腰だめに引く。
 上段からの振り下ろし。
 下段からの突き上げ。
 2つの力が、正面から激突する。
 交錯は一瞬。

「――俺の勝ちだな。輝王」

 バキリ、と。
 拳を受けた刃が砕け、真っ二つになる。
 折られた剣先は宙を舞い、瀧上の背後へと突き刺さった。
 輝王は、それを呆然と眺めることしかできない。
 そして、続く瀧上の左ストレートを、黙って受けるしかなかった。
「――――」
 胸部への打撃。黒い炎を伴ったそれは、輝王の肉体を焼き焦がしていく。
 心臓が、一瞬だけ止まった。
 なけなしの力でシールド・コードを展開し、全身に炎が燃え広がるのは食いとめたものの、最早呻き声さえ漏れない。
 ふらふらとよろめきながら後ずさりし、膝から崩れ落ちる。
「牙の抜けた人間の力なんてのは、こんなもんだ。テメエが俺を殺そうとしない限り、何回やっても結果は変わんねえ」
 コード<ダークフレア・アサルト>を解除した瀧上が、己の欲望を果たすために近づいてくる。戦いには幕が引かれ、これから始まるのは惨劇という名の宴だ。
「テメエがジョーカーだと思ってたモンは、ただの紙切れだったってことだよ」
 瀧上が告げると、輝王の手から折れた大剣が滑り落ちた。同時に、地面に転がっていた槍が、光の屑になって消えていく。
「仕舞いだ。輝王正義」
 そう言って、残忍な笑みを浮かべた瀧上の――

 足が、止まる。

「な……に……?」
 瀧上には、何故自分の足が止まったのか理解できていないようだった。
 見れば、金色に光輝く槍が、彼の腹部を貫いている。
「んだよ……これは、<ゲイボルグ>……!?」
「……正解だ」
 咳きこみ、血を吐きながらも、輝王は強引に立ち上がる。
 代わりに、瀧上の体が崩れ落ちた。
 そして、倒れた彼の背後には――アームズコード<レヴァテイン>の折れた刃が刺さっている。その刃から、ナイトコード<ゲイボルグ>の槍が現出し、瀧上を貫いたのだ。
「……<ドラグニティアームズ-レヴァテイン>は、召喚・特殊召喚に成功した時、墓地のドラゴン族モンスター1体を装備できる。そして、<レヴァテイン>が相手のカード効果によって墓地に送られたとき、装備していたモンスターを特殊召喚できる。少し考えれば分かるだろう?」

<ドラグニティアームズ-レヴァテイン>
効果モンスター
星8/風属性/ドラゴン族/攻2600/守1200
このカードは自分フィールド上に表側表示で存在する
「ドラグニティ」と名のついたカードを装備したモンスター1体をゲームから除外し、
手札または墓地から特殊召喚する事ができる。
このカードが召喚・特殊召喚に成功した時、
「ドラグニティアームズ-レヴァテイン」以外の
自分の墓地に存在するドラゴン族モンスター1体を選択し、
装備カード扱いとしてこのカードに装備する事ができる。
このカードが相手のカードの効果によって墓地へ送られた時、
装備カード扱いとしてこのカードに装備されたモンスター1体を特殊召喚する事ができる。

「破壊されたことによって、ぶっ壊された<ゲイボルグ>の槍を復活させたってのかよ……クソが。闇討ちは俺みたいなヤツの専売特許じゃねえのかよ」
「言っただろう? ジョーカーなら俺も持ち合わせている、と。それに、俺は臆病だからな」
「涼しい顔しやがって……食えねえ野郎だ。高良火乃より、テメエの方がよっぽど危険だったってことか……」
 正面から打ち破るのが理想だったのは言うまでもない。
 だが、奇策を用いらなければ勝てないほど、瀧上との実力差は開いていた。一度目のチャンス――最初のナイトコード<ゲイボルグ>で仕留めきれなかった時点で、輝王にはこの手しか残されていなかった。
「ふざけんなよ……こっからじゃねえか……俺の……」
 悔しさを滲ませた瀧上の言葉は、言い終えることなく途切れた。
 喜びもない。感慨もない。
 それでも、輝王正義は瀧上轟に勝った。
「瀧上轟……お前を逮捕する」
 返事はなかった。すでに意識を失ったらしい。
 懐から手錠を取り出し、瀧上の左手首に嵌めたところで、急に視界が暗転する。
 限界を越えて酷使した肉体は、これ以上の活動を許してくれなかった。