にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-10】

<邪神ドレッド・ルート>
効果モンスター
星10/闇属性/悪魔族/攻4000/守4000
このカードは特殊召喚できない。
自分フィールド上に存在するモンスター3体を
生け贄に捧げた場合のみ通常召喚する事ができる。
このカードがフィールド上に表側表示で存在する限り、
このカード以外のフィールド上のモンスターの攻撃力・守備力は半分になる。

「第二の邪神、か……それほどの力を有してなお、お前は力を求めるのか。強欲だな」
「当然です。僕が求める力は、邪神程度では留まりません。もっと強く、もっと大きく、もっと凶暴な力が欲しいんですよ。それに、欲望は強さです。戦いの果てに求めるものがない戦士など、戦士じゃない」
「何故、そこまで力を求める?」
「同じことを言わせないでください。それを貴方たちに語る理由はありません」
 輝王の問いに、砂神は悠然と構えたまま答える。
 貪欲に力を欲する砂神。
 その姿を見て、治輝は『影』――神楽屋とのタッグデュエルで倒した相手のことを思い出していた。
 影は、治輝と神楽屋のことを「力を行使し、間違いを犯した化け物だ」と言った。「貴様等がチカラを持っている事は危険スギル。赤子に刃物を持たセルようなモノだ」とも言った。
 そして、影が仕える主は、正しく力を振るえる存在だと言った。
 果たして、砂神緑雨が振るう力は、正しいものなのか?
(――違う)
 正しい力の使い方など、この世に存在はしない。
 力を振るう以上、誰かが傷つくことになる。その誰かから目を背けて正義を語ることは、ただの偽善だ。
 だが、間違った力の使い方は、分かる。
「僕は<冥界の宝札>の効果で2枚のカードをドロー。そのままバトルフェイズに入ります」
 フェイズが進行したと同時、<邪神ドレッド・ルート>の筋肉が大きく脈動し、その拳を振り下ろす瞬間を今か今かと待ちわびている。
「<エレメントチェンジ>が発動している状況下では、<カタストル>はこの上なく厄介なモンスターですね。早めに処理したいのですが、今の僕には打つ手がありません。ですから――」
 優雅にフィールドを見渡した砂神が、目を細めて笑みを浮かべる。
「用済みの<A・ジェネクストライフォース>には消えてもらいましょう」
 陳腐な表現だが――悪魔の微笑みと表すのがふさわしい笑顔だった。
「潰せ、<邪神ドレッド・ルート>……フィアーズ・ノックダウン!」
 解き放たれた第二の邪神は、獰猛な殺気を全身に漲らせ、拳を固く握りしめる。
 首がわずかに動き、葬るべき弱者――<A・ジェネクストライフォース>の姿を捉える。
「<邪神ドレッド・ルート>がフィールド上に存在している時、このカード以外のモンスターの攻撃力・守備力は半分になります! さあ! 噛みしめてください、弱さを!」
「――来るぞ。構えろ! 皆本創志!」
「やってる!」
 創志がデュエルディスクを盾のように構えた次の瞬間、凄まじい覇気を纏った<邪神ドレッド・ルート>の拳が振り下ろされた。
 瞬きする間もなく<A・ジェネクストライフォース>が砕け散り、地面に直撃した拳が大量の砂を巻き上げる。
 治輝たちの視界を覆い尽くすように舞いあがった砂は、邪神から放たれるオーラによって無数のナイフを形作る。
 歪な刃を光らせる、大量の砂の刃。
「――――」
 誰かが息を呑んだ瞬間。
 無数のナイフが、創志に向かって降り注いだ。
「ぐああああああああああああッ!」
 ズドドドドドドド! とまるで絨毯爆撃を思わせるような轟音が響き渡り、その中に創志の絶叫が混じる。

【創志LP4000→1250】

 あまりにも大量の砂のナイフが降り注いでいるため、創志の近くにいる治輝でさえも、彼が今どんな状態なのか把握することができない。だが、このまま攻撃が続けば創志がどんな状態になるかは、想像に難くなかった。
「……ッ! 大丈夫か!」
 治輝の叫び声は、砂のカーテンに阻まれて創志には届かない。
「――もうやめろ! <トライフォース>は破壊されただろ! これ以上の攻撃は無意味だ!」
 体の奥底から怒りが沸き上がり、治輝は反射的に吠えていた。
 こんなものが、正しい力の使い方とでも言うのか。
 違う。絶対に違う。
 その思いを視線に込め、治輝は砂神を睨みつける。
 ピラミッドの頂点からこちらを見下ろす砂神は、笑みを崩さぬまま、
「言ったでしょう? 弱さを噛みしめてください、と。それはデュエルの腕だけに限ったことじゃない」
 涼しい声で言い放った。
「――――ッ!!」
 一気に怒りが臨界点を超えたことを感じる。全身の血液が沸騰したかのような熱が駆け巡る。
「……『影』が言ってた。俺たちが力を持っていることは、赤子に刃物を握らせることと同じだって。お前も同じだ、砂神! 欲望の赴くままに力を振るうお前は……奪うために人を傷つけるお前は! 自分勝手なただの子供だ!」
 怒りに任せて叫ぶ。こんなにも感情が昂ぶったのは、久しぶりだった。
 『影』が言った「人が持つには危険すぎる力」。それを体現した男が、砂神緑雨だ。悪意だけで力を振るう人間――そんな奴を、許すわけにはいかない。
 すると、砂神は呆れたような表情を浮かべ、面倒くさそうに口を開いた。
「影……? ああ、あいつのことですか。あの影は僕が遥か昔に切り離した理性が変質したものですよ。力を拒み、恐れ、遠ざけようとした愚かな感情の成れの果て」
「な……に……?」
「この世界を作り出したとき、単一の個体として動けるようになったみたいだから、駒のひとつとして使っていたに過ぎません。『影』の戯言に耳を傾ける必要はないですよ。敗北を恐れるような愚図なんだから」
 心の底から嫌っているような口調で、砂神は自らのしもべを切り捨てる。
「敗北した者に何かを語る資格などない。弱者は、ただ黙って強者の養分になればいい。『影』もトカゲ頭も比良牙も……僕にとってはいずれ狩るべき養分に過ぎませんよ」
 そう語る砂神の瞳は、己だけを信じ、他人を遠ざける孤高の光が宿っている。
「……ッ! お前は――」

「――へっ、人格変わっても悪口だけは達者だな、この野郎」

 治輝が言い返す前に、声が響いた。
 いつの間にか砂のナイフによる攻撃は終了し、そこには、傷だらけになりながらもしっかりと両足で立つ少年の姿があった。
「……確かに、俺のサイコパワーは弱い。けど、黙ってテメエの養分なんかになるつもりはねえぜ。最後の最後まで足掻いてやる。最も、俺の言う最後ってのは俺たちが勝ったときのことだけどな」
 口の中に溜まっていた血を吐き捨て、威勢よく言葉を吐く創志だったが、その体はボロボロだった。腕や足に無数の切り傷が刻まれており、額の傷からは激しく出血している。以前にも同じような攻撃を受けたのか、衣服の損傷が激しく、上着は最早ただの布切れと化していた。
「……強がりは見苦しいですよ」
「強がりなんかじゃねえ! 俺は――」
「――追い込まれるほど強がるのが皆本創志だ。言ってやるな、砂神」
「き、輝王、てめえ!」
 予想外のツッコミに慌てる創志。例え強がりだったとしても――あの傷で全く戦意を鈍らせないのは、さすがと言うしかなかった。
「血止めの軟膏と包帯だ。次のターンが回ってくる前に手当てを済ませておけ」
「っと、サンキュー」
 輝王がジャケットの内ポケットから軟膏の瓶と包帯を取りだし、創志に向かって放り投げる。それを器用に受け取った創志は、その場に座り込んで傷の手当てを始めた。
「……僕はカードを1枚伏せて、ターンを終了します」
 その光景に毒気を抜かれたのか、砂神は言葉少なにターンを終了する。
(これ以上邪神の攻撃を通すわけにはいかない)
 次に創志が邪神の攻撃を受ければ、例えライフが残っていようとも、肉体が限界を迎えるだろう。
 何より、誰かが傷ついている姿を見るのが、たまらなく嫌だった。
 静かに決意を固めた治輝は、デッキからカードをドローする。

【砂神LP6000】 手札6枚
場:邪神ドレッド・ルート(攻撃)、冥界の宝札、伏せ1枚
【輝王LP3000】 手札1枚
場:AOJカタストル(攻撃)、機甲部隊の最前線、エレメントチェンジ(光指定)、伏せ2枚
【治輝LP4000】 手札6枚
場:裏守備モンスター、伏せ1枚
【創志LP1250】 手札2枚
場:裏守備モンスター、マシン・デベロッパー(カウンター6)