遊戯王オリジナルstage 【ep-01】
飢えている。
渇いている。
どれほどの力を得ようとも、満たされることがない。
だが。
渇いている。
どれほどの力を得ようとも、満たされることがない。
だが。
「もうすぐで――」
飢餓に溢れた日常は、終わりを迎える。
目指す先に在るもの。
それは。
目指す先に在るもの。
それは。
「もうすぐで、僕は――」
狂える。
◆◆◆
「……あの高さから落ちたにしては、不思議なくらいに無事だ」
体の具合を確かめながら慎重に体を起こした治輝は、五体満足どころか痛みもほとんど無い状態に疑問を覚えていた。
蛍のような淡い光を放つ奇妙な壁。それを力づくで突破しようと攻撃を仕掛けたが、壁には傷一つ付かなかった。そして、その壁は破壊に失敗すると一番近くにいる人物を「落とす」罠が仕掛けられていた。
以前――こことは違う「異世界」で、治輝は同じような物を発見しており、その時もこうして落とし穴にはまったのだ。腰を盛大に打ち付けしばらく動けなくなり、戒斗に笑われたことをしっかり覚えている。
だから、今回はそんな醜態を晒さぬよう、落下中に体勢を整えて受け身を取ろうとしていたのだが……どうやらそれは不要だったようだ。
立ち上がった治輝は、服に付いた砂を払う。水分をほとんど含んでおらず、軽くて軟らかな砂だ。これがクッションになったのだろう。
(けど……それだけじゃ説明できない)
落下していた時間から考えると、かなりの高さから落ちてきたはずだ。柔らかな砂の上に落ちたから無事だった、だけでは納得できない。
地面に接触する直前、治輝の全身を奇妙な浮遊感が包んだ。落下の衝撃を殺すかのように突然起こった現象……あれは一体何だったのか。
(……ここは俺の知っている世界じゃない。考えるだけ無駄か)
「異世界」では、現実では考えられないような現象が度々起こった。いちいち原因を探求するのが馬鹿馬鹿しく思えるほどに、だ。なので、治輝は深く考えることをやめた。
治輝が落下した場所は、広大な砂漠だった。
天上に広がるのは、夜空だ。月はなく、ポツポツと光る僅かな星の光だけが、辺りを照らしている。あの空の上に神楽屋たちがいることは――まずないだろう。おそらく、どこかで別の空間に転送されたのだ。
見た限りでは、目立った建造物は見えない。どこまでも砂の大地が続いている。
「……夜の砂漠って、結構寒いんだな」
汗さえも蒸発してしまう灼熱のイメージが強い砂漠という土地だが、日中の気温差は激しく、夜は氷点下まで落ち込むところも存在する。治輝がいるこの場所はそこまで寒くはないものの、軽装では肌寒さを感じるくらいには冷えていた。
とりあえず、はぐれてしまった神楽屋たちと合流しなければならない。治輝は目の前にあった砂の丘に登り、もっと遠くまで見渡そうと目を凝らす。
ちょうどそのタイミングで、
「比良牙―! いるんだろ!? 出てきやがれ!」
誰かの怒声が響き渡った。
見れば、丘を下った先に、大きな試験管のような物体が横倒しになっていた。よく見れば、ゲームに出てくるようなワープ装置に見えなくもない。
そのワープ装置らしきものの上に乗って、大声で喚いている少年がいた。
「…………」
声をかけようかどうしようか迷っているうちに、少年の方が治輝を見つけたようだ。
素早く装置の上から飛び降りると、だだだっ! とこちらに向かって丘を上ってくる。
(敵……ってわけじゃなさそうだな)
そうは思いつつも警戒は怠らない。
すぐにデュエルディスクを展開できるよう身構えていると、駆けあがってきた少年は息を切らせながら治輝の両肩を掴み、
「なあ、この辺で比良牙ってヤツを見かけなかったか!?」
挨拶も無しに、いきなり問いを投げつけてきた。
「……ヒラガ? 聞いたことのない名前だな。どんな奴だ?」
「陰険でムカつく野郎だ! 俺をこんなところに飛ばしやがって……」
「えーと、それじゃわからん。具体的な容姿とかを教えてくれないか?」
「……信じてもらえないかもしれねえけど、人の大きさくらいのからくり人形なんだ――ってあれは遠くから操ってただけか。ってなると……あれ? 比良牙ってどんなヤツなんだ?」
言いながらうんうん考え始める少年。
ヒラガという人物に心当たりはないが、それよりも気になることがあった。
「ちょっと話を戻していいか? こんなところに飛ばされた、って言ってたが、一体どこから――」
「そうだよ! 早いとこ戻らねえと、かづな達が危ねえんだ!」
体の具合を確かめながら慎重に体を起こした治輝は、五体満足どころか痛みもほとんど無い状態に疑問を覚えていた。
蛍のような淡い光を放つ奇妙な壁。それを力づくで突破しようと攻撃を仕掛けたが、壁には傷一つ付かなかった。そして、その壁は破壊に失敗すると一番近くにいる人物を「落とす」罠が仕掛けられていた。
以前――こことは違う「異世界」で、治輝は同じような物を発見しており、その時もこうして落とし穴にはまったのだ。腰を盛大に打ち付けしばらく動けなくなり、戒斗に笑われたことをしっかり覚えている。
だから、今回はそんな醜態を晒さぬよう、落下中に体勢を整えて受け身を取ろうとしていたのだが……どうやらそれは不要だったようだ。
立ち上がった治輝は、服に付いた砂を払う。水分をほとんど含んでおらず、軽くて軟らかな砂だ。これがクッションになったのだろう。
(けど……それだけじゃ説明できない)
落下していた時間から考えると、かなりの高さから落ちてきたはずだ。柔らかな砂の上に落ちたから無事だった、だけでは納得できない。
地面に接触する直前、治輝の全身を奇妙な浮遊感が包んだ。落下の衝撃を殺すかのように突然起こった現象……あれは一体何だったのか。
(……ここは俺の知っている世界じゃない。考えるだけ無駄か)
「異世界」では、現実では考えられないような現象が度々起こった。いちいち原因を探求するのが馬鹿馬鹿しく思えるほどに、だ。なので、治輝は深く考えることをやめた。
治輝が落下した場所は、広大な砂漠だった。
天上に広がるのは、夜空だ。月はなく、ポツポツと光る僅かな星の光だけが、辺りを照らしている。あの空の上に神楽屋たちがいることは――まずないだろう。おそらく、どこかで別の空間に転送されたのだ。
見た限りでは、目立った建造物は見えない。どこまでも砂の大地が続いている。
「……夜の砂漠って、結構寒いんだな」
汗さえも蒸発してしまう灼熱のイメージが強い砂漠という土地だが、日中の気温差は激しく、夜は氷点下まで落ち込むところも存在する。治輝がいるこの場所はそこまで寒くはないものの、軽装では肌寒さを感じるくらいには冷えていた。
とりあえず、はぐれてしまった神楽屋たちと合流しなければならない。治輝は目の前にあった砂の丘に登り、もっと遠くまで見渡そうと目を凝らす。
ちょうどそのタイミングで、
「比良牙―! いるんだろ!? 出てきやがれ!」
誰かの怒声が響き渡った。
見れば、丘を下った先に、大きな試験管のような物体が横倒しになっていた。よく見れば、ゲームに出てくるようなワープ装置に見えなくもない。
そのワープ装置らしきものの上に乗って、大声で喚いている少年がいた。
「…………」
声をかけようかどうしようか迷っているうちに、少年の方が治輝を見つけたようだ。
素早く装置の上から飛び降りると、だだだっ! とこちらに向かって丘を上ってくる。
(敵……ってわけじゃなさそうだな)
そうは思いつつも警戒は怠らない。
すぐにデュエルディスクを展開できるよう身構えていると、駆けあがってきた少年は息を切らせながら治輝の両肩を掴み、
「なあ、この辺で比良牙ってヤツを見かけなかったか!?」
挨拶も無しに、いきなり問いを投げつけてきた。
「……ヒラガ? 聞いたことのない名前だな。どんな奴だ?」
「陰険でムカつく野郎だ! 俺をこんなところに飛ばしやがって……」
「えーと、それじゃわからん。具体的な容姿とかを教えてくれないか?」
「……信じてもらえないかもしれねえけど、人の大きさくらいのからくり人形なんだ――ってあれは遠くから操ってただけか。ってなると……あれ? 比良牙ってどんなヤツなんだ?」
言いながらうんうん考え始める少年。
ヒラガという人物に心当たりはないが、それよりも気になることがあった。
「ちょっと話を戻していいか? こんなところに飛ばされた、って言ってたが、一体どこから――」
「そうだよ! 早いとこ戻らねえと、かづな達が危ねえんだ!」