にわかオタクの雑記帳

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にわかのアークナイツプレイ記 「ウルサスの子供たち」シナリオ感想 灰色に支配された彼女たちの冬

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心に積もった薄汚れた雪が解けるのは、今ではない――

 

 

29日からスタートとなったアークナイツの新イベント、「ウルサスの子供たち」
先行する大陸版とはスケジュールが異なり、本来ならもっと後に来るはずのイベントだったようです。
本編のスタート地点、レユニオンにより占拠されたウルサス都市、チェルノボーグ。そこに住む学生たちがメインの話とあって、「重い」との評判をちょくちょく耳にして、全体的に陰鬱としたストーリーが多いアークナイツの中での「重い」とはどの程度のものなのだろう……とかなり気になっていました。初期から愛用しているズィマーに深く関わる話でもあったので余計に。
日本でプレイできるのはもっと先になるだろうなーと思っていたので、前倒しは素直に嬉しかったです。ロサのビジュアル見たときからお迎えしたかったしね!

 


シナリオを解放するだけなら、専用ステージをクリアしなくても、適当な通常ステージ周回でアイテム集めて交換でよかったので、さくっと解放して、一気に読みました。

 

 

 

 

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……うん、まあ、評判通り重かったですね…………


阿鼻叫喚の地獄絵図だったチェルノボーグで、学生たちはいくつかの学校に集められ強制隔離。そこで何が起こったのかを、時系列に沿って事細かに描写するのではなく、5人の「ウルサス学生自治団」+1人の少女の視点を通して断片的に、かつ様々な情景がぼかされながら描かれるため、読み手が想像、あるいは妄想で「あったであろう悲劇」を補完してしまうため、どんどん鬱々とした空気が広がっていく、あまり味わったことのない「重さ」でした。
閉鎖空間に置ける争いの連鎖は他作品でも多く描かれているため、補完妄想を加速させる材料が豊富に揃っているところが辛い……

 


では、この辺りでネタバレ込みの感想を書いていきます。
これから読む予定の方は、回れ右をお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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信じた「正義」が裏目になる――


いくつものエピソードを通して描いた、ひとつのテーマだったのではないかと思います。


学生たちを学校に閉じ込め、隔離する指示を出したレユニオンの幹部、パトリオット。(序章・一章をクリアしたのが大分前のため解釈違いだったら申し訳ないのですが)彼はウルサスの子供たちを、自分たちが生み出してしまった地獄から、少しでも遠ざけようとしたんじゃないかと。学校外で起こる悲劇の連鎖から、子供たちを守るためにあえてその指示を出したのだと、俺は受け取りました。
事実、生き延びたズィマーたちも「外に出てからの方が地獄だった」と言っていますし。パトリオットの指示がなければ、彼女たちは生きてロドスに保護されることもなかったのだと思います。
しかし、それはナターリア……ロサが「あそこで死んでいたほうがよかった」と打ち明けるほど、生きながらえてしまったことによる苦しみに苛まされるほどの、「別の地獄」を生んだ。
学生たちによる血みどろの生存競争、言葉が意味を成さない暴力が支配する世界、生き延びるために「友だった」者を手にかける世界……いっそのこと狂ってしまったほうが正気を保てるほどの、悲惨な世界。

 

 

 

 

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ズィマーも、イースチナも、ロサも、「あのときはこれが正しいと思った」行いに、今も苦しんでいます。今も変えられないグムの習慣は、過酷な環境を生き延びるためのものと、現在のロドスに適応するための誓約。
個人的には、ロサの「狂った正しさの中で死んだ方が幸せだった。平常を知らなければ苦しむこともなかった」との独白がすごい胸に来てですね……
貴族としての教育による、平民とはずれた感覚。平時の価値観が通用しない、狂気にまみれた世界。それぞれに「適応」してしまったナターリアは、ロドスに来て「当たり前が当たり前に行われる世界」に身を置いたことで、どれほどの後悔と贖罪の念に駆られたのでしょう。自死を迷い、選べない自分。何を成しても拭えない過去。想像を絶するほどの葛藤が、彼女の中で渦巻いている……

 

 

 

 

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それはロサだけではなく、自分の仲間を守るために容赦のない取捨選択をしたであろうズィマーも、「仲間の死の真相」を胸に秘めたままのイースチナも、ロドスに馴染んでるようで馴染みきれていないグムも同じ。比較的ダメージの少なそうに見えるリェータでさえも、全て吹っ切ったわけではないでしょう。
彼女たちの苦しみは同じ地獄を経験した彼女たちにしか理解できず、簡単に取り除けるものではない。
安心させるために「もう大丈夫」と優しく諭しても、彼女たちの瞳の陰りは晴れない。
作中でアーミヤが言及したように、救いの手を差し伸べることが必ずしも当人の助けになるわけではありません。


ロドスにはズィマーたちに負けず劣らずな経験をした人々もいるでしょう。まだ明かされていませんが、アーミヤの人生もそうとう過酷なはずです。
しかし、そういった人々が「似た経験をしたから君たちの苦しみは分かるよ」と言葉を投げても、閉ざされた心を開くことには繋がらない。
彼女たちの「地獄」は、チェルノボーグのそこにしかないのだから。
ロドスのオペレーターとして戦うのではなく、どこか遠くの静かな場所で穏やかに暮らして欲しいと考えてしまうのですが、そうすれば彼女たちの心はきっと壊れてしまう。ロサも、自ら命を絶っていたかもしれません。自分が与えた「優しさ」が、刃となり得ることもある。

 

酷ですが、雪解けを待つしかない時もある――いつの日か、彼女たちが心の底から笑い合って、お茶会を楽しめることを願いながら。
それが叶わないと分かっていても、願わずにはいられない。そんな読後感でした。

 

 

 

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ただ、ウルサス学生自治団がそんな悲惨な状況にあったことを知らないであろうアブサントが、「警官だった父は暴徒と化した学生たちに殺された」と信じているであろう少女が、仲良さそうに歩いているズィマーたちを目撃した時の胸中を思うと、もうね……言葉に詰まりますよね……
その先を描かないことを「ずるい!」と糾弾したいような、「英断だ」と褒めたいような、複雑な心境です。
親の仇と肩を並べて戦えって言われて、はい分かりましたって頷けるわけない。掴みかかって殴り飛ばしたって意味がない。
アブサント含め、彼女たちの苦しみは続き、救いはまだ訪れない。

 

 

書いててどんどん気分が重くなってきますわ……グムなんて前のイベントじゃ癒やしマスコットだったのに、過去がこんなに重たいなんて……
今まで流してしまっていたセリフやプロファイルの意味合いが一変する、良シナリオだったと認めたくないのに読んで良かったと思ってしまう、ある種期待通りのシナリオでした……

 

 

 

 

 

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春は、いずこに。