にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage エピローグ

 広々とした執務室に、ノックの音が響き渡る。
「入りたまえ」
 扉の向こうにいる相手に入室を促したあと、アルカディアムーブメントの総帥、ディヴァインは席を立った。
 ガチャリと扉が開き、一人の男が姿を現す。
「久しぶりだな。手続きが遅れてしまってすまなかった」
「いえいえ。収容所の生活はそれなりに興味深いものがありましたし、楽しかったですよ」
 ディヴァインは、男をねぎらうように肩を叩く。

「長い間ご苦労だった……光坂」

「おや。総帥の口からそんな言葉が出るとは思っていませんでしたよ」
 痩せこけた顔を歪め、白衣を纏った男――光坂慎一はおどけてみせる。
「冗談はいい。それより――」
「分かっています」
 そう言って、光坂は白衣のポケットからCD―ROMの入ったケースを取り出す。ケースは複数枚あるようで、ゴムで束ねられていた。
「これまでサイコデュエリストが行った戦闘のデータをまとめたものです。時間が足りなかったので、整理はしてませんよ」
「十分だ」
 ケースの束を受け取ったディヴァインは、満足げにそれを見つめる。
 アルカディアムーブメントの施設で行える実験では、採取できるデータに限界がある。より実戦に近い状況で、サイコデュエリストはどこまでの力を発揮できるのか。
 ディヴァインの野望――サイコデュエリストを兵士として育成し、世界に復讐するために、どうしても必要なデータだった。
 そのために、サテライトに光坂を派遣し扱いやすい「駒」を手に入れ、治安維持局に手を回して体のいい「敵」を作り上げる。多少予定と違う展開となったが、目的であるデータ採取は十分すぎるほどに行えた。
 ――これで、俺の望む世界にまた一歩近づいた。
 ディヴァインは、自分の顔に貼りついた凶悪な笑みを見せないために、光坂に背を向けた。
「でも、よかったのですか? 今回の件で、氷の魔女、光の子、紅姫を失うことになってしまいましたが……総帥がお望みなら、取り戻すのは簡単ですがね」
 氷の魔女、ティト・ハウンツ。
 光の子、リソナ。
 紅姫、大原竜美。
 おそらくは一級品の兵士になるであろう者たちの名前だ。
「惜しくないといえば嘘になるが……問題はない」
 全面ガラス張りになった外壁を通し、眼下に広がる街を見下ろす。
 しかし、ディヴァインの瞳に映るのは、シティの街並みではない。
「『彼女』がいれば事足りるさ」
 自分ことを信頼しきった、扱いやすい「魔女」。

「そうだろう? アキ――」

 ディヴァインの呟きは、虚空へと吸い込まれていった。










 戦いは終わらない。
 赤き竜の痣に導かれたものたち、シグナー。
 新たなる舞台で、彼らの決闘が幕を開ける。