にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 9-1

「リソナはいい子だから、闇雲に人を殺したりはしないです! ちゃんとデュエルして、リソナが勝ったら殺してあげるです!」
 言葉の内容とは程遠い、邪気のない笑顔を振りまく少女――リソナ。
 不思議の国に迷い込みそうな可愛らしい容姿の少女に対し、輝王は一瞬たりとも気が抜けなかった。
 ――戦慄するほどの殺気。
 隠そうともしない鋭敏なそれが、部屋中に放たれていた。
「……輝王さん」
 セラの声色にも、緊張感がにじみ出ている。
「何だ?」
「覚えていますか? あなたが初めて宇川さんと出会った事件――レボリューションによるアルカディアムーブメントの襲撃を」
 無論、覚えている。
 アルカディアムーブメント本社ビルで起きた爆破テロ。当時からレボリューションのことを探っていた輝王は、逃走を図る宇川を追い詰るも、取り逃した。結果、独自行動の責任を問われ、サテライトの支部へと左遷された。
 輝王が頷き返すと、セラは続けた。
「あの事件は、派手に爆破テロを起こすことによって、セキュリティを動かす狙いがありました。同時に、治安維持局に自分たちの存在を知られたレボリューションが、決起を早めるようにと宇川さんが仕組んだものです」
 あまり上手くはいきませんでしたがね、とセラは苦笑いを浮かべる。
「ですが、それだけではありません。レボリューションは、アルカディアムーブメントから『とある人材』を誘拐しました」
「とある人材……?」
 そこでセラは一息をつくと、声のトーンを落として切り出した。
「光の子、と呼ばれていた少女です」
 セラの視線がリソナへと向けられる。彼が何を言いたいかはすぐに分かった。
「氷の魔女……ティト様と同等か、それ以上の力を持つサイコデュエリスト。それが――」
「あー! リソナの悪口言ってるですね!」
 こちらの会話を聞いていたのか、頬を膨らませた金髪の少女が輝王たちを指差す。
「リソナは光の子なんかじゃありません! リソナにはリソナって立派な名前があるんです! 竜帝さんからつけてもらった、とってもとっても大切な名前なんです!」
 右手をブンブン振り回し、顔を真っ赤にしながら抗議してくるリソナ。
(……竜帝?)
 輝王の頭の中で何かが引っかかったが、ここは深く考えないようにした。
「それはそれは申し訳ありませんでした。以後は気をつけますよ」
 対し、セラは深々と頭を下げる。それを見て納得したのか、リソナは元の無邪気な様子に戻って、
「じゃ、まずは誰からです? リソナはもう準備OKですよ!」
 ディスクを展開し、デュエルの始まりを促してくる。
 ――光の子、か。
 リソナはサイコデュエリストだ。その二つ名がデュエルと全く関係のないところからつけられる、ということは考えにくい。光属性モンスター相手に効果を発揮する<AOJ>なら、戦いを有利に進められるだろう。
 サイコデュエリストとしての力を持たない輝王では、1つの攻撃で命を落としかねないが……そんな理由でデュエルを躊躇するのなら、この場所に立ってはいない。
 輝王が対戦相手として名を上げようとした直前。
「――わたしが行く」
 先に進み出たのは、銀髪の少女――ティト・ハウンツだった。
「いい?」
 同意を求め、ティトは輝王を見上げてくる。灰色の瞳に映る感情は読みとれない。
 ――皆本創志なら、また違ったんだろうがな。
 しかし、この貨物船に乗り込む前――ただ虚空を見つめていた瞳とは、明らかに違う。それくらいは輝王にも分かった。
「……俺は構わない」
 今の彼女を止める理由はない。むしろ、「氷の魔女」という異名を持つ分、輝王よりも適任だろう。
 輝王は横目でセラに視線を流すが、彼は呆れ顔で眼鏡の位置を直しただけで、何も言わなかった。
「ありがと」
 短く礼を言ったティトは、左腕のデュエルディスクを展開させる。
「あなたが一番手です? 名前教えてもらえるとリソナうれしいです」
「……ティト。あなたと同じ、サイコデュエリスト
 元気いっぱいのリソナに対し、ティトは抑揚のない声を返す。
「ティトもサイコデュエリストなんですか! でも、リソナと同じっていうのは間違いです!」
 そう言って、リソナは両手を腰に当て、えへんと胸を張る。
「どういうこと?」
 特に気にした様子もなく、ティトが問い返す。
 すると、金髪の少女は自分の胸を叩き、
「だってリソナ、すっごく強いです!!」
 声高々と宣言した。