にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 9-2

「先攻はゆずってあげるです! ちゃっちゃと進めちゃうです!」
「――それじゃ、行くね。ドロー」
 年端もいかない少女同士のデュエル。特に、リソナはまだ10歳にもなっていないだろう。
 絵面だけ見れば微笑ましいかもしれないが、舞台となっている休憩室は、異様なほどの緊張感に覆われていた。
 金と銀。対照的な色の髪が、吹き込んできたわずかな風に、なびく。
 リソナは奥へと通じる扉の前に立っている。彼女を倒さずに皆本信二を追うことは難しい。下手に動けば、別れた創志や切と合流できなくなる可能性もある。
「今は見守るしかないでしょう。ティト様なら大丈夫ですよ」
 輝王の心中を見透かしたように、セラが声をかけてくる。
「……だといいがな」
 輝王にとって、ティトのデュエルを見るのはこれが初めてだ。
 「氷の魔女」。その実力はどれほどのものなのか。
 そして、「光の子」と呼ばれていたリソナは――
「モンスターをセット。カードを1枚伏せてターンエンド」
 ティトの場に2枚の伏せカードが現れ、そのままターンが終了する。
 先攻の手としては、ごくオーソドックスなものだ。

【ティトLP4000】 手札4枚
場:裏守備モンスター、伏せ1枚
【リソナLP4000】 手札5枚
場:なし

「リソナのターンです! ドローです!」
 少女のアニメ声が、耳にキンキンと響く。
「リソナは<ライトロード・パラディン ジェイン>を召喚するです!」
 召喚宣言と共に現れたのは、白金の鎧を纏い、白のマントを翻す白髪のナイトだ。自らの勇猛さを示すように、手にした剣を天にかざす。

<ライトロード・パラディン ジェイン>
効果モンスター
星4/光属性/戦士族/攻1800/守1200
このカードは相手モンスターに攻撃する場合、
ダメージステップの間攻撃力が300ポイントアップする。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送る。

「――なるほど」
 あのモンスター……<ライトロード>が、リソナを「光の子」と称する由来。
「<ジェイン>で伏せモンスターを攻撃するです!」
 <ライトロード・パラディン ジェイン>の掲げた剣に光が宿る。
 パラディンの剛直な剣閃が、ティトの裏守備モンスターを両断する。
 氷の羽を散らし、消えていく一羽の鳥。
「わたしのモンスターは<氷結界の番人ブリズド>。このカードが戦闘破壊され墓地に送られたとき、デッキからカードを1枚ドローする」

<氷結界の番人ブリズド>
効果モンスター
星1/水属性/水族/攻 300/守 500
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「むむ。アド確保ですね。リソナはカードを2枚伏せてターンエンドするです」
 白髪のパラディンが場に戻り、剣を構えなおす。
「エンドフェイズ! <ジェイン>の効果で、自分のデッキの上からカードを2枚墓地に送るです」
「…………?」
 ティトが不思議そうに首をかしげる
「……どうやら、<ライトロード>と名のつくモンスターには、デッキからカードを墓地に送る制約があるようですね」
 セラの分析に、輝王は頷く。
 しかし、ただ闇雲にデッキを減らし、自殺を図っているわけではないだろう。何か狙いがあるはずだ。
「2枚墓地へ……っと。あ! <ライトロード・レイピア>が墓地に送られたので、効果で<ジェイン>に装備です! <ジェイン>の攻撃力は700ポイントアップして、2500です」
 パラディンの持つ剣が、刃から青白い光を放つレイピアに変わる。

<ライトロード・レイピア>
装備魔法
「ライトロード」と名のついたモンスターにのみ装備可能。
装備モンスターの攻撃力は700ポイントアップする。
このカードがデッキから墓地に送られた時、
このカードを自分フィールド上に存在する「ライトロード」
と名のついたモンスター1体に装備する事ができる。

「…………」
 デッキから墓地に送られることで、効果を発揮するカード。
 それも狙いの一つだろうが、まだ何かあるはずだ。

【ティトLP4000】 手札5枚
場:伏せ1枚
【リソナLP4000】 手札3枚
場:ライトロード・パラディン ジェイン(攻撃・ライトロード・レイピア装備)、伏せ2枚

「わたしのターン」
 静かにカードを引くティト。果たして、彼女がその狙いに辿りつけるかどうか。
「<ウォーターハザード>を発動。自分フィールド上にモンスターが存在しないとき、手札からレベル4以下の水属性モンスターを特殊召喚できる。わたしは<氷結界の破術師>を特殊召喚

<ウォーターハザード>
永続魔法
自分フィールド上にモンスターが存在しない場合、
手札からレベル4以下の水属性モンスター1体を特殊召喚する事ができる。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

 小規模な波の間から姿を現したのは、橙色の法衣を着た銀髪の僧侶だ。

<氷結界の破術師>
効果モンスター
星3/水属性/魔法使い族/攻 400/守1000
自分フィールド上にこのカード以外の「氷結界」と名のついたモンスターが
表側表示で存在する限り、お互いに魔法カードはセットしなければ発動できず、
セットしたプレイヤーから見て次の自分のターンが来るまで発動する事はできない。

「伏せカードを使う。<リミット・リバース>。蘇生させる対象は<氷結界の番人ブリズド>」
 役目を終えたはずの氷の鳥が、<リミット・リバース>によって戦場に呼び戻される。

<リミット・リバース>
永続罠
自分の墓地から攻撃力1000以下のモンスター1体を選択し、攻撃表示で特殊召喚する。
そのモンスターが守備表示になった時、そのモンスターとこのカードを破壊する。
このカードがフィールド上から離れた時、そのモンスターを破壊する。
そのモンスターが破壊された時このカードを破壊する。

 ここまでの展開を終えて、ティトは一呼吸を置いた。
「――――」
 その間にも、リソナが伏せカードを使う気配はない。
 確認してから、ティトは動いた。
「……<氷結界の風水師>を召喚」
 朱色の混じった髪を頭の上の方で2つに分け、水色の法衣を纏った少女がフィールドに現れる。その右手は、八角形の鏡が吊るされた紐を握っている。

<氷結界の風水師>
チューナー(効果モンスター)
星3/水属性/魔法使い族/攻 800/守1200
手札を1枚捨て、属性を1つ宣言して発動する。
宣言した属性のモンスターはこのカードを
攻撃対象に選択する事ができない。
この効果はこのカードがフィールド上に
表側表示で存在する限り1度しか使用できない。

 ティトの場に、3体のモンスターが並ぶ。
「まさか、早々に<グングニール>を呼びだすつもりですか……?」
 セラの指摘通り、合計レベルは7。先程<天魔神ノーレラス>に痛打を与えた氷の龍を呼び出せる状況にある。
 しかし、その予想は外れた。
「レベル3の<破術師>にレベル3の<風水師>をチューニング」
 氷の鳥をフィールドに残し、2体のモンスターが光の柱に包まれる。
「全てを砕く絶氷の牙――シンクロ召喚。吼えろ、<氷結界の虎王ドゥローレン>」
 ティトの場に氷の壁が出現し、それを砕いて現れる漆黒の鎧を纏った白き虎。
 雄々しく吠えた虎王は、パラディンを威嚇するように唸り声を上げる。

<氷結界の虎王ドゥローレン>
シンクロ・効果モンスター(準制限カード)
星6/水属性/獣族/攻2000/守1400
チューナー+チューナー以外の水属性モンスター1体以上
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する
カードを任意の枚数手札に戻すことができる。
このカードの攻撃力はこのターンのエンドフェイズ時まで、
この効果で手札に戻したカードの枚数×500ポイントアップする。

「わあ! ティトもシンクロ召喚を使うですね! 光坂や信二と一緒です! でも、そのモンスターじゃ攻撃力の上がった<ジェイン>に勝てないですよ?」
「うん。だから<ドゥローレン>の効果を発動。自分フィールド上の表側表示カードを任意の枚数手札に戻し、戻した数×500ポイント攻撃力をアップさせる。わたしは<ブリズド>、<リミット・リバース>、<ウォーターハザード>を手札に戻す」
 3枚のカードがティトの手札に戻り、同時に微量の氷の屑が宙に漂う。
「――フリージング・リインフォース
 さあっ、と銀色のカーテンがティトの場を覆い、行き場もないまま漂っていた氷の屑が、導かれるように<氷結界の虎王ドゥローレン>の牙へと集まっていく。
 パキパキ、と音を立て、研磨されていく氷の牙。
 ティトが<氷結界の虎王ドゥローレン>の効果「フリージング・リインフォース」で手札に戻したカードは3枚。よって、攻撃力は1500ポイント上昇し、3500。並大抵のモンスターでは太刀打ちできない攻撃力だ。
「わわ!? これはピンチです!?」
 リソナが驚きの声を上げるが、ティトは止まらない。