にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 9-7

「<裁きの龍>……?」
 その存在感に、輝王は<裁きの龍>から目を離すことができない。

<裁きの龍>
効果モンスター(準制限カード)
星8/光属性/ドラゴン族/攻3000/守2600
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地に「ライトロード」と名のついた
モンスターが4種類以上存在する場合のみ特殊召喚する事ができる。
1000ライフポイントを払う事で、
このカード以外のフィールド上に存在するカードを全て破壊する。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分のエンドフェイズ毎に、自分のデッキの上からカードを4枚墓地へ送る。

「ティトの狙いは分かってるですよ。さっき<グングニール>の効果で手札から捨てた<氷結界の守護陣>――それを<リミット・リバース>で蘇生させて、リソナの攻撃を封じるつもりですね。だから――」
 今までとは比べ物にならないほどの洞察力を見せたリソナは、推論を述べる。
「<裁きの龍>の効果を発動……! 1000ライフを支払うことで、フィールド上に存在するこのカード以外のカードを全て破壊するです!」
 限界まで開かれた翼に、破壊をもたらす光が集っていく。

【リソナLP2400→1400】

「リヒト・レクイエム!」
 
「来ます!」
 セラの鋭い叫びが飛んだ刹那、圧倒的な量の光弾が、龍の翼から一斉に放たれる。
「――――!」
「輝王さん!」
 その内の1つが何もない地面に着弾すると、天に向かって光の柱が立ち昇る。
 途端、広大な空間を光で埋め尽くすように、光の柱が無数に出現する。
「…………っ!!」
 白に覆われる視界の脇に、砕ける<氷結界の龍グングニール>の姿が見えた。
「ティト・ハウンツ!」
 輝王の叫びは、光によって阻まれ届かない。
「ぐ……!」
 輝王の体が白に飲みこまれるか否かの瀬戸際に追い込まれたとき。
 何の前触れもなく、急速に光が掻き消えていく。
「……どうやら、終わったようですね」
 後ろから吐き捨てるようなセラの声が聞こえた。
 見れば、ティトのフィールドに存在していたカードは、跡形もなく破壊されていた。
「けほっ」
 場違いなほど呑気な咳が響く。
 銀色の少女は無事だ。
「まだです。リソナの本気はこんなもんじゃないです――!」
 そんなティトを睨みつけ、リソナは手札のカードを選び取る。
 瞬間、輝王の体を怖気が駆け抜けた。
 ――まさか。

「リソナは、2体目の<裁きの龍>を特殊召喚するです!!」

 並ぶ。
 2体の白い龍が。
 銀色の少女に、死の判決を下すために。
「さよならです、ティト」
 リソナが告げた言葉は、この世のものとは思えないほど冷たかった。
「<裁きの龍>2体で攻撃――ジャッジメント・レイ」
 裁きの光が、終わりを告げようと輝く。
 輝王の視界が、白に染まった。
 <裁きの龍>が放った光の奔流「ジャッジメント・レイ」は、銀色の少女を瞬く間に呑み込む。
「ティト様!」
 セラの悲痛な叫び声が、広大な空間に木霊する。
 ティトの場に、己を守るカードはなかった。何より、あんな攻撃を受けて立っていられるはずがない。
 輝王は悲観的な考えを消そうとするが、目の前の光景がそれを許さない。
「――――」
 リソナも輝王と同じ考えを抱いているのだろう。
 ティトにダメージを与え、はしゃぎまわっていた少女の面影はない。
「……もういいです」
 呟きと共にリソナが右手を挙げると、2体の<裁きの龍>が、光の奔流を吐き出すことをやめる。
 2本の「ジャッジメント・レイ」は、銀色の少女がいた場所を破壊し尽くした。
 輝王、セラ、リソナ――この場にいる全員が、その事実を受け止めていた。

 否。

 たった一人、現実に抗う者がいた。
「な――」
 驚きの声を上げたのは、リソナだ。
「どうしてです!? あの攻撃を受けて――」
 金色の髪を振り乱し、目尻に涙を浮かべて、叫ぶ。
「なんで立っていられるですか!?」

 ティト・ハウンツは、立っていた。

 さすがに無傷というわけではない。
 衣服のあちこちは破れ、顕わになった白い肌には、赤い線を引く無数の傷が見える。
 膝は震え、今にも倒れてしまいそうだ。
 それでも、少女は立っていた。
「――決めたから」
 小さな声で、ティトは告げる。
「強くなるって、決めたから――!」