遊戯王 New stage 6
第二船倉を後にした創志は、前部甲板に向けてひたすら走っていた。
一度は休憩室に戻ったのだが、信二や輝王、ティトたちの姿は無かった。おそらく、あちらも光坂たちを止めるために動いているのだろう。
信二の行方は気になったが、それはティトたちと合流した際に聞けばいい。今は光坂たちを止めることが先だ。奴を倒せば仮面の集団は止まるだろうし、落ち着いた状態で信二を説得することもできるはずだ。
「…………」
頭の中に浮かんだ最悪のビジョン――信二がティトたちを傷つけている映像を振り払い、創志は足を動かす。
今のところ仮面の集団による妨害は無い。すると、前方に「食堂」と書かれたプレートが見えた。すでに開け放たれた扉をくぐり、創志は食堂に足を踏み入れる。
休憩室と同じような壁材で覆われた空間には、長テーブルと椅子が整然と並んでいる。奥に見える厨房から聞こえてくる音は無く、呑気に食事をしている船員もいない。
創志が素早く周囲に視線を走らせると――
「そうし!」
「うわっ!?」
突然がばっ! と抱きつかれた。
仰向けにひっくり返りそうになるのを何とか踏みとどまり、胸の中に飛び込んできた人影を確認する。
「無事だったんだね、よかった……」
安堵のため息を漏らしたのは、銀髪の少女――ティト・ハウンツだ。
「ティト! ――」
「そっちこそ無事でよかった」と続けようとして、創志は言葉を飲みこんだ。
腰にまわったティトの両腕からは、わずかな力しか感じられない。胸に当たる息も荒く、よく見れば、額にうっすら汗も浮かんでいる。
「よかった……本当に……そうし……」
うわごとのように呟いたかと思うと、ティトの体から力が抜ける。
「ティト!?」
ふらりと倒れそうになる細い体を支えながら、創志は少女の名を呼ぶ。
竜美の<ジュラック>から受けた腹の傷以外目立った外傷は見られないが、疲労が激しいようだ。
「くそっ、何があったっていうんだよ……」
思わずこぼれた独り言に対し、
「仮面の集団に襲われたのですよ。そちらも似たような状況だったと思われますが?」
涼しい声で答えが返ってきた。
声がした方に顔を向ければ、銀縁眼鏡をかけた白スーツの男が、薄ら笑いを浮かべながらこちらに向かって歩いて来ていた。
「セラ……」
「ここにたどり着くまでに、かなりの戦闘を重ねましたからね。力の使いすぎで疲弊したのでしょう。かくいう私も、随分消耗しましたが」
ふう、とため息をつくセラの姿は、とても消耗したように見えない。
「ティト様に無理をさせることは避けたかったのですが、何しろ――」
「あー! 変な男がティトにえっちなことしようとしてるです!!」
セラの言い訳を遮り、甲高いアニメ声が食堂中に響き渡る。
「なっ……!?」
「ふけつです! へんたいです! はれんちです! 今すぐティトから離れるですー!」
喚きながら姿を現したのは、金色の髪に水色の瞳、ワンピースの上にカーディガンを羽織った小柄な少女だ。不思議の国に迷い込んでもおかしくなさそうな雰囲気である。
「ば、バカ! エッチなことなんてするはずないだろ!」
「焦ってるです! 怪しいです! リソナ知ってるです! こういうやつのことを、ロリコンって言うんです!」
「そんなわけねえだろ!」
「……リソナ?」
少女のやかましい声に、創志の腕の中で気を失っていたティトが目を覚ます。
「ティト! 気がついたですか!? 今すぐそいつから離れて――あれれ?」
慌ててティトに駆け寄ろうとした少女だったが、途中で足をもつれさせ、へたりと尻もちをついてしまう。
「ごめんね、そうし。わたしたち、ちょっと疲れちゃったみたい」
そう言って身を起こしたティトは、創志の腕から離れ自分の足で立ち上がる。が、依然として体はふらついたままだし、目を離すとすぐにでも倒れてしまいそうだ。
「り、リソナは疲れてなんていないです! 光坂に会って、リソナのことを嫌いになったかどうか聞かなくちゃ……いけないんです……」
強気な発言とは逆に、リソナと呼ばれた金髪の少女も、尻もちをついたまま立ち上がることができないでいる。
「レボリューション側がここまでの戦力を整えているとは、想定外でした。最も、光坂慎一が行った洗脳に頼る部分が大きいですが」
仮面の集団については、セラの考えも神楽屋と同じのようだ。
「……輝王は一緒じゃなかったのか?」
休憩室に残ったメンバーの中で、唯一姿の見えない男について尋ねてみる。
「途中で別れましたよ。彼には、彼の目的があるようでしたしね。後で合流するとは言っていましたが、保証はできません」
「…………」
――つまり、ここにいる4人だけで、前部甲板まで辿り着かなければならないのか。
一度は休憩室に戻ったのだが、信二や輝王、ティトたちの姿は無かった。おそらく、あちらも光坂たちを止めるために動いているのだろう。
信二の行方は気になったが、それはティトたちと合流した際に聞けばいい。今は光坂たちを止めることが先だ。奴を倒せば仮面の集団は止まるだろうし、落ち着いた状態で信二を説得することもできるはずだ。
「…………」
頭の中に浮かんだ最悪のビジョン――信二がティトたちを傷つけている映像を振り払い、創志は足を動かす。
今のところ仮面の集団による妨害は無い。すると、前方に「食堂」と書かれたプレートが見えた。すでに開け放たれた扉をくぐり、創志は食堂に足を踏み入れる。
休憩室と同じような壁材で覆われた空間には、長テーブルと椅子が整然と並んでいる。奥に見える厨房から聞こえてくる音は無く、呑気に食事をしている船員もいない。
創志が素早く周囲に視線を走らせると――
「そうし!」
「うわっ!?」
突然がばっ! と抱きつかれた。
仰向けにひっくり返りそうになるのを何とか踏みとどまり、胸の中に飛び込んできた人影を確認する。
「無事だったんだね、よかった……」
安堵のため息を漏らしたのは、銀髪の少女――ティト・ハウンツだ。
「ティト! ――」
「そっちこそ無事でよかった」と続けようとして、創志は言葉を飲みこんだ。
腰にまわったティトの両腕からは、わずかな力しか感じられない。胸に当たる息も荒く、よく見れば、額にうっすら汗も浮かんでいる。
「よかった……本当に……そうし……」
うわごとのように呟いたかと思うと、ティトの体から力が抜ける。
「ティト!?」
ふらりと倒れそうになる細い体を支えながら、創志は少女の名を呼ぶ。
竜美の<ジュラック>から受けた腹の傷以外目立った外傷は見られないが、疲労が激しいようだ。
「くそっ、何があったっていうんだよ……」
思わずこぼれた独り言に対し、
「仮面の集団に襲われたのですよ。そちらも似たような状況だったと思われますが?」
涼しい声で答えが返ってきた。
声がした方に顔を向ければ、銀縁眼鏡をかけた白スーツの男が、薄ら笑いを浮かべながらこちらに向かって歩いて来ていた。
「セラ……」
「ここにたどり着くまでに、かなりの戦闘を重ねましたからね。力の使いすぎで疲弊したのでしょう。かくいう私も、随分消耗しましたが」
ふう、とため息をつくセラの姿は、とても消耗したように見えない。
「ティト様に無理をさせることは避けたかったのですが、何しろ――」
「あー! 変な男がティトにえっちなことしようとしてるです!!」
セラの言い訳を遮り、甲高いアニメ声が食堂中に響き渡る。
「なっ……!?」
「ふけつです! へんたいです! はれんちです! 今すぐティトから離れるですー!」
喚きながら姿を現したのは、金色の髪に水色の瞳、ワンピースの上にカーディガンを羽織った小柄な少女だ。不思議の国に迷い込んでもおかしくなさそうな雰囲気である。
「ば、バカ! エッチなことなんてするはずないだろ!」
「焦ってるです! 怪しいです! リソナ知ってるです! こういうやつのことを、ロリコンって言うんです!」
「そんなわけねえだろ!」
「……リソナ?」
少女のやかましい声に、創志の腕の中で気を失っていたティトが目を覚ます。
「ティト! 気がついたですか!? 今すぐそいつから離れて――あれれ?」
慌ててティトに駆け寄ろうとした少女だったが、途中で足をもつれさせ、へたりと尻もちをついてしまう。
「ごめんね、そうし。わたしたち、ちょっと疲れちゃったみたい」
そう言って身を起こしたティトは、創志の腕から離れ自分の足で立ち上がる。が、依然として体はふらついたままだし、目を離すとすぐにでも倒れてしまいそうだ。
「り、リソナは疲れてなんていないです! 光坂に会って、リソナのことを嫌いになったかどうか聞かなくちゃ……いけないんです……」
強気な発言とは逆に、リソナと呼ばれた金髪の少女も、尻もちをついたまま立ち上がることができないでいる。
「レボリューション側がここまでの戦力を整えているとは、想定外でした。最も、光坂慎一が行った洗脳に頼る部分が大きいですが」
仮面の集団については、セラの考えも神楽屋と同じのようだ。
「……輝王は一緒じゃなかったのか?」
休憩室に残ったメンバーの中で、唯一姿の見えない男について尋ねてみる。
「途中で別れましたよ。彼には、彼の目的があるようでしたしね。後で合流するとは言っていましたが、保証はできません」
「…………」
――つまり、ここにいる4人だけで、前部甲板まで辿り着かなければならないのか。