にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 10-3

「僕のターンだね。ドロー……初撃だ。一気に終わらせてあげるよ」
 モンスターのリクルートに成功し、相手フィールドには攻撃表示の下級モンスター……先攻2ターン目としては、理想的な状況と言えるだろう。信二の笑みがさらに凶悪になる。
「…………」
 しかし、こちらもそう易々とやられる気はない。
「メインフェイズ。僕は墓地の<インヴェルズの斥候>の効果を発動するよ。自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合、このカードを自分フィールド上に特殊召喚できる。その代わり、このターン特殊召喚は行えないけど」
 楕円形のゴーグルをかけた虫型の悪魔が、短い手足を懸命に動かして墓地から這い出てくる。

<インヴェルズの斥候>
効果モンスター
星1/闇属性/悪魔族/攻 200/守   0
自分フィールド上に魔法・罠カードが存在しない場合、
自分のメインフェイズ1の開始時にのみ発動する事ができる。
墓地に存在するこのカードを自分フィールド上に特殊召喚する。
この効果を発動するターン、自分はモンスターを特殊召喚する事はできない。
このカードは「インヴェルズ」と名のついたモンスターの
アドバンス召喚以外のためにはリリースできず、シンクロ素材とする事もできない。

「そして、このカードは<インヴェルズ>と名のついたモンスター1体をリリースすることで、アドバンス召喚できる……<インヴェルズの斥候>をリリースし、<インヴェルズ・ギラファ>をアドバンス召喚!」
 ちょこまかと動いていた<インヴェルズの斥候>が光に包まれ、拡散すると同時に、クワガタのような角を生やし、刺々しい黒の甲殻を纏った悪魔――<インヴェルズ・ギラファ>が現れる。その右腕は砲口を模しており、機械と融合したかのような印象を受ける。

<インヴェルズ・ギラファ>
効果モンスター
星7/闇属性/悪魔族/攻2600/守   0
このカードは「インヴェルズ」と名のついたモンスター1体をリリースして
表側攻撃表示でアドバンス召喚する事ができる。
「インヴェルズ」と名のついたモンスターをリリースして
このカードのアドバンス召喚に成功した時、
相手フィールド上に存在するカード1枚を選択して墓地へ送り、
自分は1000ライフポイント回復する事ができる。

「<インヴェルズ>と名のついたモンスターをリリースしてこのカードのアドバンス召喚に成功した時、相手フィールド上に存在するカードを1枚墓地に送り、ライフを1000ポイント回復することができる。マナ・ドレイン!」
 <インヴェルズ・ギラファ>の左手に橙色の光が灯り、収束したそれが光球となって放たれる。向かう先にいるのは、<A・ジェネクス・ボルキャノン>だ。
「<ボルキャノン>!」
 橙色の光球がぶつかった瞬間、バシュッ! という音と共に<A・ジェネクス・ボルキャノン>の姿が消える。
 朱色の機械兵を消し去った光球は、その場で四散すると、信二の体へと吸収されていく。

【信二LP4000→5000】

「<ギラファ>の効果は破壊ではなく墓地に送る、だ。<マシン・デベロッパー>にカウンターは乗らないね」
「く……!」
「まだだよ。<インヴェルズの門番>が表側表示で存在する限り、<インヴェルズ>と名のついたモンスターのアドバンス召喚に成功したターン、もう1度だけモンスターを召喚することができる。僕は、増やした召喚権で――」
 自己再生能力を持つ<インヴェルズの斥候>を<手札断殺>で墓地に送り、通常召喚権を増やせる<インヴェルズの門番>をリクルートして場を整え、強力な除去効果を持った<インヴェズル・ギラファ>をアドバンス召喚
 一切の無駄がない戦術に、創志は信二の強さを再認識する。
 今まで信二と対戦した時は、真剣勝負といっても「遊び」の範疇だった。
 こうして向かい合い、本当の意味での真剣勝負に挑んで初めて分かる、皆本信二の強さ。洗練されたプレイング。
 決して侮っていたわけではないのだが、創志は自らの気持ちを引き締め直す。
 増えた召喚権を使い、再び上級モンスターをアドバンス召喚してくるのか。それとも――
「<ヴァイロン・オーム>を召喚するよ」
「な……!?」
 現れたのは、<インヴェルズ>の黒とは対極の、彫刻のような白い体を持つ、天使だった。円柱のような部分を中心に、円錐型の両腕、金色の帯、底面にダイヤのマークのようなオブジェクトが付いた下半身……白と金が基調になっているため、少し<AOJ>に雰囲気が似ている。

<ヴァイロン・オーム>
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1500/守 200
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在する
装備魔法カード1枚を選択し、ゲームから除外する。
次の自分のスタンバイフェイズ時にそのカードを手札に加える。

 ――<ヴァイロン>!? 信二のデッキは<インヴェルズ>じゃなかったのかよ!?
「<ヴァイロン・オーム>が召喚に成功した時、自分の墓地に存在する装備魔法カードを1枚選択して除外する。次の自分のターンのスタンバイフェイズ時に、除外したカードを手札に加えることができるんだ。僕は墓地の<ヴァイロン・マテリアル>を除外するよ」
 創志の混乱を余所に、信二は効果の処理を続ける。
 おそらく<インヴェルズ>は闇属性・悪魔族を中心としたモンスター群。対し、<ヴァイロン・オーム>は光属性・天使族だ。効果の面でも大きなシナジーは無い。
 予測を大きく外され、創志の頭の中を疑問が埋め尽くしていく。
「悩んでる場合? バトルフェイズに入るよ。<インヴェルズ・ギラファ>でダイレクトアタック」
 <インヴェルズ・ギラファ>の砲口が獲物を捉え、創志は慌てて思考を中断させる。
 ――来る! 構えろ!
 信二はサイコデュエリストの力に目覚めている。つまり、<インヴェルズ・ギラファ>の攻撃は実体化するのだ。
 創志の脳裏に、休憩室での光景――信二が召喚したモンスターによって、生みだされた闇の奔流――が蘇る。あの時はセラの能力によって直撃を回避したものの、今度はそうはいかない。
「インヴェイジョン・パニッシャー!」
 <インヴェルズ・ギラファ>の右手から、墨汁のような黒い波動が発射される。
 その色は<レアル・ジェネクス・ジエンド>の攻撃を連想させ、創志の体が無意識のうちにこわばる。
 両腕を顔の前で組み、攻撃に備える。
 直撃。
「ぐっ……うううううう!!」
 全身を炙られているような、じりじりとした痛みを感じる。創志は苦痛に顔を歪めるが、逃げ場は無く、その場で耐えるしかない。
 チョーカーの力を借りて生みだした最低限の「防壁」がなければ、苦痛の度合いはさらに大きかっただろう。
 ――その分、脳に負荷がかかってしまうが。

【創志LP4000→1400】

「……これでデッドラインだ。続けて<ヴァイロン・オーム>の攻撃に移りたいんだけど、何かあるかな?」
 余裕たっぷりの信二の声が、やけに大きく響く。
 何とか攻撃を耐えきった創志は、よろけそうになる体を押しとどめる。
 たった一撃で、半分以上のライフを持っていかれた。
 ――だが!
「……あるに決まってんだろ! 罠カード発動! <ダメージ・ゲート>!」
 渾身の力を込めて、創志は伏せカードの起動ボタンを押す。

<ダメージ・ゲート>
通常罠
自分が戦闘ダメージを受けた時に発動する事ができる。
その時に受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つ
モンスター1体を自分の墓地からフィールド上に特殊召喚する。

「このカードは自分が戦闘ダメージを受けたときに発動することができ、受けたダメージの数値以下の攻撃力を持つモンスター1体を、墓地から特殊召喚できる! 蘇れ<A・ジェネクス・ボルキャノン>!」
 創志が受けた痛みと引き換えに、<インヴェルズ・ギラファ>の効果によって葬られた機械兵が、戦場へ復帰する。
「俺のライフをごっそり削った対価は、高くつくぜ!」
「……<ヴァイロン・オーム>では<ボルキャノン>を倒せないか。仕方ない。ターンエンドだ」
 信二のエンド宣言を聞いた途端、創志の頭に鋭い痛みが走る。
 ――これまでのツケが来てる。早いとこ決着をつけないと。

【信二LP5000】 手札3枚
場:インヴェルズの門番(守備)、インヴェルズ・ギラファ(攻撃)、ヴァイロン・オーム(攻撃)
【創志LP1400】 手札3枚
場:A・ジェネクス・ボルキャノン(攻撃)、マシン・デベロッパ