にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 10-6

 対し、創志は身を乗り出して吠える。今さら駆け引きに付き合う気は無い。
「――なら、兄さんの望み通りに! <ヴァイロン・エプシロン>で<A・ジェネクス・ボルキャノン>を攻撃! フュンフ・スター!」
 背負った円形のオブジェクトが輝きを増しながら回転を始め、機械天使が高度を上げる。
 漏れた光が<ヴァイロン・エプシロン>の五指に集まっていく。
 そして、機械天使は両腕を交差させてから、外側に向けて勢いよく振り払った。
 指の先に集っていた光の屑が無数の弾丸と化し、創志のフィールドに降り注ぐ。
 体の各所を穿たれ、<A・ジェネクス・ボルキャノン>が早々に機能を停止――
「やらせるか! リバースカードオープン! 罠カード<ガード・ブロック>! 戦闘ダメージを0にして、デッキからカードを1枚ドローする!」

<ガード・ブロック>
通常罠
相手ターンの戦闘ダメージ計算時に発動する事ができる。
その戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは0になり、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「やっぱり防いだか。兄さん、本当に打つ手が無いときは黙るもんね」
「……<ガード・ブロック>の効果で、カードをドロー!」
 相手が予想通りの反応を示したことを喜んでいる信二を無視し、創志はカードを引く。
 <ガード・ブロック>は、デュエル前にティトからもらったカードの1枚だ。創志はティトの方へ振り向き、窮地を救ってくれたことへの感謝の気持ちを込めて、視線を送る。
 それに気付いたティトは、優しげな表情でリソナの事を指差した。
 ――そうか。こいつはリソナのカードだったのか。
 激しい戦闘を前にしながらマイペースに眠り続ける金髪の少女の姿に苦笑しつつ、創志はデュエルの方に意識を集中させる。
「防いだのはいいとして、攻撃力4000の<ヴァイロン・エプシロン>を倒せるかな? 僕はカードを1枚セットし、ターンを終了するよ」
 <A・ジェネクス・ボルキャノン>が破壊されたことで、<マシン・デベロッパー>にさらにカウンターが2つ乗り、合計4つとなった。

【信二LP1800】 手札0枚
場:ヴァイロン・エプシロン(攻撃・ヴァイロン・マテリアル2枚装備)、伏せ1枚
【創志LP1400】 手札3枚
場:マシン・デベロッパー(カウンター4つ)

「やってやるさ! 俺のターン……ドロー!」
 攻撃力4000の<ヴァイロン・エプシロン>を戦闘破壊するには<リミッター解除>を引くことが望ましいが――
「……ッ」
 ドローしたのは<A・ジェネクス・ベルフレイム>。このモンスターでは、形勢を覆すことはできない。
 だが、<ガード・ブロック>の効果によるドローで、すでに機械天使を攻略する術は手に入れている。
「<マシン・デベロッパー>の効果発動! ジャンクカウンターの乗ったこのカードを墓地に送ることで、乗っていたカウンターの数以下のレベルを持つ機械族モンスターを墓地から特殊召喚するぜ! カウンターは4つ――俺はレベル3の<A・ジェネクス・チェンジャー>を特殊召喚だ!」
「またそれ? でも、さっきと同じ手は使えないはずだ」
「なら、違う手を使うまでだ! 俺は<A・ジェネクス・リモート>を召喚! 効果により、自身を<ジェネクス・コントローラー>として扱うぜ!」
 右手がリモコンになっている、卵型のボディの機械兵<A・ジェネクス・リモート>が、墓地から蘇った<A・ジェネクス・チェンジャー>の隣に並ぶ。

<A・ジェネクス・リモート>
チューナー(効果モンスター)
星3/闇属性/機械族/攻 500/守1800
フィールド上に表側表示で存在するチューナー1体を選択して発動する。
選択したモンスターのカード名は、このターンのエンドフェイズ時まで
「ジェネクス・コントローラー」として扱う。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

「行くぜ! <チェンジャー>に<コントローラー>扱いの<リモート>をチューニング!」
 <A・ジェネクス・リモート>の体が3つの光球に変化し、<A・ジェネクス・チェンジャー>の周囲に緑色の輪が出現する。
「残された結晶が、数多の力を呼び起こす! 集え、3つの銃弾よ! シンクロ召喚! 撃ち抜け――<A・ジェネクス・トライアーム>!!」
 藍色のバイザーの奥にあるセンサーが起動し、右腕に装着した銃撃ユニットにエネルギーを充填しながら、<A・ジェネクス>の狙撃手が大地を踏みしめる。

<A・ジェネクス・トライアーム>
シンクロ・効果モンスター
星6/闇属性/機械族/攻2400/守1600
「ジェネクス・コントローラー」+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードのシンクロ素材としたチューナー以外のモンスターの属性によって
以下の効果を1ターンに1度、手札を1枚捨てて発動する事ができる。
●風属性:相手の手札をランダムに1枚墓地へ送る。
●水属性:フィールド上に存在する魔法または罠カード1枚を破壊する。
●闇属性:フィールド上に表側表示で存在する光属性モンスター1体を破壊し、
自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「……へえ。シンクロモンスターにはシンクロモンスターで対抗しようってわけか」
 信二が警戒の色を強めるが、瞳に宿した自信は微塵も揺らいでいない。
 その自信を打ち砕いてやる――創志が黒の機械兵を見ると、その意図を察したかのように<A・ジェネクス・トライアーム>が頷いた。
「<トライアーム>の効果発動! こいつは闇属性モンスターをシンクロ素材としたとき、手札を1枚捨てることで相手フィールド上の光属性モンスター1体を破壊し、カードをドローすることができる!」
 創志は、このターンにドローした<A・ジェネクス・ベルフレイム>を捨てる。
 背部のバックパックから伸びたチューブを通して、銃撃ユニットにエネルギーが送られる。
 <ヴァイロン・エプシロン>には装備した装備カードを守る効果があるが、自身は無防備。
「ダーク・ブリット装填――」
 銃撃ユニット内部のシリンダーが回転し、撃ち出す銃弾を選択された。
 瞬間、脳内に激痛が走る。
 が、無理矢理意識の範疇へと追い出す。
 ――ここまで来て、倒れるわけにいくか!
 例え、この脳髄が使いものにならなくなったとしてもだ。
「ファイア!」
 創志の号令を合図に、<A・ジェネクス・トライアーム>が黒の銃弾を撃ち出す。
 <ヴァイロン・エプシロン>が防御のために両腕を動かすが、遅すぎる。
 銃弾が機械天使の頭部を撃ち抜く。
 円形のオブジェクトから輝きが失われ、<ヴァイロン>のシンクロモンスターはそのまま崩れ落ちていった。
 創志は<A・ジェネクス・トライアーム>の効果でカードを1枚ドローし、バトルフェイズに移ろうとするが――
「残念だなぁ」
 信二が漏らした一言が、その動きを止めた。
 フィールドにいた唯一のモンスターを失ったというのに、信二の声には悲壮感の欠片もない。
「真っ向から戦闘破壊してくれば、兄さんが勝っていたかもしれないのに……罠カード<犠牲の意味>を発動」
「な……!?」
「このカードは、自分のモンスターが相手のカード効果によって破壊されたときに発動できる。このカードを発動したターン、相手はバトルフェイズを行うことができない」

<犠牲の意味>
通常罠(オリジナルカード)
自分フィールド上に表側表示で存在するモンスターが、相手のカードの効果によって
破壊された時に発動できる。
このカードを発動したターン、相手はバトルフェイズを行うことができない。

 ――くそッ!
 創志は思わず舌打ちをしてしまう。
 信二ほどのデュエリストが、<ヴァイロン・エプシロン>が攻略された際の後詰めを用意していないとは思えなかったが、もし<A・ジェネクス・トライアーム>の攻撃が通れば、創志の勝ちだったのだ。
 あと少しというところですり抜けた勝利の感触に、悔しさを感じずにはいられない。
「さあ、どうするんだい? 兄さん」
「……カードを1枚伏せる。ターンエンドだ」
 信二に促され、創志はエンド宣言せざるを得なかった。

【信二LP1800】 手札0枚
場:なし
【創志LP1400】 手札2枚
場:A・ジェネクス・トライアーム(攻撃)、伏せ1枚