にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 10-7

「じゃ、僕のターンだね」
 だが、状況は圧倒的に有利だ。
 信二のフィールドにはモンスターも伏せカードもなく、手札は0枚。ライフこそわずかに上回っているが、この状況では大したアドバンテージにはならない。
 創志の場には<A・ジェネクス・トライアーム>と伏せカードが1枚。<A・ジェネクス・トライアーム>の攻撃力は高いとは言えないが、それでも下級モンスター1体で易々と越えられるようなものではない。
 ――いける!
 焦って手を誤らなければ、創志の勝利は目前だ。
「そうし! がんばれ!」
「あと少しじゃ! 畳みかけろ創志!」
 後ろからティトと切の声援が聞こえてくる。
 その声に頭痛が和らぐのを感じながら、創志は信二の動きを待った。
「……随分余裕みたいじゃないか、兄さん。もう勝ったつもり?」
「信二……」
「まあこの状況を見たら誰でもそう思うよね。今、僕には何もないんだから」
 自嘲の言葉を呟く信二だが――
 本音は違う。
 それが、兄である創志には分かった。
 信二は口にせず、創志も気付いていなかったが――信二が上級<インヴェルズ>モンスターをドローし、墓地の<インヴェルズの斥候>を効果で特殊召喚する可能性もあった。
 だが、信二の求めるものはそんな結末ではない。
「でもね、僕には分かる。僕はこのドローで『あいつ』を引く」
 そう言って、信二は自らのデッキに指を添える。
 途端、信二が纏う殺気――いや、狂気が、具現化したかと錯覚するほど濃くなる。

「――ドロー!!」

 信二の指が動く。手が動く。腕が動く。
 一連の動作が、創志の目にはスローモーションの映像のように映った。
 そして、笑みが広がる。
 優しかった少年の顔に、残酷な笑みが。
「お前を呼ぶ準備は整ってるよ。僕は墓地の<ヴァイロン・オーム>――光属性・天使族モンスター1体と、<インヴェルズの門番>、<贄>、<ギラファ>――闇属性・悪魔族モンスター3体をゲームから除外……」
 バキリ、と空間に裂け目が生まれる。
 異次元へと続くその裂け目から、紫色のかぎ爪を生やし、包帯を巻いた悪魔の両腕が這い出てくる。
 鋭いかぎ爪で裂け目を広げ、そのモンスターは上半身を顕わにする。
 朽ちた羽。
 棘を生やした肉体。
 骸骨の顔面からは、湾曲した角を生やしている。
 創志は、このモンスターを知っていた。

「混沌を生み出し、全てを呑み込め――<天魔神ノーレラス>を特殊召喚

 途方もない狂気をまき散らしながら、混沌を統べる悪魔は、主の元へと現れた。

<天魔神ノーレラス>
効果モンスター
星8/闇属性/悪魔族/攻2400/守1500
このカードは通常召喚できない。
自分の墓地の光属性・天使族モンスター1体と闇属性・悪魔族モンスター3体を
ゲームから除外した場合のみ特殊召喚する事ができる。
1000ライフポイントを払う事で、お互いの手札とフィールド上のカードを
全て墓地へ送り、自分のデッキからカードを1枚ドローする。

「<天魔神ノーレラス>の効果発動! ライフを1000ポイント支払うことで、お互いの手札とフィールド上のカードを全て墓地に送る!」

【信二LP1800→800】

 主の命を受け、骸骨の悪魔が動く。
 左手には光の波動。
 右手には闇の波動。
 相反する2つの波動を生み出した<天魔神ノーレラス>は、胸の前で両手を合わせる。
「インフィニティ・カオス!!」
 融合する波動。
 生みだされた黒と白の奔流が、全てを呑み込んだ。