遊戯王 New stage 3
「教えてくれ! どうして先生がサテライトに!?」
切の両肩を掴んだ神楽屋が、小さな体をガクガクと激しく揺さぶる。
「ぐ、ぐるじい……」
みるみるうちに切の顔が青くなっていき、
「お、おい! それじゃ喋りたくても喋れねえって!」
創志は慌てて止めに入った。
自らも肩を掴まれた神楽屋は、自分がひどく興奮していたことに気付くと、すぐに手を離して「すまない」と頭を下げた。
「けほっ……けほっ……お主、矢心先生とどういう関係なのじゃ? そこまで取り乱すということは――」
「せっちゃん」
喉元を抑えながら切が問いを放つが、宇川がそれを遮った。
「……どうした?」
創志は、宇川の声色に緊張が滲んでいるのに気付いた。
「チャラ男と矢心女医のラブラブあっちっちな関係の詳細は、あとでゆっくり教えてあげるわ」
「バッ……!」
「それより、悪趣味な覗き見集団のお出ましよ」
宇川の妄言に食ってかかろうとした神楽屋も、周囲の異変に気付き、表情を引き締める。
音は無く、気配も感じなかった。
それなのに、いつのまにか創志たちは囲まれていた。
創志は周囲に視線を走らせる。
等間隔に設置されたランプの明かりの下に姿を見せたのは――
「なっ……」
「これは――!」
その集団の異様な風貌に、創志は息を飲む。
創志たちを取り囲んだ人影は、全員が同じ姿をしていた。
白い仮面に、麻のローブ。
顔を隠すために被っているだろう仮面には、一切の模様がないどころか、視界を確保するための覗き穴すらない。
ローブの隙間から見える左腕には、同じ形式のデュエルディスクを身につけている。
「な、なんなのじゃこいつらは……」
刀の柄に手をかけ、腰を落として居合の構えを取りながら、切が戸惑いの声を漏らす。
焦らすようにゆっくりと、しかし確実に、仮面の集団は創志たちとの距離を縮めてくる。
「……ッ! こいつら――」
人間なのか? と続けようとした言葉を飲みこむ。
にじり寄ってくる仮面の人物からは、生気が感じられない。
そう。これじゃまるで――
「操り人形みたいね」
「……なるほどな。そういうことか」
宇川が呟いた言葉に、何か思い当たる節があったらしい神楽屋が舌打ちする。
「そこのオカマが言った通り、こいつらは操られてる。光坂に洗脳され、奴の意のままに動く人形になっちまってるんだ」
「ちょっと! 誰がオカマ――」
「そんなことが可能なのか?」
またぎゃいぎゃいと騒ぎだしそうだった宇川に横入りし、創志は尋ねる。
「光坂が得意げに言っていた。付け入る隙さえ見つければ、どんな人間だろうと洗脳できるとな」
「実際、輝王の後輩が洗脳を受け、輝王に牙をむいたこともある。光坂の力は本物じゃよ」
苦虫を噛み潰したような顔の切が、苛立たしげに呻く。
「多少憶測も交じるが……こいつらは、サイコデュエリストとしての力が弱かった連中だ。自我を消し、余計な感情を封じ込めることによって、少しでも力を強めているんだろう。まさに戦闘マシーンだ」
「…………」
創志たちを取り囲んでいる人間は、1人や2人ではない。
――こんなにたくさんの人を、操り人形にしちまったっていうのかよ。
かつては「先生」と慕った人間の所業に、背筋が薄ら寒くなる。平常な人間のすることではない。
「――来るぞ!」
神楽屋の言葉を合図に、ローブの集団が一斉にディスクを展開し、カードを引く。
一部の狂いもなくきっちりと揃った動作は、軍隊のそれを思わせる。
切の両肩を掴んだ神楽屋が、小さな体をガクガクと激しく揺さぶる。
「ぐ、ぐるじい……」
みるみるうちに切の顔が青くなっていき、
「お、おい! それじゃ喋りたくても喋れねえって!」
創志は慌てて止めに入った。
自らも肩を掴まれた神楽屋は、自分がひどく興奮していたことに気付くと、すぐに手を離して「すまない」と頭を下げた。
「けほっ……けほっ……お主、矢心先生とどういう関係なのじゃ? そこまで取り乱すということは――」
「せっちゃん」
喉元を抑えながら切が問いを放つが、宇川がそれを遮った。
「……どうした?」
創志は、宇川の声色に緊張が滲んでいるのに気付いた。
「チャラ男と矢心女医のラブラブあっちっちな関係の詳細は、あとでゆっくり教えてあげるわ」
「バッ……!」
「それより、悪趣味な覗き見集団のお出ましよ」
宇川の妄言に食ってかかろうとした神楽屋も、周囲の異変に気付き、表情を引き締める。
音は無く、気配も感じなかった。
それなのに、いつのまにか創志たちは囲まれていた。
創志は周囲に視線を走らせる。
等間隔に設置されたランプの明かりの下に姿を見せたのは――
「なっ……」
「これは――!」
その集団の異様な風貌に、創志は息を飲む。
創志たちを取り囲んだ人影は、全員が同じ姿をしていた。
白い仮面に、麻のローブ。
顔を隠すために被っているだろう仮面には、一切の模様がないどころか、視界を確保するための覗き穴すらない。
ローブの隙間から見える左腕には、同じ形式のデュエルディスクを身につけている。
「な、なんなのじゃこいつらは……」
刀の柄に手をかけ、腰を落として居合の構えを取りながら、切が戸惑いの声を漏らす。
焦らすようにゆっくりと、しかし確実に、仮面の集団は創志たちとの距離を縮めてくる。
「……ッ! こいつら――」
人間なのか? と続けようとした言葉を飲みこむ。
にじり寄ってくる仮面の人物からは、生気が感じられない。
そう。これじゃまるで――
「操り人形みたいね」
「……なるほどな。そういうことか」
宇川が呟いた言葉に、何か思い当たる節があったらしい神楽屋が舌打ちする。
「そこのオカマが言った通り、こいつらは操られてる。光坂に洗脳され、奴の意のままに動く人形になっちまってるんだ」
「ちょっと! 誰がオカマ――」
「そんなことが可能なのか?」
またぎゃいぎゃいと騒ぎだしそうだった宇川に横入りし、創志は尋ねる。
「光坂が得意げに言っていた。付け入る隙さえ見つければ、どんな人間だろうと洗脳できるとな」
「実際、輝王の後輩が洗脳を受け、輝王に牙をむいたこともある。光坂の力は本物じゃよ」
苦虫を噛み潰したような顔の切が、苛立たしげに呻く。
「多少憶測も交じるが……こいつらは、サイコデュエリストとしての力が弱かった連中だ。自我を消し、余計な感情を封じ込めることによって、少しでも力を強めているんだろう。まさに戦闘マシーンだ」
「…………」
創志たちを取り囲んでいる人間は、1人や2人ではない。
――こんなにたくさんの人を、操り人形にしちまったっていうのかよ。
かつては「先生」と慕った人間の所業に、背筋が薄ら寒くなる。平常な人間のすることではない。
「――来るぞ!」
神楽屋の言葉を合図に、ローブの集団が一斉にディスクを展開し、カードを引く。
一部の狂いもなくきっちりと揃った動作は、軍隊のそれを思わせる。
「――楔を」
ポツリと。
集団のうちの1人が呟いた。
「――楔を」
「――楔を」
「――楔を」
「――楔を」
「――楔を」
「――楔を」
「――楔を」
「――楔を」
その言葉は波紋のように広がり、集団のあちこちから同じ単語が聞こえてくる。
「……狂ってる」
創志は本音を漏らす。異様な光景を見て、声を出さずには居られなかったのだ。
すると、ローブの集団が一斉に口をつぐむ。
そして――
集団のうちの1人が呟いた。
「――楔を」
「――楔を」
「――楔を」
「――楔を」
「――楔を」
「――楔を」
「――楔を」
「――楔を」
その言葉は波紋のように広がり、集団のあちこちから同じ単語が聞こえてくる。
「……狂ってる」
創志は本音を漏らす。異様な光景を見て、声を出さずには居られなかったのだ。
すると、ローブの集団が一斉に口をつぐむ。
そして――
「革新の楔を」
神に捧げる誓いのように、同じ言葉を合唱した。