にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 9-11

「<A・ジェネクス・リバイバー>に<A・ジェネクス・バグラット>をチューニング!」
 ネズミの体が2つの光球に変化し、<A・ジェネクス・リバイバー>の中へと取り込まれる。
「残された結晶が、数多の力を呼び起こす! 集え! 3つの魂よ!」
 2体のモンスターが光に包まれ、フィールドを白く染める。

シンクロ召喚! その力を示せ! <A・ジェネクストライフォース>!」

 光が飛散する。
 現れたのは、白銀のボディに朱色のバイザーを装着したシンクロモンスター――<A・ジェネクストライフォース>。その右腕には、3つの砲口が付いた銃撃ユニットを装備している。

<A・ジェネクストライフォース>
シンクロ・効果モンスター
星7/闇属性/機械族/攻2500/守2100
「ジェネクス」と名のついたチューナー+チューナー以外のモンスター1体以上
このカードがシンクロ素材としたチューナー以外の
モンスターの属性によって、このカードは以下の効果を得る。
●地属性:このカードが攻撃する場合、
相手はダメージステップ終了時まで魔法・罠カードを発動できない。
●炎属性:このカードが戦闘によってモンスターを破壊した場合、
そのモンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。
●光属性:1ターンに1度、自分の墓地の
光属性モンスター1体を選択して、自分フィールド上にセットできる。

「ハッ……ここでシンクロ召喚かよ」
 呻いた神楽屋は、白い歯を見せて口の端を釣り上げる。
 それに合わせて、<ジェムナイト・ルビーズ>が槍を構えた。
「――行くぜ! <A・ジェネクストライフォース>で<ジェムナイト・ルビーズ>を攻撃!」
 主人の命を受けた白銀の機械兵が、銃撃ユニットを装備した右腕を構え、各部のスラスターを噴かせる。
「……いいぜ! 来い、坊主!!」
 <A・ジェネクストライフォース>が加速したのと、<ジェムナイト・ルビーズ>が跳んだのはほぼ同時。
 3つの砲口の内の1つ――赤く光る砲口が、急速に輝きを増す。
 紅色の槍に、炎が宿っていく。
 機械兵が狙うのは、砲口を相手に密着させた状態でのゼロ距離射撃。
 騎士が狙うのは、刺突による銃撃ユニットの破砕。
 両者がぶつかったのは、フィールドの中央。
「バーニング・トライ・バスター!」
「クリムゾン・トライデント!」
 炎がぶつかり合う。
 騎士の槍は狙いを逸らしたものの、機械兵の胴を貫く。
 機械兵の砲口から放たれた赤の光条は、騎士の右腕を吹き飛ばす。
 共に力を使い果たし、戦場から退場するが――
「……ハッ」
 神楽屋が笑う。
 その笑みにどんな感情が込められていたのか、創志には分からない。
 白銀の機械兵が放った光条は、消えていなかった。
「――<トライフォース>は炎属性のモンスターをシンクロ素材としたとき、戦闘によって破壊した相手モンスターの攻撃力分のダメージを与える効果を得る」
 そして、この効果は相討ちになった場合でも発生する――

「――眩しいな。坊主」


【神楽屋LP700→0】

 創志は実力を示した。
 約束を果たすために、強くなる。
 その言葉を裏切らないために、負けることはできない。
 選んだ道の先に、絶望が待っていようとも。





「<ジェムナイト>を操る正義のDホイーラー……あなたのことが噂になったのは、何年前のことだったかしらね」
 戦いを終え、創志たちは神楽屋の元へと歩み寄った。
 タイミングを見計らい、宇川が切り出す。
「……知ってたのかよ。意地の悪いオカマだ」
「男を知ることは、魅力ある乙女の必須条件よ?」
 そう言って体をくねらせる宇川から、一斉に顔を逸らすその他3人。
「なら、俺がシティを去った理由も知ってるんだろ。俺は、正義の味方なんてものに酔いしれて、あいつの人生を狂わせた。俺が身の程をわきまえてりゃ、あいつは――」
 神楽屋はそこで言葉を切ると、中折れ帽を深くかぶり直して押し黙る。
 無表情を貫く裏に、どれだけの後悔と葛藤があるのか、今の創志に推し量ることはできない。
「あのさ」
 それでも、口を開かずにはいられなかった。
 創志に対し、何度も諦めるよう呼びかけ続けた神楽屋。その理由が彼の過去にあるとしたら。
 飲みこみかけた言葉を、告げずにはいられなかったのだ。
「詳しい話は分からねえけど……アンタが正義の味方をやってたんなら、アンタに感謝してる人間もたくさんいるんじゃないのか? アンタのおかげで救われた人間も――」
 スッ、と。
 熱が入りかけた創志の前に、神楽屋の右手が突き出される。
「――どんなにたくさんの人間を助けたとしても、その内の1人が傷ついちまったら意味ねえんだよ、坊主。手を差し伸べるなら、最後までそいつを救う責任を負わなきゃいけない。俺は、その責任を果たせなかった」
「…………」
 神楽屋の言葉には、途方もないほどの重さがこもっていた。
 事情を知らない創志がこれ以上説得を続けても――いや、仮に全ての事情を知っていたとしても、彼が背負う後悔の念を拭うことはできないだろう。
 ――それでも。
 諦めきれない創志が懸命に言葉を探っていると。
「……せっちゃん!」
「ほ、ほえ!?」
 唐突に着物の少女の肩をバシンと叩き、宇川が大声で切の名前を呼ぶ。
 今まで神妙な面持ちで黙っていた切が、素っ頓狂な声を上げた。
「な、なんじゃ宇川! びっくりするじゃろう!」
 あわわ、と両手をせわしなく動かし、切が宇川に抗議を始める。
 が、そんな切の様子を意に介さず、宇川は大声で話し続けた。
「せっちゃん! アタシ、美容整形のことを最近調べてるのよ! それで、せっちゃんがお世話になったっていう病院に評判の医師さんがいるらしいんだけど! せっちゃんが今日までいた病院って、なんて名前だっけ!?」
「む? わしがいた病院? ……確か、詠円院という名だったと思うが」
 その単語を聞き、神楽屋の眉がピクリと動く。
 創志には宇川が何を伝えようとしているのか分からず、黙って見守るしかない。
「そうそう詠円院だったわね! それで、そこにいる女医さんはなんて名前だっけ!?」
「矢心詠凛、じゃよ。妙な服を来ておったが、優しいお医者様だったのう――ひゃわっ!!」
 最後の悲鳴は、突然神楽屋が切の両肩を掴んだからだ。
「ななななななんなのじゃ!? わしに――」
 気の毒になるくらい慌てふためく切だが、神楽屋の瞳に彼女は映っていないらしい。
「矢心詠凛だって!? そんなまさか……先生がサテライトにいるはずがない……その話、詳しく聞かせてくれ!」
 着物の少女を揺さぶりながら、神楽屋は真剣な眼差しで告げた。