にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドS 9-2

「焦ってるわね、創志ちゃん」
「……創志が焦ってる? そうは見えぬがのう」
 悩ましげなため息をつきながら口を開いた宇川に対し、切は疑問を返す。
 こちらに背を向ける少年の姿は、戦いへの気迫に溢れているように見える。
「心配なのよ。ティトちゃんのこともそうだけど……弟くんのこともね」
 創志は、弟である皆本信二を取り戻すためにここに来た。おそらく、切たちが先刻までいた休憩室では、残った仲間の誰かが信二と戦っているのだろう。
「ティトちゃんは本当に無事なのか、弟くんはどうなっているのか……不安でたまらないから、早く合流したいんでしょう。だから焦ってる」
「そう……かの」
「アタシには分かるのよ。創志ちゃんみたいなコ、いっぱい見てきたから。そして――」
 宇川はそこで言葉を区切ると、声のボリュームを落としつつ、続ける。
「あの男も、それに気付いてる」
「神楽屋が?」
 切は創志と対峙している男に目を向けるが、中折れ帽を深くかぶってしまっているため、その表情を窺い知ることはできない。
「焦って出来た隙に付け入られるようなことがあれば、創志ちゃんが勝つことは難しくなるわ」
「ふむ」
 宇川の指摘に、先程の創志の言葉を思い出す切。
 ――「無茶をするためにここに来た」
「いや、大丈夫じゃろ」
 そして、フッと口元を緩ませる。
「あら強気ね? 何か勝算があるの?」
 興味深い、といった様子で、宇川が化粧の濃い顔を近づけてくる。気持ち悪い。
「わしには分かるのじゃよ。創志によく似た男を見てきたからの」
 「仲間のため」といって、どんな無茶も押し通した少年――
 レビン・ハウンツの姿を思い浮かべ、切は苦笑いを浮かべる。
 その笑みには、自分の記憶が正しいのなら、という自嘲も含まれていた。







「先攻はやるよ。せいぜい足掻いてみせな」
「ぬかせ! 俺のターン!」
 神楽屋の挑発に乗らないようにしつつも、闘志をむき出しにする創志。
 その気迫が空回りしているのか、手札にあるのはモンスターカードがほとんどだ。
「俺は<A・ジェネクス・パワーコール>を召喚し、ターンエンドだ」
 両腕に装着したプラグから雷光を迸らせ、<A・ジェネクス・パワーコール>が拳を構えた。

<A・ジェネクス・パワーコール>
効果モンスター
星4/闇属性/機械族/攻1700/守   0
このカード以外の自分フィールド上に表側表示で存在する
このカードと同じ属性のモンスターの攻撃力は500ポイントアップする。

「……見たところ、そいつは他のモンスターがいてこそ真価を発揮するみたいだな。単独で召喚してよかったのか?」
「――ッ! ……アンタのターンだ。さっさとカードを引けよ」
 いちいち突っかかってくる神楽屋の態度に、カッと頭に血が上るが、表に出さないよう抑える。セラといい、どうもこういうタイプは苦手だ。
「へいへい。俺のターン、っと」

【創志LP4000】 手札5枚
場:A・ジェネクス・パワーコール(攻撃)
【神楽屋LP4000】 手札5枚
場:なし

 面倒くさそうにカードをドローした神楽屋は、
「こいつでいくか。<ジェムナイト・ルマリン>を召喚」
 いかにも「適当に選びました」という感じを臭わせながら、モンスターを召喚する。
 現れたのは、黄色の鎧で全身を纏った宝玉の戦士。<A・ジェネクス・パワーコール>に負けじと、両腕から雷を生み出している。

<ジェムナイト・ルマリン>
通常モンスター
星4/地属性/雷族/攻1600/守1800
イエロートルマリンの力で不思議なエナジーを創りだし、
戦力に変えて戦うぞ。
彼の刺激的な生き方に共感するジェムは多い。

「<ジェムナイト>……ねえ」
 何か引っかかるものがあるのか、創志の後方にいる宇川が難しい顔を見せる。が、気持ち悪いので絡むのはやめておく。
「戦闘と行くぜ。<ジェムナイト・ルマリン>で<パワーコール>を攻撃!」
「なッ……!?」
 <ジェムナイト・ルマリン>は何の効果も持たない通常モンスター。加えて、<A・ジェネクス・パワーコール>よりも攻撃力は低い。破壊されることで発動する効果など無いというのに――
 創志に考える暇を与えないかのように、<ジェムナイト・ルマリン>が雷を纏わせた拳を振りかぶる。
「くっ……迎撃だ<パワーコール>!」
 迫りくる黄の戦士を返り討ちにするべく、機械兵が装備したプラグに電気が集まっていく。
 その瞬間を待っていたかのように、
「ダメージステップ。手札から<ジェム・マーチャント>を墓地に送ることで、<ルマリン>の攻守を1000ポイントアップさせるぜ」
 神楽屋が声を発する。
 とんがり帽子を被った幽霊のようなモンスター<ジェム・マーチャント>が神楽屋の手札から飛び出し、ボヨンボヨンと飛び跳ねる。

<ジェム・マーチャント>
効果モンスター
星3/地属性/魔法使い族/攻1000/守1000
自分フィールド上に表側表示で存在する
地属性の通常モンスターが戦闘を行うダメージステップ時に
このカードを手札から墓地へ送る事で、
そのモンスターの攻撃力・守備力は
このターンのエンドフェイズ時まで1000ポイントアップする。

 すると、帽子の中から煌びやかな宝石がジャラジャラと落下する。その内の1つ――<ジェムナイト・ルマリン>と同じ輝きを持つ黄色の宝石が、振りかぶった拳へと集まっていく。
 <ジェムナイト・ルマリン>の攻撃力は1000ポイント上昇し、2600となった。
「受けな! フラッシュ・ナックル!」
 宝石の加護を受けた拳が、機械兵の体を砕く。
「ぐっ……」

【創志LP4000→3100】

 <A・ジェネクス・パワーコール>を葬った瞬間に砕け散った宝石の欠片が、ピシピシと創志の体に当たる。痛みはないと言っていいが、対峙する男がサイコデュエリストであることを改めて認識させる。
「こんなものか。ターンエンドだ」

【創志LP3100】 手札5枚
場:なし
【神楽屋LP4000】 手札4枚
場:ジェムナイト・ルマリン(攻撃)