遊戯王 New stage サイドM 8-2
「――ッ」
息を呑む。
ジェンスが言いたいことはすぐに分かった。
「支部での会話を覚えているか? あのとき、俺はお前にこう言ったはずだ。『この窮地を乗り越えられたのなら、高良火乃が死んだ事件の顛末について、俺の知っていることを話そう』とな」
「…………」
覚えている。が、本当にその約束が守られるとは考えていなかった。
輝王は言葉を返さないまま、自分の覚悟を確認する。
高良火乃は、復讐を望む人間ではなかった。ストラが身を呈して思い出させてくれたことだ。
ゆえに、今輝王がここに立っているのは、復讐のためではない。
それを自分に言い聞かせてから、
「……そうだな。だから?」
ジェンスに続きを促した。
「お前がここにいるということは、ストラ・ロウマンを倒し――窮地を乗り越えたということだ。なら、話すしかあるまい。高良火乃の死について」
今まで隙らしい隙を見せなかったジェンスが、静かに息を整える。その行為にピクリと切が反応するが、切りかかるまでには至らない。
そんな彼女の行動に気付いたのか否か、ジェンスは初めて切に向き直る。
「ぬ……」
ジェンスの発するプレッシャーに気圧されぬよう、切はさらに腰を落とす。ジェンスが妙な行動を起こせば、即座に神速の居合が飛ぶだろう。
「高良火乃を殺したのは、確かにレボリューションの人間だ。サイコデュエリストの力を持って、彼を殺した」
心臓が大きく脈打つ。
ついこのあいだまで、ずっと追い求めていた真実だ。復讐のために戦うのではないと決めても――そう簡単には割り切れない。
「その犯人は――」
ジェンスの唇がゆっくりと動く。
輝王は激しく揺れる心中を表に出さないようにしながら、聞き入る。
切が放つ殺気が、少しだけ緩むのを感じた。
息を呑む。
ジェンスが言いたいことはすぐに分かった。
「支部での会話を覚えているか? あのとき、俺はお前にこう言ったはずだ。『この窮地を乗り越えられたのなら、高良火乃が死んだ事件の顛末について、俺の知っていることを話そう』とな」
「…………」
覚えている。が、本当にその約束が守られるとは考えていなかった。
輝王は言葉を返さないまま、自分の覚悟を確認する。
高良火乃は、復讐を望む人間ではなかった。ストラが身を呈して思い出させてくれたことだ。
ゆえに、今輝王がここに立っているのは、復讐のためではない。
それを自分に言い聞かせてから、
「……そうだな。だから?」
ジェンスに続きを促した。
「お前がここにいるということは、ストラ・ロウマンを倒し――窮地を乗り越えたということだ。なら、話すしかあるまい。高良火乃の死について」
今まで隙らしい隙を見せなかったジェンスが、静かに息を整える。その行為にピクリと切が反応するが、切りかかるまでには至らない。
そんな彼女の行動に気付いたのか否か、ジェンスは初めて切に向き直る。
「ぬ……」
ジェンスの発するプレッシャーに気圧されぬよう、切はさらに腰を落とす。ジェンスが妙な行動を起こせば、即座に神速の居合が飛ぶだろう。
「高良火乃を殺したのは、確かにレボリューションの人間だ。サイコデュエリストの力を持って、彼を殺した」
心臓が大きく脈打つ。
ついこのあいだまで、ずっと追い求めていた真実だ。復讐のために戦うのではないと決めても――そう簡単には割り切れない。
「その犯人は――」
ジェンスの唇がゆっくりと動く。
輝王は激しく揺れる心中を表に出さないようにしながら、聞き入る。
切が放つ殺気が、少しだけ緩むのを感じた。
「そいつだ」
そう言って、ジェンスは若草色の着物を着た少女を指差した。
言葉が、出ない。
それは指を差された切も同様だった。
「高良火乃を殺した犯人――お前の親友の仇は、そこの女だ」
「な……」
真実を告げるジェンスの顔には、感情らしい感情が浮かんでいない。
だが、切は高良のことを覚えていないと言っていたし、その言葉に嘘はないように見えた。
「そこの女は、俺たちのことを嗅ぎまわっていた捜査官と、その捜査官に情報を流していた裏切り者――その両方を同時に殺した。裏切り者の名前は……」
言葉が、出ない。
それは指を差された切も同様だった。
「高良火乃を殺した犯人――お前の親友の仇は、そこの女だ」
「な……」
真実を告げるジェンスの顔には、感情らしい感情が浮かんでいない。
だが、切は高良のことを覚えていないと言っていたし、その言葉に嘘はないように見えた。
「そこの女は、俺たちのことを嗅ぎまわっていた捜査官と、その捜査官に情報を流していた裏切り者――その両方を同時に殺した。裏切り者の名前は……」
「やめて……」
言葉を続けるジェンスに、切はか細く声を上げる。
その顔からは血の気が失せ、生気が感じられない。それは、ジェンスの言葉が出まかせではないことを裏付けているようだった。
「友永切。奴のせいで、かなりの情報が高良火乃に流れた」
「友永、切?」
それは、輝王の隣にいる少女の名前ではなかったのか。
そう考えたとき、輝王の脳裏に大石の言葉が蘇った。
あいつは――友永切は死んだんだよ。ずっと前にな。
輝王の理解が追いつく間を与えないように、ジェンスは話し続ける。
「そう、本物の友永切はすでに死んでいる。そいつは、記憶の混濁から自分を『友永切』だと思い込んでいるだけだ」
その顔からは血の気が失せ、生気が感じられない。それは、ジェンスの言葉が出まかせではないことを裏付けているようだった。
「友永切。奴のせいで、かなりの情報が高良火乃に流れた」
「友永、切?」
それは、輝王の隣にいる少女の名前ではなかったのか。
そう考えたとき、輝王の脳裏に大石の言葉が蘇った。
あいつは――友永切は死んだんだよ。ずっと前にな。
輝王の理解が追いつく間を与えないように、ジェンスは話し続ける。
「そう、本物の友永切はすでに死んでいる。そいつは、記憶の混濁から自分を『友永切』だと思い込んでいるだけだ」
「やめて!!」
少女の悲鳴が、空気を切り裂く。
しかし、言葉が止まることはなかった。
しかし、言葉が止まることはなかった。
「そいつの本当の名前は、高良姫花(たからひめか)。高良火乃の妹だ」
少女が崩れ落ちる音が聞こえた。