にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 8-3

「真実を突き付けられて尚、戦う意思を見せるか……少しは成長したようだな」
 ジェンスが口元をわずかに緩める。
(やはり、こちらの戦意を削ぐために、話を切り出したのか)
 デュエル直前に語られた真実。それは切自身が心の奥底に封じてしまうほど、残酷なものだった。少女が受けた衝撃は計り知れないはずだ。
 確かに、切は輝王の呼びかけに応じ、立ち上がってくれた。
 しかし、心の迷いが完全に晴れたわけではないだろう。それは、輝王も同じだった。
 かつて屋上で見た、高良の表情が脳裏に蘇る
 これまで輝王は、高良を殺した犯人への復讐を原動力に動いてきた。切のために戦うと決めた今も、復讐の残り火はチリチリと胸を焦がし続けている。
 迷いを抱えたままで勝てるほど甘い相手ではない。
 だが。
 詠円院で眠り続ける後輩の姿を思い出す。彼女は――ストラ・ロウマンは、自分のために命を賭してくれたのだ。彼女が気付かせてくれたことを、見失うわけにはいかない。
「戯言はここまでだな。では、始めるとしよう」
 輝王の瞳に覚悟の色が宿ったことに気付いたのか、ジェンスが落ち着いた声で告げる。
 ジェンス・マクダーレン――同僚だったころは、いつも冷静沈着で、何事にも動じなかった男だ。顔に刻まれた無数の傷跡は、それだけの修羅場をくぐりぬけてきた証でもある。
「わしが戦う」
 下唇を噛みながら、切がもう一歩前に進み出た。
 しかし、両足の震えは止まっていない。
「待て。ここは俺が――」
「時間がない。2人まとめて相手をしよう。異論はないな? ……あっても聞かんが」
 問答になりそうなところに、ジェンスが割り込みをかけてくる。
「2人を同時に相手にするじゃと……?」
「特別ルールを適用する。安心しろ。どちらかが極端に有利になるようなことはない――たぶんな」
 そう言って、ジェンスは苦笑いを浮かべた。
「いいだろう」
 異論を聞く気はないと言っているのだ。ここで食ってかかってもしょうがないだろう。
「お前も構わないな?」
 ジェンスが問いを投げたのは、着物姿の少女だ。
 切は首肯すると、デュエルディスクを展開する。
「よし。決闘開始だ」
 ジェンスの口調は冷静なままだったが、明らかに纏う空気が変わる。
 場の空気が、徐々に張り詰めていく。