にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 4-6

「ちくしょうが……あのガキに負けてから、こんなんばっかだぜ……」
 敗者となった金盛は、その場に膝をついてうなだれる。どうやら逃げる気はないようだ。
 輝王は無言のまま金盛に近づき、その手に錠をかけようとしたが――
「レボリューションの連中とも連絡がつかねえしよぉ」
 金盛が何気なく漏らしたその言葉で、状況が一変した。
 輝王はうなだれる男に駆け寄ると、相手の反応をうかがう前に胸ぐらをつかみ上げる。
「ぐえっ!? な、何だよいきなり――」
 突然の事態に混乱した金盛は、胸ぐらを掴んでいる輝王の手を外そうとする。
 しかし、ギリギリと軋むその右手は、全く動かない。
「レボリューションと言ったな……貴様、連中と関わりがあるのか?」
 輝王のただならぬ様子を見て、金盛はようやく自分の失言に気付く。
「な、何のことだ? 俺はレボリューションなんて――うぎっ!?」
 胸ぐらを締めあげる手に、さらなる力がこもる。
「知っていることをすべて話せ」
 声色こそ落ち着いていたが、徐々に金盛の足が地面から離れていることから、輝王の感情は明白だった。
「お、落ち着け輝王! それじゃこやつも喋れまい!」
 輝王の行動に出鼻をくじかれてしまい、おろおろしていた切がようやく止めに入る。
 そのとき、金盛の上着のポケットから、カシャンと音を立てて何かが落ちた。
「これは――でじたるカメラ?」
 切が落ちたデジカメを拾い上げ、躊躇なく起動させる。
「あっ! 待て! 見るな!」
 それを見た金盛がひどく慌てた様子で制止の声を絞り出すが、輝王の手を振りほどくことはできない。
「なんじゃこれはッ――!?」
 そこに映っていたものは――









 日が傾きかけ、輝王が歩く路上は夕焼けの紅に染まりつつある。
 目指す場所は、切と初めて出会ったときに立ち寄った食堂だ。
 そこに――皆本創志とティト・ハウンツがいる。
 金盛のデジカメに映っていたのは、とあるサイコデュエリストのデュエル風景だった。彼は、その写真をシティにあるマスメディアに売り込み、金儲けをしようとしていたらしい……デジカメを見られたことがきっかけになり、金盛は洗いざらい喋ってくれた。
 金盛がレボリューションに雇われたのは、つい数日前のほど。皆本創志の弟、信二を連れていく間に邪魔が入った場合、その処理を任されていた。結果、彼は邪魔に入った創志にデュエルで負け、信二を連れて行った場所――「処刑人」ティト・ハウンツが住む廃美術館まで案内することになってしまった。
 一度は立ち去った金盛だったが、「処刑人」がどんな人物なのか気になり、外からこっそりのぞき見していたのだ。そこで「氷の魔女」の正体――ティト・ハウンツが巷で噂のサイコデュエリストだと知り、急いで写真を撮ったのだという。
 その後、何者かが近づいてくる気配を感じ、今度こそ本当にその場を去った。以来、レボリューションとは連絡が取れないと嘆いていた。
(写真に写っていた氷の力……あれで、レボリューションに不要となった人間の「処理」を行っていたわけか)
 切は「処刑人」が本当に年端もいかない少女だったことにショックを受けていたようだが、やがてこう切り出した。
「この2人を探そう。女の子……ティトなら、わしの知らないレボリューションの情報を持っているかもしれぬ」
 デジカメを渡すことを条件に、金盛は解放した。
 一度支部に戻ることも考えたが、その前に闇市で2人の目撃情報がないか聞き込みを行うことにした……これが当たりだった。
「ああ、ああ。その子たちならさっき来ましたよ。怪しげな組織と関わってるみたいでした」
 ジャンク屋の店主の証言を始め、いくつかの目撃情報が挙がった。どうやら皆本創志とティト・ハウンツは行動を共にしているようだ。
 そして行きついたのが――この寂れた食堂だった。
 突然現れたセキュリティの人間に対し、相手がどんなリアクションを取るか分からない。
 また、切はティトのことを知らなかったが、その逆は分からない。それらを含め、切は少し離れた建物の陰に待機させておくことにした。
(……こんどのピースは、パズルを完成させる手掛かりとなるだろうか)
 そんなことを考えたとき、食堂の扉が開き、1組の男女が姿を現した。
 間違いない。皆本創志とティト・ハウンツだ。金盛の写真で見た姿とは多少服装が違っていたが、あれでは顔を知っている人間の目は誤魔化せまい。
 輝王は大きく息を吐いた後、2人に向かって口を開く。

「――皆本創志。それにティト・ハウンツだな」

 2人の前に立ちふさがると、創志がティトを自らの背に隠す。
「…………」
 答えは返ってこない。創志の身体全体から、こちらに対する警戒が伝わってくる。
「聞きたいことがある。俺と一緒に来てもらおうか」
 その言葉を発したとき、創志の目線が胸に光るセキュリティの紋章を捉えたことが分かった。
「俺の名は輝王正義。セキュリティ第17支部所属の捜査官だ」
 そして、2つの線がここで交差する。