にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage 番外編 ジェムナイトは砕けない-27

「バトルだ! <ジェムナイトマスター・ダイヤ>で<エンシェント・ホーリーワイバーン>を攻撃する!」
「なっ……正気ですか!?」
 豹里が驚くのも無理はない。
 <ジェムナイトマスター・ダイヤ>は墓地の<ジェム>の名のついたモンスターの数×100ポイント攻撃力を上昇させる効果がある。だが、神楽屋の墓地にいる<ジェム>と名のついたモンスターは5体。攻撃力はわずか500ポイントしか上がらず、3400。これでは<リミッター解除>のような攻撃力を2倍にするカードを使ったとしても、<エンシェント・ホーリーワイバーン>には届かない。このままバトルが続行されれば、<ジェムナイトマスター・ダイヤ>は破壊され、神楽屋のライフは尽きる。
「……何か策があるようですね。なければそのまま終わらせるだけです! 迎撃しろ! <エンシェント・ホーリーワイバーン>!」
 白き翼竜の口に光が収束し、光線となって放たれる。
「エンシェント・フレア!」
 光線は1本ではなく、まるで豪雨のごとく逃げ場を奪うように降り注ぐ。
 <ジェムナイトマスター・ダイヤ>は動かない。
 本流とも言うべき極太の波動を、真正面から受け止める。
「輝彦!」
 ほたるが叫んだとき――すでに神楽屋は動いていた。
「これは……!?」
 豹里が怪訝そうな表情を浮かべる。自らが従える翼竜の攻撃が止まらないからだ。本来なら、すでに主人もろとも甲冑の騎士を吹き飛ばしていてもおかしくない。なのに、攻撃は続行されている。それは、相手がまだ健在であることを意味している――
「炎……?」
「気付いたみてえだな」
 見れば、光線の着弾点の端々から、火の粉が飛び散っている。
 <ジェムナイトマスター・ダイヤ>の眼前――生み出された炎の壁が、<エンシェント・ホーリーワイバーン>が放った「エンシェント・フレア」を受け止めていた。
「速攻魔法<結晶転写>を発動させてもらったぜ。こいつは、自分フィールド上の<ジェムナイト>の攻撃力を、<ジェムナイトマスター・ダイヤ>に加えることができる!」

<結晶転写>
速攻魔法(オリジナルカード)
このカードは、自分フィールド上に「ジェムナイトマスター・ダイヤ」が2体以上存在する場合発動できない。
自分フィールド上に表側表示で存在する「ジェムナイトマスター・ダイヤ」以外の
「ジェムナイト」と名のついたモンスター1体を選択する。
「ジェムナイトマスター・ダイヤ」の攻撃力は、エンドフェイズまで選択したモンスターの攻撃力分
アップし、守備表示モンスターを攻撃した時、その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
このカードを発動したターン、選択したモンスターは攻撃することができない。

「<ダイヤ>専用の魔法カード!? <ルビーズ>の攻撃力を上昇させていたのは、これを狙って――」
「正解だ! 行け! <ジェムナイトマスター・ダイヤ>!」
 ザン! と光の奔流が断ち切られる。
 上空に跳んでいた<ジェムナイト・ルビーズ>が放った「クリムゾン・トライデント」が、「エンシェント・フレア」を相殺したのだ。
 攻撃から解放されたダイヤモンドの騎士は、ドン! と足元を爆発させて跳ぶ。
 降り注ぐ細い光線を剣で弾き、斬り捨て、受け流し。
 白き翼竜を葬るために猛進する。
 <エンシェント・ホーリーワイバーン>が第二射を放つために光を収束させたと同時。
 バチリ、と音を立てて<ジェムナイトマスター・ダイヤ>の刃に雷が宿る。
 翼竜が戦慄く。
 騎士が構える。
 そして――
「ライオ・ザッパーッ!」
 剣閃が、煌めく。
 ズバァン! という音が遅れて響き、翼竜の首から腹にかけて、大きな傷が刻まれる。
 翼竜の悲痛な鳴き声と共に、傷口から血の代わりに光が溢れ、辺りを白く染め上げていく。広げた翼からは力が抜け、白き翼竜は自らが流した光の海に倒れ、溶けていく。
 <ジェムナイトマスター・ダイヤ>の攻撃力は7800。<エンシェント・ホーリーワイバーン>のそれを100ポイントだけ上回った。
「――<ジェムナイト・パーズ>の効果発動。戦闘破壊して墓地に送ったモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与える」
 <ジェムナイトマスター・ダイヤ>が振り下ろした刃から雷が放たれ、豹里を襲う。
 これで、合計ダメージは2200ポイント。

【豹里LP6300→4100】

「私のジョーカーを倒しますか……! つくづく貴方は最高ですよ! デュエルを楽しいと感じたのは、生まれて初めてです! 言葉にできないほどの緊張感……そして、その先に待つ敗者の絶望! それを与えることこそ、私の求めていたものだ!」
 消えゆく翼竜の姿を見ながら、豹里が歓喜の雄叫びを上げる。
 それはまるで、人の皮を被った獣だ。飼い慣らされてしまった獣が、野生に回帰し本能を取り戻したようだった。
「私もこのままやられるわけにはいきません。<エンシェント・ホーリーワイバーン>は、戦闘によって破壊され墓地に送られた時、1000ポイントライフを支払うことで墓地から特殊召喚できる! 来なさい、<エンシェント・ホーリーワイバーン>!」

【豹里LP4100→3100】

 翼竜が消えたあとも場に残り続けていた光の海から、再び<エンシェント・ホーリーワイバーン>が姿を現す。
 しかし、上げた雄叫びは弱々しく、呼吸を圧迫するほどの覇気は消え失せていた。豹里と神楽屋のライフ差は2400。よって、<エンシェント・ホーリーワイバーン>の攻撃力は4500となるが、<結晶転写>の効果を受けた<ジェムナイトマスター・ダイヤ>には遠く及ばない。
 それでも、白き翼竜は攻撃表示で特殊召喚された。
「<結晶転写>には攻撃力アップの他に、貫通効果を付与する効果もある……それに、正義の味方は最後の最後まで諦めない。そうでしょう?」
「ハッ。同意しておいてやるよ」
 最後まで、戦う意志を示す。自らの信念を曲げないために。
「今の私ではこれが限界です。ですが、いつの日か私は、私の正義を持って貴方のプライドを粉々に打ち砕く。その顔が屈辱に染まることを、今から楽しみにしていますよ」
「……トコトン悪趣味な野郎だな、お前」
「聞き飽きましたよ。その言葉」
「何度だって言ってやるよ。お前が俺の前に立ちふさがるのならな」
 神楽屋が言い終えると、後方へ跳んだ<ジェムナイトマスター・ダイヤ>が、再び剣を構える。
 纏った銀色の甲冑が光を――翼竜のものとは別の透明感のある光を放ち、大剣がその光に包まれる。
「――このステージは、ここで終演だ! <ジェムナイトマスター・ダイヤ>!」
 <ジェムナイト・パーズ>は、1度のバトルフェイズ中に2回の攻撃を行うことができ、<ジェムナイトマスター・ダイヤ>はその効果を得ている。
 その刃は、悪を斬るためのものではない。
 これから自分が歩むべき道を斬り開く、光の刃。
 いつの日か、本当の意味でヒーローになるために。

「クリスタル――ブレイバーッ!!」

 結晶は、大いなる光をその内に宿し続ける。
 <ジェムナイトマスター・ダイヤ>の振るった刃が<エンシェント・ホーリーワイバーン>を裂き、教会中が光に覆われた。

【豹里LP3100→0】