にわかオタクの雑記帳

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遊戯王 New stage 番外編 ジェムナイトは砕けない-26

◆◆◆

「問題だテルさん。ドラゴンにあって、今のジェムナイトにない物……なーんだ?」
 緊迫したデュエルの中、対戦相手である青年は、おどけた口調でそう言った。
 その時、神楽屋は「尻尾」と答え、それが不正解であったがゆえに、デュエルに負けた。
 正解は、ダイヤモンドの存在。
 虹色に輝く宝石のような鱗を貫けず、反射ダメージによって神楽屋のライフはゼロになった。
 あの眩しさは、今でも目に焼き付いている。
 そして、今。
 もう一度青年が同じクイズを出したとしたら……今度こそ正解は「尻尾」のはずだ。
 ただ眺めることしかできなかった、ダイヤモンドの輝き。
 今は違う。
 神楽屋の傍らには、「ダイヤモンドの騎士」が立っている。
 砕けてしまった結晶の欠片を拾い集め、繋ぎ合わせ、足りない部分を補って――再び輝きを取り戻した、意志の形。

<ジェムナイトマスター・ダイヤ>
融合・効果モンスター
星9/地属性/岩石族/攻2900/守2500
「ジェムナイト」と名のついたモンスター×3
このカードは融合召喚でのみエクストラデッキから特殊召喚できる。
このカードの攻撃力は、自分の墓地の「ジェム」と名のついた
モンスターの数×100ポイントアップする。
また、1ターンに1度、自分の墓地のレベル7以下の「ジェムナイト」と名のついた
融合モンスター1体をゲームから除外して発動できる。
エンドフェイズ時まで、このカードは除外したモンスターと同名カードとして扱い、
同じ効果を得る。


「輝彦……! よかった……!」
 神楽屋の姿を見て安堵のため息を漏らしたほたるが、半分泣いているような声を出す。
「ハッ、大方俺が死んだと思って泣いてたんじゃねえか?」
「な、泣いてなんかないもん! あたしは輝彦を信じるって決めたんだから!」
 言ってから顔を赤くしたほたるを見て、神楽屋の脳裏にミカドと麗千の顔が浮かぶ。
「……裏切れねえよな。今度こそ」
 誰にも聞こえないように呟き、目の前の敵に視線を向ける。
「フフフ……ハハハハハ! 完璧に不意を突いたと思ったんですがね……まさかあの罠を切り抜けるとは。予想外ですよ、神楽屋輝彦君」
「……この状況でまだ笑うかよ」
「ええ。どうやら私は大きな間違いを犯していたようです。目的を優先するあまり、過程がおろそかになっていた……ぬるま湯につかり過ぎていました。砕くべきプライドは、気高ければ気高いほど大きな快感を得られる。その事実を失念していましたね」
 両目を限界まで見開いて神楽屋を睨みつける豹里の口元から、笑みは消えない。
 心の底から歓喜しているような笑みは、消えるどころかますますその色を濃くする。
「デュエルを続けましょう! 貴方も……そして私も! それを望んでいる!」
「……付き合ってやるぜクソ野郎」
 吐き捨てた神楽屋は、大きく息をついて呼吸を整える。目立った傷はないが、肉体が感じている疲労は相当なものだった。あと一瞬でも行動が遅れていたら、鉄骨に体を串刺しにされるか、生き埋めになっていたのだ。
(……ドローしたカードが1枚でも別物だったら、死んでたかもしれねえな)
 残った2枚の手札を見て、神楽屋は応えてくれた相棒たちに感謝する。
 <ヒーロー・ギャンブル>の効果でドローした5枚のカードの中に<ジェムナイト>モンスターが3枚含まれていることを確認した神楽屋は、鉄骨を避けるため後方に跳びつつ墓地の<ジェムナイト・クリスタ>を除外して<ジェムナイト・フュージョン>を回収し、即座に発動。<ジェムナイトマスター・ダイヤ>を融合召喚し、サイコパワーで実体化させ鉄骨から身を守った。
 融合素材は、<ジェムナイト・ガネット>、<ジェムナイト・サニクス>、そして、<ジェムナイト・オブシディア>。

<ジェムナイト・ガネット>
通常モンスター
星4/地属性/炎族/攻1900/守   0
ガーネットの力を宿すジェムナイトの戦士。
炎の鉄拳はあらゆる敵を粉砕するぞ。

<ジェムナイト・サニクス>
デュアルモンスター
星4/地属性/炎族/攻1800/守 900
このカードは墓地またはフィールド上に表側表示で存在する場合、
通常モンスターとして扱う。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードを通常召喚扱いとして再度召喚する事で、
このカードは効果モンスター扱いとなり以下の効果を得る。
●このカードが戦闘によって相手モンスターを破壊し墓地へ送った時、
デッキから「ジェムナイト」と名のついたカード1枚を手札に加える事ができる。

<ジェムナイト・オブシディア>
効果モンスター
星3/地属性/岩石族/攻1500/守1200
このカードが手札から墓地へ送られた場合、
自分の墓地のレベル4以下の通常モンスター1体を
選択して特殊召喚できる。

「<オブシディア>の効果が発動するぜ。こいつが手札から墓地に送られた時、墓地のレベル4以下の通常モンスター1体を特殊召喚できる。蘇れ、<ジェムナイト・ガネット>!」
 握った拳から炎を生みだしつつ、<ジェムナイト・ガネット>が墓地から蘇る。
「――ケリをつけるぜ、豹里。お前の歪んだヒーロー像ってやつを叩き直してやるよ」
「できるものならやってみてください。先輩」
 先輩。その言葉に秘められた皮肉に、神楽屋はずっと辟易してきた。
「……お前は、悪を裁くために正義の味方になったんだよな?」
「そうです。それが何か?」
「もうひとつ教えてやる。悪を裁くのは、必ずしも正義の味方であるとは限らないってことをな!」
 神楽屋は言った。ここに来たのは、豹里をぶっ飛ばすためだと。
 ほたるを完全な意味で救うのなら、神楽屋の力は到底及ばない。ここで助けられたとしても、豹里の隠蔽工作を破り、彼の罪を白日のもとに晒さなければ、ほたるはまた狙われるだろう。それどころか、セキュリティに刃向った神楽屋自身や、協力してくれた仲間たちの身も危うい。
 それを承知で、神楽屋はほたるを助けに来た。
 ピンチを救ってくれるヒーローではなく。
 デュエルギャング「レボリューション」の一員として。
 正義の味方ではなく……神楽屋輝彦として豹里を倒す。それが、今の自分にできる精一杯だ。
「俺は魔法カード<死者蘇生>を発動!」

<死者蘇生>
通常魔法(制限カード)
自分または相手の墓地のモンスター1体を選択して発動できる。
選択したモンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。

「<死者蘇生>……最上級の蘇生カードですか!」
「もう一度俺に力を貸してくれ――<ジェムナイト・ルビーズ>!」
 地面に金色の魔方陣が描かれ、中心にエジプトの幸運のお守りにも使われているアンクの紋様が浮かび上がる。魔方陣全体が強く輝き、中から真紅の騎士が姿を現す。

<ジェムナイト・ルビーズ>
融合・効果モンスター
星6/地属性/炎族/攻2500/守1300
「ジェムナイト・ガネット」+「ジェムナイト」と名のついたモンスター
このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみ
エクストラデッキから特殊召喚する事ができる。
1ターンに1度、自分フィールド上に表側表示で存在する
「ジェム」と名のついたモンスター1体をリリースして発動する事ができる。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで
リリースしたモンスターの攻撃力分アップする。
また、このカードが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。

「<ルビーズ>の効果発動! <ガネット>をリリースして攻撃力をアップする……ブレイズ・カット!」
 <ジェムナイト・ガネット>が炎に包まれ、<ジェムナイト・ルビーズ>の構える槍の矛先へと吸い込まれていく。
「これで、<ジェムナイト・ルビーズ>の攻撃力は4400ですか。<エンシェント・ホーリーワイバーン>の7700には到底及びませんよ? そして、<ルビーズ>の効果は1ターンに1度しか使えない」
「お前に言われなくても分かってる。さらに俺は<ジェムナイトマスター・ダイヤ>の効果発動! 墓地のレベル7以下の融合<ジェムナイト>を除外して、エンドフェイズまで同じ効果を得る!」
 <ジェムナイトマスター・ダイヤ>が大剣を正眼に構える。大剣の刃には七色の宝石がそれぞれ埋め込まれているが、崩れた天井から光が差しこんでいるにも関わらず輝きは鈍い。
「俺が選択するのは――<ジェムナイト・パーズ>!」

<ジェムナイト・パーズ>
融合・効果モンスター
星6/地属性/雷族/攻1800/守1800
「ジェムナイト・ルマリン」+「ジェムナイト」と名のついたモンスター
このカードは上記のカードを融合素材にした融合召喚でのみ
エクストラデッキから特殊召喚する事ができる。
このカードは1度のバトルフェイズ中に2回攻撃する事ができる。
このカードが戦闘によってモンスターを破壊し墓地に送った時、破壊した
モンスターの攻撃力分のダメージを相手ライフに与える。

 叫んだ瞬間、黄褐色の宝玉が光を放つ。それは、未来の希望を紡ぐ光――