にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-16】

「なっ……!?」
「――――ッ」
 創志が驚きの声を上げる。輝王の体がかすかに震える。
 <トライデント・ドラギオン>の巨体が崩れ落ち、砂の大地に力無く横たわる。
 か細い断末魔を残し、三又の竜が砕け散った。
「まさかこんな手段で<ドレッド・ルート>を倒そうとしてくるとは思いませんでしたよ! けど、詰めが甘かったですね! 貴方の攻撃は僕には届かず、馬鹿みたいに自分を傷つけただけで終わりです! 滑稽だ。実に滑稽ですよ! アハハハハハハハ!!」
 <トライデント・ドラギオン>が消失したのを見て、砂神は高笑いを上げる。愚行に及んだ治輝を嘲笑い、罵るための笑いだった。
「<ロケット・パイルダー>の効果はエンドフェイズまで。次の僕のターンには、攻撃力4000に戻ります。壁モンスターは<A・マインド>だけ。<機甲部隊の最前線>の効果が厄介ですが、すでに貴方たちのライフは風前の灯。1人ずつ順番に葬ってあげますよ!」
 砂神の言葉を裏付けるかのように、炭と化していた邪神の両腕が、徐々に復元を始める。
「実に無駄な攻撃でしたが、僕にとっては楽しかったですよ。愉快なショーをありがとうございました、時枝治輝」
 そう言って、砂神はわざとらしくお辞儀をしてみせる。
「くそッ……」
 創志が怒りと悔しさに拳を振るわせるものの、反論は出来ない。砂神の言う通り、<邪神ドレッド・ルート>の撃破に失敗し、治輝は無駄にライフを削った。伏せカードを起動する様子も無い。
 この状況を第三者が見たら、誰もが砂神の言葉に頷くだろう。壁モンスターはかろうじて残っているものの、反撃の目は潰えたと言っていい。
 だが。

「――俺は決めたんだ。輝王の覚悟も、創志の傷も、そして、ドラゴンたちの犠牲も……全部無駄になんかしないって」

 治輝は、そう思っていなかった。
「これは……」
 最初に気付いたのは、輝王だった。
 治輝が掲げた1枚のカード。そのカードに向かって、砕けた<トライデント・ドラギオン>の破片が集まっていく。
 <トライデント・ドラギオン>だけではない。砂の中に埋もれていたドラゴンたちの破片――彼らが残していった「力」が、1枚のカードに収束していく。

「このカードは、自分フィールド上のドラゴン族モンスターが3体以上リリース、または3体以上破壊されたターン、手札から特殊召喚できる」

 <ミンゲイドラゴン>。
 <ガード・オブ・フレムベル>。
 そして、<トライデント・ドラギオン>。
 3つの犠牲を糧にして、その竜は舞い上がる。
「砕けし星の断片よ――」
 治輝が掲げたカードに、青い光が灯る。
 それは、ただ痛みを与えるペインには出せない光。
「集いし記憶を力に変え――」
 囁くように言葉を紡ぐと、治輝の周囲に、不可思議な存在感が現れ始める。
 実体は無いのに、その存在が清らかで、澄んだものだと分かる。

 自分には何も創れなくて。
 誰かの夢を応援したくて。
 けれど、痛みのせいでそのことを忘れてしまって。
 おせっかいな誰かのおかげで、それを思い出して――
 その記憶が、澄んだ青の光を生む。

「全てを染める残滓と成せ!」
 青の光が、夜の砂漠に広がっていく。
 実体の捉えづらいそれは、しかし紛れも無く龍の姿を象っていた。
 流れ行く雲のように。わずかに残った霧のように。
 まるで、幻想の世界でしか生きられないような、透明感のある龍。

「掴め! <-蘇生龍- レムナント・ドラグーン>!」

 それが、治輝の相棒――<-蘇生龍- レムナント・ドラグーン>だった。

<-蘇生龍-レムナント・ドラグーン>
効果モンスター(オリジナルカード)
星8/光属性/ドラゴン族/攻2200/守2200
このカードは通常召喚できない。
自分フィールド上のドラゴン族モンスターが3体以上リリース、
または3体以上破壊されたターンに手札から特殊召喚できる。
このカードが手札からの特殊召喚に成功した時、このターン破壊された、またはリリースされたドラゴン族モンスターを可能な限り、墓地または除外ゾーンから手札に戻す。
このカードが戦闘を行うダメージステップ時、手札のドラゴン族モンスターを相手に見せる事で発動できる。
このカードの攻撃力はエンドフェイズ時まで、見せたカードの種類×1000ポイントアップする。
このカードがフィールドを離れた時、自分は手札を全て捨てる。
このカードが自分フィールド上に表側表示で存在する限り、
自分はモンスターを通常召喚・反転召喚・特殊召喚する事ができない。