遊戯王オリジナルstage 【ep-15】

＜トライデント・ドラギオン＞
シンクロ・効果モンスター
星１０/炎属性/ドラゴン族/攻3000/守2800
ドラゴン族チューナー＋チューナー以外のドラゴン族モンスター１体以上
このカードはシンクロ召喚でしか特殊召喚できない。
このカードがシンクロ召喚に成功した時、
自分フィールド上に存在するカードを２枚まで破壊する事ができる。
このターンこのカードは通常の攻撃に加えて、
このカードの効果で破壊した数だけ１度のバトルフェイズ中に攻撃する事ができる。

「こいつが……治輝のシンクロモンスター……」
　隣に立つ創志は、＜トライデント・ドラギオン＞の迫力に圧倒されつつも、瞳を輝かせている。どうやら胸の高鳴りを抑えきれないようだった。
「攻撃力3000――＜ドレッド・ルート＞の前では1500。そんなモンスターで、どうするつもりですか？」
「焦るなよ。まずは＜トライデント・ドラギオン＞の効果発動だ。このモンスターがシンクロ召喚に成功した時、自分フィールド上のカードを２枚まで破壊することができる。そして、破壊したカードの数だけ攻撃を行うことができる」
　効果を説明したあと、治輝は残ったドラゴン――＜ミンゲイドラゴン＞と＜ガード・オブ・フレムベル＞に視線を向ける。
（ごめんな。けど、お前たちの犠牲は、絶対に無駄にしないから）
　治輝が声に出さずにそう詫びると、それが伝わったのか、２体のドラゴンはゆっくりと頷いた。
「――俺は＜ミンゲイドラゴン＞と＜ガード・オブ・フレムベル＞を破壊する！　これで、＜トライデント・ドラギオン＞はこのターンのバトルフェイズ、３回の攻撃を行うことが可能だ！」
　三又の竜が吐きだした炎に焼かれた２体のドラゴンが砕け散る。残滓とも言える破片が＜トライデント・ドラギオン＞の周囲を漂い、力を与える。＜トライデント・ドラギオン＞は空に向かって３本の首を伸ばし、咆哮を上げた。
「そして――＜ロケット・パイルダー＞を＜ドラギオン＞に装備！」
「……ッ！？　そのカードは――」
　＜トライデント・ドラギオン＞の中央の首に、赤い首輪へと姿を変えた＜ロケット・パイルダー＞が巻きつく。

＜ロケット・パイルダー＞
装備魔法

「時枝……！　まさか、お前！」
　治輝のやろうとしていることに気付いた輝王が、ハッと声を上げる。治輝は輝王に向けて首を横に振った後、
「……大丈夫だ。これが、俺のデュエルだから」
　自分だけ傷つかずに、勝利が得られるとは思っていない。
　危険を顧みず特攻し、＜邪神アバター＞を無力化した輝王のように。
　砂の刃に身を晒されても、決して倒れなかった創志のように。
　自分も、示さなければならない。
　勝利のために痛みを受け入れる、覚悟を。
「バトルだ！　＜ドラギオン＞で＜ドレッド・ルート＞を攻撃！　トライデント・アイン、バースト！」
　治輝の攻撃宣言を受けて、三又の竜の右の頭が、炎を吐き出す。
　触れたものを一瞬で蒸発させてしまいそうな轟炎が、＜邪神ドレッド・ルート＞に襲い掛かる。
「……＜ドレッド・ルート＞！」
　これまでの饒舌さは鳴りを潜め、砂神は短く言葉を発する。
　巨体に似合わない機敏な動作で右腕を動かした＜邪神ドレッド・ルート＞は、盾のように構えたそれで轟炎を受ける。
　すると、その右腕は焼き尽くされるどころか、逆に放射される炎をドス黒く変質させていく。
　「ガアッ！」という咆哮と共に＜邪神ドレッド・ルート＞が右腕を振るうと、黒く染まった炎が一瞬で逆流し、＜トライデント・ドラギオン＞の頭を焼いた。
　竜の頭を炭へと変えた黒の炎は火の粉となり、治輝へと降り注ぐ。
「ぐうっ……！」

【治輝ＬＰ4000→1500】

「治輝！」
　降り注ぐ火の粉は実際のそれとは性質が異なるようで、身に着けている衣服を焼くことはない。その代わりに、火の粉が当たった箇所は、骨が溶かされているような痛みを感じる。
「まだだッ……」
　本来なら、ここで＜トライデント・ドラギオン＞が戦闘破壊されてバトルフェイズは終了だ。しかし、＜ロケット・パイルダー＞を装備したモンスターは、戦闘では破壊されない。ゆえに、＜トライデント・ドラギオン＞はあと２回の攻撃を行なうことができる。
　＜ロケット・パイルダー＞の効果は、それだけではない。
「あれは……！」
　見れば、攻撃を受けた＜邪神ドレッド・ルート＞の右腕もまた、黒く変色し、炭のようになっていた。力無く垂れ下がっている様子を見れば、ダメージを受けていることがはっきりと分かる。
「……＜ロケット・パイルダー＞を装備したモンスターの攻撃を受けたモンスターは、エンドフェイズまで装備モンスターの攻撃力分、攻撃力がダウンする」

＜ロケット・パイルダー＞
装備魔法
装備モンスターが攻撃する場合、装備モンスターは戦闘では破壊されない。
装備モンスターが攻撃を行ったダメージステップ終了時、
装備モンスターの攻撃を受けたモンスターの攻撃力は、
エンドフェイズ時まで装備モンスターの攻撃力分ダウンする。

　＜邪神ドレッド・ルート＞の攻守半減効果を受けていたため、＜トライデント・ドラギオン＞の攻撃力は半分の1500。その数値分だけ、＜邪神ドレッド・ルート＞の攻撃力がダウンする。
「ってことは、今の＜ドレッド・ルート＞の攻撃力は2500……」
「そして、＜トライデント・ドラギオン＞はあと２回の攻撃を残している」
　輝王の解説を聞いて、創志も治輝の狙いに気付いたようだ。
「右手がダメなら左手を。それでもダメなら両手を突き出す……アイツじゃないけれど、一度の攻撃で倒せないなら、倒せるまで攻撃するだけだ」
　無論、この攻撃にはリスクが付きまとう。すでに治輝のライフは大きく削られ、受けた痛みのせいで骨がきしんでいる。どこかで失敗すれば、それはすなわち死を意味している。
　だが、それに臆している場合ではない。すでに覚悟は済ませている。
「２回目の攻撃だ。頼む、＜ドラギオン＞！　トライデント・ツヴァイ、バースト！」
　頭をひとつ失ったことで動きが鈍重になった竜だが、瞳には闘志がみなぎっている。
　今度は左の頭が炎を吐き出し、片腕を動かせない邪神へと向ける。
「小癪な真似を……！」
　毒づきながらも、砂神が伏せカードを起動する様子は見られない。
　左腕で炎をガードし、先刻と同じく黒い炎へと変質させてから、攻撃を跳ね返す＜邪神ドレッド・ルート＞。＜トライデント・ドラギオン＞の左の頭が燃え盛ると同時、邪神の左腕も焼き尽くされる。
「ぐあああっ！」
　先の攻撃よりも遥かに多い数の火の粉が降り注ぎ、治輝の体を内側から焼き尽くす。

【治輝ＬＰ1500→500】

　しかし、その痛みに屈するわけにはいかない。治輝は歯を食いしばり、必死に耐える。耐え切る。
　これで、＜邪神ドレッド・ルート＞の攻撃力は1000。
　射程圏内に捉えた。

「決める！　これが最後の攻撃だ……トライデント・ドライ、バーストォ！！」
　
　唯一残った中央の頭が、これまでよりも一層激しく燃え盛る炎を口内で凝縮すると、それを弾丸のように吐き出した。
　膨れ上がった火の玉は、最早弾丸と形容するレベルを超えている。
　それは、砲弾。
　邪神を葬るべく、浄化の砲弾が飛ぶ。
「ク……クソがああああああああああッ！！」
　太陽のごとく燃え滾る火球が、＜邪神ドレッド・ルート＞に直撃する――

　その刹那。

「――なーんてね」
　＜邪神ドレッド・ルート＞を守るように光の壁が出現する。
　炎弾はその壁に当たって弾ける。
　そして、弾けた炎が光へと変わり――

「ハハハハハ！　無駄にライフを削っていただいて、どうもご苦労様でした！　リバースカードオープン、＜聖なるバリア―ミラーフォース―＞！」

　＜聖なるバリア―ミラーフォース―＞が放った光の槍が、＜トライデント・ドラギオン＞を串刺しにした。

＜聖なるバリア―ミラーフォース―＞
通常罠（制限カード）
相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。
相手フィールド上に存在する攻撃表示モンスターを全て破壊する。