ライブアライブ(リメイク版)感想 錆びたアンテナを震わす「音」の力
歳を重ねるごとに物事に対する関心が薄くなり、新しいことを始めようとする意欲が衰えていく……
と、こういった愚痴を書くのも、これで何度目になるでしょうか。
嫌いなもの、無関心なことはもちろんのこと、今まで大好きだった事柄に関しても、「面白そう!」「やってみたい!」といったポジティブな感情よりも、「面倒くさそう」「時間がない」といったネガティブな感情が先行するようになってしまう。
さらに酷いのは、SNS等で誰かが作品をオススメする際、「これは全人類プレイしろ」「このゲームをプレイせずしてRPGは語れない」といった強い言葉を使われると、逆に興味を失ってしまう天邪鬼っぷり。自分も使ったことある癖にね……
この鈍重さ、言い訳癖、アンテナの錆付きは、加齢によるものだけではなく、これまで趣味を共有できる人の輪を広げてこなかった自分の過ちでもあるのですが……
そんな「今まで楽しんでいるものを継続しているだけ」のにわかオタクっぷりに磨きがかかってしまった自分が、珍しくピクリと反応したゲームがあったんですよ。
SFCで発売され、プレイしたことがなくても(ネットの海に浸かっていれば)一度は名前を聞いたことがある作品。
「あの世で俺に詫び続けろオルステッドーーー!」のセリフは現代でも擦られるほどの名言。また、心底楽しみにしている作品以外はあまりネタバレを気にせずむしろ嬉々として踏みに行く自分は、ライブアライブ最大の仕掛けとも言える「真相」も知っていました。
その頃は、どうせ自分じゃプレイしないだろうしなーと思っていましたし。はっきり言うなら、あんまり興味なかったんです。
そんな状態の自分が、リメイク発表記念のトレーラーを見て、心を揺り動かされた。
「オクトパストラベラー」で好評を博したHD-2Dによる、高級感を出しつつもドット絵の温かみを残したリメイク。
確かにドット絵世代の人間なので、HD-2Dの絵面に懐かしさや安心感を覚えました。
けれど、心を動かしたのは、錆びたアンテナが一番反応したのはそこじゃない。
ストーリーを知らなくても熱さが伝わる声優の方々の演技と、トレーラー後半で流れるMEGALOMANIAです。
音楽面については関心が薄く、好きな作品を語る際にはシナリオに重きを置きがちな人間なのですが、MEGALOMANIAだけは聞いてからすぐに「これなんて曲?」と調べるくらいにはびびっと来ました。その過程で知りましたが、ライブアライブは良曲揃いなことでも有名だったんですね……全然知らなんだ……
こうしてライブアライブに興味を持ち、いざ購入して、時間を掛けつつもクリアしました。
何かと忙しく時間がない現代人、時間があっても継続プレイしているソシャゲ等に時間を割かれ、じっくり腰を据えてゲームをする暇はないと嘆く人の多い昨今ですが、オムニバス形式で、一つの編をクリアするにはそこまで時間のかからないライブアライブは、プレイ間隔が空いてしまってもモチベーションを維持しやすくて助かりました。
通しのボリュームで見ると(やり込み要素を抜きにすれば)フルプライスのゲームにしては物足りなさがある、と言われれば確かにと頷いてしまいますが、エンディングまでが長すぎて途中で投げてしまうよりはいいかな、と個人的には思いましたね。
まず、一言で感想を述べると、めっちゃ面白かったです。
良作に触れた後、余韻に浸りながら他の方の感想やらレビューを漁るのが好きなのですが、今回のライブアライブリメイクでもそれを堪能することが出来ました。
前文で書いた通り、自分はゲーム体験にもシナリオ上での感動を求めるタイプで、その点もかなり満たされたのですが、ライブアライブが「面白かった」と感じることができたのはそこだけじゃありませんでした。
これは以前に聖剣伝説3のリメイクをプレイした時にも感じたのですが、SFC時代のゲームシナリオを「キャラクターを深める」ことを重視した現代のゲームに慣れてしまった身で体感すると、どうしても淡白に見えてしまうところがあるんですよね。このイベント、こんなにあっさり流していいの? みたいな。
もちろん、淡白=つまらないということではありません。ただ、もしライブアライブがリメイクではなく、新作として現代に作られていたとしたら、それぞれのシナリオのボリュームやキャラクターのセリフは、倍以上に膨れ上がっていたでしょう。
今は、とにかくキャラクターを好きになってもらうことが、最重要視されていると言っても過言ではないですから。
アンテナが錆付き、アニメも漫画も流し見してしまいがちな自分が、SFC版の原作ライブアライブをプレイしたとしたら。
想像ですが、リメイク版ほどの感動は得られなかったと思うんです。
ストーリーやセリフが今の時代に合わせて大幅加筆されたわけでもないのに、何故リメイク版のほうが感動できたと言えるのか?
その一番の要因は、「声」。
キャラクターたちの息吹を、心を、熱を伝えてくれた、声優さんの方々の演技があったからです。
各編のクライマックスを最高に盛り上げてくれる「声」と「曲」。流し見を絶対に許さない熱量。この場面でMEGALOMANIAが流れて熱くならないヤツなんていねえだろ! そうだろ、松ッ!!
ストーリーの威力を何倍も、何十倍をも高めてくれる「音」の力。これがあってこその感動なのだと、プレイを終えてから時間が経つにつれ、ひしひしと実感しております。
自分で熱を追う気力が衰えてしまった今、画面の向こう側から想像以上の熱を届けてもらいました。
ああ、まだ俺はゲームを好きでいられるんだ……なんて感傷的になってみたり。
今回触れなかったシナリオの内容についても、淡白とは表現しつつも28年前に作られたとは思えないほどの完成度の高さにでした。セリフも、今だからこそ余計に刺さる物も多い……
好きな編を一つ挙げろと言われたら功夫編とSF編で甲乙つけがたい……
switchをお持ちでRPGに飢えている方は、是非プレイしてみてはいかがでしょうか。
普通のRPGとはまた違った体験を得られると思いますよ。
最後に重大なネタバレを含んだ感想なのですが。
真エンディング、sinオディオって追加ボスだったんですね……クリアした後調べて知りました。
選ばなかった3人が助けに来る演出、最後にオルステッドを操作して魔王を討つ演出、あれは原作をプレイしていた人しか味わえない唯一無二の感動があっただろうなぁ……
最初からリメイク版を遊んでよかったと思っていましたが、この点に関してだけはSFC版をプレイしていなかったことを後悔です。