にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 6-2

 ――驚きはした。どうして、どうやって、という疑問も尽きなかった。
 しかし、輝王はそれほど動揺していなかった。
 心の奥底では、「支部内部に裏切り者がいる」という可能性に気付いたのかもしれない。
 だからこそ、友永切の存在を明かさなかった。
 そんな青年の様子に、ジェンスは勿体ぶることもなく、真実を語りだす。
「……セキュリティが、サテライトの治安改善にそれほど力を入れていないことは知っているな? この第17支部は、事実上放置状態だった。ゆえに、書類を改ざんして職員になりすますのに、それほど苦労はなかった。本当の職員は……まあ、真実を話すことはないだろう。ああ、所長だけは本当に治安維持局の人間だ。もっとも、光坂がかけたマインドコントロールによって、俺たちを本当の部下だと信じていたようだったがな」
「――マインドコントロール、だと?」
「詳しい話は本人に訊くんだな。ともかく、この支部を隠れ蓑に、俺たちレボリューションは来るべき日に向けて準備を進めていった」
 マインドコントロールによる、支部の乗っ取り。俄かには信じがたい話だが、ありえないと一蹴することもできなかった。
 シティにいたころ、明らかに洗脳されたとしか思えない加害者に遭遇したこともあるし――アルカディアムーブメント絡みでは、その手の噂が絶えなかった。
「貴様らの目的は、セキュリティ本部の襲撃。及び最高責任者レクス・ゴドウィンの殺害か?」
「その通りだ。この歪な世界を作り出した元凶――やつには、相応の報いを受けてもらう」
 そこで初めて、ジェンスの瞳にわずかな怒りの色が浮かんだ。
「第17支部襲撃は、狼煙だ。これから始まる戦いのな」
 そう言ったジェンスは、左腕に装着されたデュエルディスクを展開させる。
「輝王……お前にはここで死んでもらう。お前を生かしておけば、確実に俺たちの障害になる」
 渋面を浮かべたジェンスは、輝王の実力を認めているからこそ、ここで仕留めると告げた。
「悪いが、貴様の希望には応えてやれない。俺にはまだやることがある」
 デュエルディスクを展開させた輝王は、敵となったかつての同僚に向けて、一歩距離を詰める。
「貴様がレボリューションの一員だというのなら、知っているはずだ。高良火乃という男について」
「……あの男か」
「――ッ!!」
 ついに……ついに、辿り着いた。
 親友を殺した犯人について、重要な情報を持っているだろう人物に。
 その犯人を捜し出し――償わせるのが、輝王がサテライトに来た目的。
「いいだろう。お前がこの窮地を乗り越えられたのなら……高良火乃が死んだ事件の顛末について、俺の知っていることを話そう」
「…………」
 本当だな、とは尋ねなかった。
 大石のように、例え約束をたがえることがあったとしても、輝王には関係ない。
 どんなことをしてでも吐かせる。
「笑っているな、輝王」
 ジェンスに指摘されて初めて、輝王は自分が笑顔を浮かべていることに気付いた。
「だが、それが命取りだ。お前はわずかな真実を噛みしめたまま、ここで死ぬ」
「――俺は死なない」
 目的を果たすまでは――!
 両者が臨戦態勢に入り、まさに戦いの火ぶたが切って落とされようとする瞬間。

「くふ。確かにセイギくんに死んでもらっては困りますねえ……まだ、借りを返していませんから」

 ひどく濁った声が、輝王とジェンスの出鼻をくじくように響いた。
 ジェンスの背後にある扉がゆっくりと開き、紫の髪の男が、薄ら笑いを浮かべながら入ってくる。
「……宇川。なぜ貴様がここにいる」
 ルージュの口紅を光らせた宇川の登場は、どうやらジェンスにとっても予想外だったようだ。
「あらら、ひどいですねジェンスさん。私のことは、織姫と呼んでくれと言ったはずですよ?」
 くふふと気味の悪い笑い声を上げ、宇川は体をくねられる。
「冗談はいい。貴様は、今回の作戦からは外れていたはずだ」
「冗談ではないのですが……くふ、まあいいでしょう。光坂さんから連絡を受けましてね。作戦に一部変更があります」
「変更だと?」
「くふ。そうです」