にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドM 6-3

 事態を静観しつつ、輝王は取るべき行動を考える。
 宇川が言う「作戦の変更」が、自分の身の保障に繋がるとは考えにくい。かといって、このままやつらを逃がすなど論外だ。
 部屋を隔てている強化ガラスは、ちょっとやそっとの衝撃ではびくともしない頑丈なものだ。最も、拘置所の壁に大穴を開けた「物」を使えば、破壊することは可能だろう。
「ったく。光坂の気まぐれにはホント呆れるわ。輝王はともかく、あの裏切り者はなーんもできないと思うけど」
 宇川に続いて入ってきたのは、深紅のショートカットをなびかせた女性――大原竜美だ。
 ジェンスが言った「所長だけは本当の治安維持局の人間」という言葉を信じるなら、彼女もレボリューションのメンバーなのだろう。

 ――そこまで考えた時点で、輝王が気付けなかったのは、彼が復讐に囚われていたからだ。

「ここは宇川に任せて、私とジェンスは友永を探せってさ。レビンの姿も見えないから、たぶん一緒にいるんだろうけど」
 愚痴をこぼしたあと、竜美がちらりと自分の背後に視線を移す。
「……そこの『彼女』はセキュリティ本部襲撃の際に必要なのではなかったのか?」
 それを見たジェンスが何かを尋ねるが、
「事情が変わったんだって。もう用済みらしい」
「……了解した」
 わき上がった闘争心を抑え込むように、ジェンスは乱暴に扉を開け放つと、竜美と共に部屋から出ていく。
「待て!」
 輝王は叫ぶが、この状況では追うことはできない。
 背後の扉は施錠されているし、仮に扉をぶち破れたとしても、今から回りこんでいたのでは到底間に合わない。
「そう焦らないで、セイギくん」
「俺をその名で呼ぶのはやめろ……!!」
 爆発しそうになる怒りを腹の底に溜めながら、輝王は宇川を睨みつける。
「高良火乃の死については、私も知っていますから大丈夫ですよ。彼女とデュエルして勝てたら、教えてさしあげますよ、くふ」
「彼女……?」
 宇川自身がデュエルをするのではないか、という疑問が頭を掠め、勢いを削がれる。
「もういいですよ。入ってきてくださぁい」
 間延びした宇川の声に応えるように、1人の女性がガラスの向こう側に姿を現す。
「なッ――」
 肩まで伸びたブロンドの髪。幼さを残しつつも、整った顔立ち。
「…………」
 その瞳は、焦点が定まっていないかのように虚ろだった。
「さあ、あなたの目的を達成するために、彼女とデュエルしてもらいましょうか。くふ」
 何故、自分は彼女の存在を失念していたのか。
 猛烈な後悔に襲われながら、それでも輝王は目の前に立つ女性を見据える。
「彼女――ストラさんを倒せば、真実を話しましょう」
 宇川の言葉と同時に、ストラがデュエルディスクを展開させる。
「宇川ッ! 貴様……!」

「言ったでしょう? たっぷり利子をつけて返すとね」

 やり場のない怒りが蓄積していく。
「本来なら、光坂さんの手を借りたくなかったんですがねぇ。ま、後輩との命懸けのデュエルっていうのも悪くないと思いまして。くふ」
 くふふ、と小さく笑う宇川の姿は、輝王の感情をどこまでも逆撫でした。