にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

デュエルモンスターズ CrossCode ep-8th プロローグ-19

「私が先攻をもらいますよ。ドロー」
 生木院多栄の存亡をかけたデュエルは、守護者の先攻で幕を開けた。
「……そうですね。まずは『竜王』の弟子のお手並み拝見といきますか。モンスターをセット。カードを1枚伏せてターンエンドです」
 フィールドに現れる2枚の伏せカード。まさに様子見といった布陣だ。
「……僕のターン。ドロー!」
 気合を指先に込めたクロガネは、自分を鼓舞するように腕を大きく振ってカードを引く。
 初手は悪くない。妥協召喚が可能な半上級モンスター<聖刻龍-アセトドラゴン>と<聖刻>と名のついたモンスターを1体リリースすることで特殊召喚できる<聖刻龍-シユウドラゴン>があるため、このターンから大型モンスターを並べることはできなくはない。
(けど、まだ1ターン目だ。相手のデッキも分からないうちから迂闊に動くわけにはいかない)
 常に余裕を残しておきなさい――カードを使いきった挙句に負けてしまうことが多かったクロガネに、多栄が言った忠告だ。ショップ大会の決勝ではその忠告を守ることができずに負けてしまったわけだが、同じ轍を踏むわけにはいかない。
「僕は<アレキサンドライドラゴン>を召喚!」
 クロガネが召喚したのは、昼夜で異なる輝きを見せる宝石、アレキサンドライトを鱗として身に付けたドラゴンだ。効果は持たないが、その代わりに下級モンスターとしては最大級の攻撃力を備えている。

<アレキサンドライドラゴン>
通常モンスター
星4/光属性/ドラゴン族/攻2000/守 100
アレキサンドライトのウロコを持った、非常に珍しいドラゴン。
その美しいウロコは古の王の名を冠し、神秘の象徴とされる。
――それを手にした者は大いなる幸運を既につかんでいる事に気づいていない。

「レベル4のドラゴン族通常モンスター……<聖刻>デッキに採用されてもおかしくはないカードですが、竜王のデッキでは見かけませんでしたね。いいのですか? 弟子であるあなたの独断でそんなカードを投入して」
 守護者の口ぶりからして、クロガネと多栄のあいだに起こった一連の出来事は把握しているのだろう。気配は多栄を拉致する直前まで感じなかったが、言葉通り監視していたのかもしれない。
「……いいか悪いかは、このデュエルの結果が教えてくれます」
「ごもっとも」
 得心したように手を叩く守護者だが、褒められた気は全くしない。むしろ小馬鹿にされた気分だった。
「――バトルフェイズに入ります! <アレキサンドライドラゴン>で伏せモンスターを攻撃!」
 曇天からわずかに差し込む光を受け、鱗を輝かせた<アレキサンドライドラゴン>は、両翼を羽ばたかせて飛翔すると、伏せモンスター目がけて尻尾を振るう。
 アレキサンドライトの鱗に包まれた尻尾で殴打された伏せモンスターが、姿を現すと同時に砕け散る。途端、守護者のフィールドに無数の赤い羽根が舞った。
「これは……!」
 この色の羽根には見覚えがあった。クロガネが初めて守護者と出会い、戦ったときに現れたモンスター――
「<炎王獣 ガルドニクス>の効果を発動しますよ。このカードが相手によって破壊され墓地に送られた場合、デッキから<炎王獣>と名のついたモンスターを特殊召喚できます」

<炎王獣 ガルドニクス>
効果モンスター
星3/炎属性/鳥獣族/攻 700/守1700
自分フィールド上に表側表示で存在する
「炎王」と名のついたモンスターがカードの効果によって破壊された場合、
このカードを手札から特殊召喚できる。
また、このカードが相手によって破壊され墓地へ送られた場合、
デッキから「炎王獣」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。

 破壊されたのは、あの時の巨鳥ではなく、その幼生体とも言うべきモンスターだった。となれば、出てくるモンスターは――炎の巨鳥のプレッシャーを思い出し、嫌が応にも緊張感が高まる。
「ふふ……<炎王獣 ガルドニクス>の効果でリクルートできるのは<炎王獣>だけです。神の名を持つ<炎王神獣>は残念ながら効果の範囲外なのですよ」
 クロガネの考えを見抜いた守護者が、喜色を乗せた声で告げる。
「しかし――すでに神獣を呼ぶ手段は整っています。私は<炎王獣 ヤクシャ>を特殊召喚!」

<炎王獣 ヤクシャ>
効果モンスター
星4/炎属性/獣戦士族/攻1800/守 200
自分フィールド上に表側表示で存在する
「炎王」と名のついたモンスターがカードの効果によって破壊された場合、
このカードを手札から特殊召喚できる。
また、このカードが破壊され墓地へ送られた場合、
自分の手札・フィールド上のカード1枚を選んで破壊できる。
「炎王獣 ヤクシャ」のこの効果は1ターンに1度しか使用できない。

 現れたのは、僧兵と呼ぶにふさわしい出で立ちの獣人だった。手にした長棍の両端は炎に包まれており、悪しき魂を滅する法術師のような神聖さを感じさせる。
「そして、伏せておいた速攻魔法<炎王炎環>を発動!」
 守護者のリバースカードが表になると、<炎王獣 ヤクシャ>の体が炎に包まれる。炎は瞬く間に激しく燃え上がり、中にいるはずの<炎王獣 ヤクシャ>を覆い隠してしまう。
「<炎王炎環>は、フィールド上の炎属性モンスター1体を破壊し、代わりに墓地の炎属性モンスター1体を蘇生するカード。私は<ヤクシャ>を破壊し、墓地の<ガルドニクス>を特殊召喚!」

<炎王炎環>
速攻魔法
自分のフィールド上及び自分の墓地の
炎属性モンスターを1体ずつ選択して発動できる。
選択した自分フィールド上のモンスターを破壊し、
選択した墓地のモンスターを特殊召喚する。
「炎王炎環」は1ターンに1枚しか発動できない

 炎が火柱を生み出したかと思うと、急速に勢いを弱め、ふっと消えてしまう。すると、先程までフィールドにいたはずの<炎王獣 ヤクシャ>の姿は消え、代わりに<炎王獣 ガルドニクス>が守備表示で特殊召喚されていた。
「これは一体……」
 わざわざリクルートした<炎王獣 ヤクシャ>を破壊し、<炎王獣 ガルドニクス>を戻した理由は何か。クロガネが答えに辿りつく前に、結果が訪れる。
「破壊されたことにより<ヤクシャ>の効果が発動します。このカードが破壊され墓地に送られた場合、自分の手札かフィールド上のカードを1枚選んで破壊できます。私は手札の<炎王神獣 ガルドニクス>を破壊!」
「なっ……! 手札のカードを破壊!?」
 守護者の手札の1枚が爆発し、墓地に送られる。破壊効果を持つカードは数多く存在すれど、その効果が手札にまで及ぶものは初めて見た。
「さて、私のカードの処理はこれで終わりです。どうぞ、貴方のターンを続けてください」
「……カードを1枚伏せます。ターンエンドです」
 このターンはクロガネのものだったはずなのに、守護者に乗っ取られてしまったかのような敗北感。それを拭うことができないまま、クロガネはターンを終えた。

【守護者LP4000】 手札3枚
場:炎王獣 ガルドニクス(守備)
【クロガネLP4000】 手札4枚
場:アレキサンドライドラゴン(攻撃)、伏せ1枚

「私のターンですね。ドロー……スタンバイフェイズに墓地の<炎王神獣 ガルドニクス>の効果が発動します!」
 守護者が高らかに宣言すると、フィールド全体が真っ赤な炎に包まれる。かろうじて範囲外に立っているクロガネは、飛んできた火の粉に熱量を感じる。それほどまでにリアリティのある立体映像なのか、それとも本当に実体化させているのか。
「さあ! 万物を燃やす炎を纏い、戦場を焦土に変えなさい! <炎王神獣 ガルドニクス>を特殊召喚!」
 フィールドを包んだ炎から、いくつも火柱が上がる。炎の沼からせり上がるようにゆっくりと姿を現すのは、鮮烈な赤の羽を広げる巨鳥。クロガネの記憶に焼きついた物と同じ姿――<炎王神獣 ガルドニクス>。

<炎王神獣 ガルドニクス>
効果モンスター
星8/炎属性/鳥獣族/攻2700/守1700
このカードがカードの効果によって破壊され墓地へ送られた場合、
次のスタンバイフェイズ時にこのカードを墓地から特殊召喚する。
この効果で特殊召喚に成功した時、
このカード以外のフィールド上のモンスターを全て破壊する。
また、このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、
デッキから「炎王神獣 ガルドニクス」以外の
「炎王」と名のついたモンスター1体を特殊召喚できる。

「<炎王神獣 ガルドニクス>が自身の効果で特殊召喚に成功したとき、このカード以外のモンスターを全て破壊します」
「…………ッ!?」
「戦場の命は余さず神獣への供物なのですよ。昇炎煉獄陣!」
 <炎王神獣 ガルドニクス>の甲高い鳴き声を合図に、<アレキサンドライドラゴン>と<炎王獣 ガルドニクス>の足元から炎が間欠泉のように噴き上がり、その体を瞬時に焦がし尽くす。
「自分のモンスターまで……」
「神獣の大きすぎる力を使うのです。多少の犠牲はやむなしでしょう」
 クロガネに守護者の姿勢を糾弾する権利はない。何故なら、彼の使う<聖刻>もまた、仲間の命を解放することによって効果を発揮するモンスター群だからだ。