にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王オリジナルstage 【ep-04 サイドS】

「オレが先攻ヲもらう。ドロー」
 麻袋を被っているせいで、相手の表情は見えない。
 だが、それ以上に目の前の男は、言い様のない奇怪さを醸し出していた。
 人であるのに、人ではない。そんな異質さ。
 まさか、本当に中身は化け物なのだろうか。
「モンスターヲセット。カードヲ2枚セットして、ターンエンドダ」
 そんな異質さとは裏腹に、先行初ターンとしては堅実なプレイングをしてくる。

【ローブ男LP4000】 手札3枚
場:裏守備モンスター、伏せ2枚
【創志LP4000】 手札5枚
場:なし

「俺のターン!」
 相手が守勢に回るなら、こちらは初ターンから飛ばしていきたいところだったが……
(アタッカーがいねえな)
 手札にある下級モンスターは、どれもアタッカーとしては攻撃力が心許ないものばかり。
(まずはシンクロしてからだな)
 幸い、リカバリーのためのカードは豊富だ。このターンは、シンクロモンスターを呼び出すための下準備をしておくことにする。
「モンスターをセット。カードを1枚伏せて……永続魔法<マシン・デベロッパー>を発動!」

<マシン・デベロッパー>
永続魔法
フィールド上に表側表示で存在する
機械族モンスターの攻撃力は200ポイントアップする。
フィールド上に存在する機械族モンスターが破壊される度に、
このカードにジャンクカウンターを2つ置く。
このカードを墓地へ送る事で、このカードに乗っている
ジャンクカウンターの数以下のレベルを持つ
機械族モンスター1体を自分の墓地から選択して特殊召喚する。

「<マシン・デベロッパー>……ということは、創志さんのデッキは機械族が主軸のデッキですか」
「機械族、ってことは、やっぱり合体するんでしょうか」
「ふふ、それは見てのお楽しみじゃ!」
 ……何か勝手にハードルを上げられている気がする。
「ターンエンドだ」
 ギャラリーの声が聞こえないフリをして、創志はターンを終了した。

【ローブ男LP4000】 手札3枚
場:裏守備モンスター、伏せ2枚
【創志LP4000】 手札3枚
場:裏守備モンスター、マシン・デベロッパー、伏せ1枚

「デハ、俺のターンダ。ドロー!」
 ローブの男が、空気を裂くように鋭くカードをドローする。
 直後。
 創志の全身に、ぞわり、と背筋が凍るような怖気が圧し掛かる。
「――ッ!?」
 麻袋の仮面の下にある顔が、邪悪な笑みに歪んだような錯覚を覚える。
 何か仕掛けてくる。創志の直感がそう訴えてきた。
「オレハ<シャインエンジェル>を召喚」
 ローブの男が呼びだしたのは、白い翼を生やした光の天使。比較的使われることの多いモンスターなので、創志も既知のカードだ。戦闘で破壊された時、攻撃力1500以下の光属性モンスターをリクルートする効果を持つ。

<シャインエンジェル>
効果モンスター
星4/光属性/天使族/攻1400/守 800
このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時、自分のデッキから攻撃力1500以下の
光属性モンスター1体を自分フィールド上に表側攻撃表示で特殊召喚する事ができる。

(俺の伏せモンスターは<A・ジェネクス・リモート>。守備力は1800だ。<シャインエンジェル>じゃ倒せねえけど……)
 このまま攻撃を仕掛けてくるとは思えない。
 そして、その考えは正しかった。
「……セットモンスターを反転召喚。<幻想召喚師>のリバース効果発動」
「<幻想召喚師>?」
 裏守備モンスターがリバースする。姿を現したのは、橙色の法衣を身に纏った僧侶だ。
「このカード以外のモンスター1体をリリースし、融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚すル」

<幻想召喚師>
効果モンスター
星3/光属性/魔法使い族/攻 800/守 900
リバース:このカード以外のモンスター1体をリリースし、
融合モンスター1体をエクストラデッキから特殊召喚する。
この効果で特殊召喚した融合モンスターはエンドフェイズ時に破壊される。

 <幻想召喚師>は手にしていた書物を開くと、両目を伏せて呪文を唱え始める。
 すると、<シャインエンジェル>の姿が光に包まれ、消える。
「<融合>を使わずに融合モンスターを召喚じゃと……!? こんなカードがあったとは」
「気をつけてください創志君! 来ます!」
 かづなに言われるまでもなく、創志の嗅覚は危険な臭いを感じ取っていた。
 <シャインエンジェル>を消した光がローブの男のエクストラデッキへと集い、1枚のカードを差し示す。ローブの男はそのカードを手に取ると、ディスクへ叩きつけるようにセットした。

「現れロ……! <重爆撃禽ボム・フェネクス>!」

 土の壁に囲まれたフィールドに、炎の渦が巻き起こる。
 瞬く間に熱気が辺りにたちこめ、創志の体から汗が吹き出す。その汗は、熱さによるものだけではない。
 炎の翼を広げる不死鳥――その胴体には、重厚な鎧を纏った悪魔の姿がある。
 <重爆撃禽ボム・フェネクス>。
 現れたモンスターから発せられる強大なプレッシャーが、創志に冷や汗を流させていた。

<重爆撃禽 ボム・フェネクス>
融合・効果モンスター
星8/炎属性/炎族/攻2800/守2300
機械族モンスター+炎族モンスター
自分のメインフェイズ時、フィールド上に存在するカード1枚につき
300ポイントダメージを相手ライフに与える事ができる。
この効果を発動するターンこのカードは攻撃する事ができない。
この効果は1ターンに1度しか使用できない。

(この威圧感……立体映像のものじゃない。野郎、サイコパワーを使ってモンスターを実体化させてやがるのか?)
 創志が考えを巡らすと同時、
「――創志さん! すぐに僕と代わってください!」
 表情を一変させた純也が、焦燥感に溢れた叫び声を上げる。まるで、何か大変なことに気付いたかのような声だ。
「そいつ、ペインです! 普通の人が相手にするには危険すぎる!!」
「ペイン?」
 聞いたことのない単語だ。
 なのに、純也は創志の呑み込みの悪さを責めるかのように、苛立ちを顕わにする。
「ペインを知らないんですか!? テレビのニュースやネットを見てれば、知ってて当たり前の存在でしょう? もしかして、世間から隔離されたド田舎に住んでた人なんですか?」
「違えよ!」
 別にド田舎が嫌いなわけではないが、今の発言は創志を馬鹿にしたような意味合いが込められていたので、即座に否定する。
「わしも聞いたことがないのう。ペインとは何なのじゃ?」
「……サイコデュエリストは分かりますか? ペインっていうのは、そのサイコデュエリストが変異した形です。力が増幅される代わりに、自我を失ってしまい、無差別に人を襲うようになる。そして、二度と元には戻れません」
 呆れる純也の代わりに、かづなが説明をしてくれる。
「普通の人がペインとデュエルしてダメージを受けると、それだけで命を落としてしまうこともあります。だから、何の力も持たない人がペインとデュエルするときには、無傷で勝つしかないんです」
 私みたいに、とかづなは自嘲気味につけ加えた。
「これで分かったでしょう? ペインがどれほど危険なのかを。サイコデュエリストである僕なら、ペインからのダメージを多少軽減できます。だから――」
「……大体分かった。けど、俺はデュエルをやめる気はねえ」
 「どうしてです!?」と困惑する純也を尻目に、創志は首元のチョーカーへと手を伸ばした。
(……こいつを使うのは久しぶりだな)
 カチリ、と小気味よい音を立ててスイッチがONに切り替わる。
「俺もサイコデュエリストの端くれだ! それに、痛みにビビって引き下がるなんて、カッコ悪すぎだろうが!」