にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドS 3-10

「次はわたしのターンだねっ! ドロー!」
 鼻歌でも歌いだしそうなほど上機嫌な様子の虎子が、楽しそうにカードをドローする。
「どの子で行こうかな~」
 口に出しながら、虎子は自分の手札をきょろきょろと眺めている。
「……うん! アニキの場には<マンティス>がいるし、わたしはこの子をセットするよ。そしてカードを2枚伏せて、ターンエンド」
 虎子の場に裏守備モンスター1体と2枚の伏せカードが現れる。
「……そっちも壁モンスター出してるじゃない。つまんないわ。もっとガンガン来なさいよ」
 ほんの数分前に紫音のプレイングを批判した張本人が全く同じ手を取ってきたため、隆司の言葉を真似て嘲る。
「1ターン目は攻撃できないのに、何言ってるんだろうあのもじゃもじゃ」
「言うな、虎子。きっと頭がかわいそうなんだよ」
「…………マジでぶん殴ってやろうかな」
 双子からの憐みの視線に、紫音は怒りで体を震わせる。思えば、情報屋であるセラもムカつく言動が多かったが、この双子はそれ以上だ。人を苛立たせる才能だけは一級品だと思う。
「いらない労力は使うな。あいつらには何を言っても無駄だから」
「できればそれはこのデュエルが始まる前に教えてほしかったわね」
「そりゃ悪かった」
 と言いつつも全然悪びれていない朧の様子にため息を吐きつつ、紫音は双子のフィールドに視線を移す。
 朧曰く「タッグデュエルを前提としたデッキ」。虎子がどんなモンスターを伏せたのかは不明だが、隆司の<ナチュル・マンティス>と相性のいいカードに違いない。
 朧は双子のデッキ内容を知っているようだが、話す気はないらしい。もちろん紫音も教えてもらいたいとは思わない。ただでさえハンデをもらっているのに、相手が「負けたときの言い訳」を増やすアドバンテージは不要だ。

【朧・紫音LP4000】
朧:手札6枚
場:ヴァイロン・デルタ(守備)
紫音:手札3枚
場:裏守備モンスター、伏せ2枚

【隆司・虎子LP4000】
隆司:手札3枚
場:ナチュル・マンティス(攻撃)、伏せ2枚
虎子:手札3枚
場:裏守備モンスター、伏せ2枚

「俺のターンだな。ドロー!」
 朧がデッキからカードを引く。このターンからバトルを行うことが可能だ。
「まずこっちから仕掛けさせてもらう! 魔法カード<シンクロキャンセル>を発動。<ヴァイロン・デルタ>をエクストラデッキに戻し、<デルタ>のシンクロ召喚に使用したモンスター1組を墓地から特殊召喚する!」

<シンクロキャンセル>
通常魔法
フィールド上に表側表示で存在するシンクロモンスター1体をエクストラデッキに戻す。
さらに、エクストラデッキに戻したこのモンスターのシンクロ召喚に使用した
モンスター一組が自分の墓地に揃っていれば、
この一組を自分フィールド上に特殊召喚する事ができる。

 <ヴァイロン・デルタ>の体が光の粒子に包まれて消えると、墓地から<ヴァイロン・ヘキサ>と<ヴァイロン・キューブ>が朧のフィールドに特殊召喚される。通常召喚のみに適応される<ナチュル・マンティス>の効果は発動できない。
「そして、もう一度<ヘキサ>に<キューブ>をチューニングだ」
 再びのシンクロ召喚。呼び出すモンスターは、当然<ヴァイロン・デルタ>ではない。
「遥か天上の観測者! 慈悲ある裁きにて、悪意を浄化しろ! シンクロ召喚……律せよ! <ヴァイロン・シグマ>!」
 現れたのは、紫音とのデュエルでも姿を見せたΣ型のボディを持つ機械天使だ。<ヴァイロン・デルタ>とは真逆の、類稀なる攻撃性能を持ったモンスター。

<ヴァイロン・シグマ>
シンクロ・効果モンスター
星7/光属性/天使族/攻1800/守1000
光属性チューナー+チューナー以外の光属性モンスター1体以上
自分フィールド上にこのカード以外のモンスターが存在しない場合、
このカードの攻撃宣言時に発動する事ができる。
自分のデッキから装備魔法カード1枚を選択し、このカードに装備する。

「<キューブ>の効果で<魔導師の力>を手札に加えるぜ。加えた<魔導師の力>と<ヴァイロン・コンポーネント>を<シグマ>に装備!」
 <ヴァイロン・シグマ>の両手に、円の両側にある金色の装飾から、刺突用のクリスタルが伸びている白のリングが装着される。

<魔導師の力>
装備魔法
装備モンスターの攻撃力・守備力は、
自分フィールド上に存在する魔法・罠カード1枚につき
500ポイントアップする。

<ヴァイロン・コンポーネント>
装備魔法
「ヴァイロン」と名のついたモンスターにのみ装備可能。
装備モンスターが守備表示モンスターを攻撃した時、
その守備力を攻撃力が超えていれば、
その数値だけ相手ライフに戦闘ダメージを与える。
フィールド上に表側表示で存在するこのカードが墓地へ送られた場合、
デッキから「ヴァイロン」と名のついた魔法カード1枚を手札に加える事ができる。

 <ヴァイロン・コンポーネント>を装備したモンスターは、貫通効果を得る。加えて、<魔導師の力>により<ヴァイロン・シグマ>の攻守の値は1000ポイント上昇し、それぞれ2800と2000になった。
 だが、双子のフィールドにはそれぞれ伏せカードが2枚ある。迂闊な攻撃は危険だが――
「バトルだ。<シグマ>で<ナチュル・マンティス>を攻撃!」
(……ま、攻めなきゃ始まらないよね)
 攻撃に踏み切った朧を、紫音は止めない。
「<ヴァイロン・シグマ>の効果発動! 攻撃宣言時、自分のデッキから装備魔法1枚を選択し、このカードを装備する! 俺は<アームド・チェンジャー>を選択!」

<アームド・チェンジャー>
装備魔法
自分の手札から装備魔法カード1枚を墓地に送って発動する。
装備モンスターが戦闘によってモンスターを破壊した場合、
装備カードのコントローラーは自分の墓地から
装備モンスターの攻撃力以下のモンスター1体を手札に加える事ができる。

「けっ! なかなかしたたかな手を使ってくるじゃねえか!」
 攻撃の矛先を向けられた隆司が毒づく。本来なら<アームド・チェンジャー>は手札から装備魔法カードを1枚墓地に送らなければ装備できないカードだが、<ヴァイロン・シグマ>ならそのコストを踏み倒すことができる。さらに、<魔導師の力>による攻撃力・守備力の上昇ポイントが強化され、<ヴァイロン・シグマ>の攻撃力・守備力は3300・2500まで引き上げられる。
フォトン・スピア!」
 刺突用のクリスタルから、紅色の光の槍が放たれる。その数は、計4本。
 光の槍は寸分の狂いなく標的を捉え、「きゅい~」という庇護欲をそそる鳴き声を響かせながら、<ナチュル・マンティス>が粉々に砕け散る。その残酷な光景に、紫音の心がチクリと痛む。……あとで本当にぬいぐるみが売っているか調べておこう。
 ともあれ、攻撃は通った。相手にとっては手痛すぎるであろう先制ダメージを与えられたはずだ。
 しかし、隆司は余裕たっぷりの笑みを浮かべている。
「ざ~んね~んでした! 罠カード<レインボー・ライフ>を発動してたんだぜ! このカードの効果で、今の戦闘で発生したダメージ……1600ポイントを回復するぜ! あ、ちゃんと手札は捨てたからな!」

<レインボー・ライフ>
通常罠
手札を1枚捨てる。
このターンのエンドフェイズ時まで、自分が受けるダメージは無効になり、
その数値分ライフポイントを回復する。

【隆司・虎子LP4000→5600】

 そう言って、隆司は勝ち誇ったように胸を張る。
「さすがだねアニキ! しこしこと<ヴァイロン・シグマ>の攻撃力上げてた朧は涙目だね!」
 兄のプレイングを褒め讃えるように拍手する虎子。確かに、<レインボー・ライフ>を発動されたことで<ヴァイロン・シグマ>の高い攻撃力が裏目に出てしまった。
 ブチリ、と。
 額に青筋を浮かべた朧から、何やら不穏な音が響いた。
「……たった1回攻撃防いだくらいで、いい気になってんじゃねえぞクソガキ共。1600ぽっちライフ回復したところで、無意味ってこと教えてやるよコラ」
 紫音自身も怒り心頭だったためすっかり忘れていたが――
 朧は、簡単に挑発に乗ってしまう人間だったのだ。
 完全に目が据わっており、舌打ちを連発するその姿はどう見ても漫画やアニメに出てくるような不良のそれだ。
「<ナチュル・マンティス>を破壊したことには変わりねえ。<アームド・チェンジャー>の効果発動だ。<シグマ>の攻撃力以下のモンスター……<ヴァイロン・ヘキサ>を墓地から回収する。ターンエンドだコラァ!!」
 ターンエンド宣言にかこつけて、双子を恫喝する朧。相当鬱憤が溜まっていたようだ。
 対し、虎子の方はビクリと体を震わせたが、
「へん! 怒鳴ったって怖くねえっての! 昔の俺たちとは違うからな!」
 隆司の方は全く堪えていないようだった。

【朧・紫音LP4000】
朧:手札6枚
場:ヴァイロン・シグマ(攻撃:魔導師の力、アームド・チェンジャー、ヴァイロン・コンポーネント装備)
紫音:3枚
場:裏守備モンスター、伏せ2枚

【隆司・虎子LP5600】
隆司:手札2枚
場:伏せ1枚
虎子:手札3枚
場:裏守備モンスター、伏せ2枚