にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage2 サイドM 3-13

「正義の味方、だと?」
「『自称』な。一度は引退したんだが、命知らずのブラコン野郎に触発されてな。近頃はまたカッコつけさせてもらってる」
 アレクの放つプレッシャーにひるむことなく、冗談めかした口調で話す男が、ミハエルの前に姿を現す。
 白のYシャツに黒のベストとスラックス。赤いラインの入った中折れ帽を被った男――神楽屋輝彦は、甲冑の騎士<ジェムナイト・マディラ>の隣に立つ。
 同時、乱入者に対し強い警戒心を示したアレクが、後方へ跳んで距離を取る。
「なるほど……あの朱野天羽が他人を頼るなんて明日は槍でも降るんじゃないかと思ってたが、<ストラクチャー>使いが相手だったか。無理もないな」
 天羽が他人を頼る……?
 言葉の意味は分からないが、どうやら神楽屋と天羽は知り合いのようだ。
「『清浄の地』、か。ハッ、どうやら思ってた以上に厄介な連中らしい」
「テメエ……」
「どうする? これ以上やるって言うんなら、俺が相手になる。ちなみに、お前のお仲間さんは尻尾を巻いてトンズラこいたみたいだけどな」
「――何?」
「嘘だと思うなら確かめてみればいい」
 神楽屋の言葉に促されるように、アレクはジーンズのポケットへと手を伸ばすが、やめる。手にしていた大剣を乱暴に放り投げると、剣は光の屑となって消えた。
「白けちまったから今日はやめだ」
 つまらなそうに言うアレクからは、怒りの色が消え失せている。そのままミハエルに背を向けると、倉庫のほうへ向かって歩き出す。
「――ッ」
 その方向を見て神楽屋が後を追おうとするが、
「安心しろ。あの女には手を出さねえよ。向こうの出口から帰るだけだ」
 アレクがぶっきらぼうに告げる。つまり、天羽はまだあの倉庫の中にいるということか。
 赤髪の男の背中が遠ざかっていく。
 その姿を、ミハエルは直視することができない。

「二度と俺の前に現れるな。腑抜け」

 アレクの容赦ない一言が、ミハエルの胸に突き刺さった。
「行ってくれたか……ったく、俺に<ストラクチャー>使いの相手は荷が重すぎるっての」
 膝をつかずに立っていられるのが不思議なくらいの虚無感が、ミハエルの全身を満たしていく。
「……こりゃこっちも重傷だな」
 神楽屋は中折れ帽を深く被り、表情が見えないようにしてから、
「悪いが、挨拶は後回しだ。天羽を病院に連れていきたいんだが、手伝ってくれるか?」
 ミハエルの肩を叩き、落ち着いた声で言葉を紡ぐ。
「いい医者を知ってるんだ。とびきりの名医をな」