遊戯王 New stage 番外編 ラスト・ドライブ―10
ポタリ、と雫が落ちる音が聞こえ、切は目を覚ました。
「ここは……」
両目を開くと同時、すぐに違和感に気付く。
切の両手は上に持ち上げられた状態で、鉄柱に鎖で繋がれていて、自由に動かすことはできない。繋がれているのは両手だけだが、嗅がされた薬品のせいか体に力が入らない。
視線を動かす。どうやらここは廃棄された町工場のようだ。何に使うかは分からないが、錆びた機械が所狭しと並んでいる。
切が縛られているのは2階部分で、背の低いフェンス越しに1階の様子が一望できる。
「お目覚めのようだな」
すぐ隣から野太い男の声が聞こえてくる。
見れば、短い金髪をオールバックにした目つきの鋭い男が、鉄製の椅子に腰かけている。男が来ている白いパーカーの右胸には、花びらを模したマークがあった。
「城蘭……」
「察しがいいな。俺がリーダーの城里蘭(しろさとらん)だ。このあいだは猿水が世話になったな」
名前の挙がった猿水は、1階の入り口付近にいる。他にも、錆びた機械に器用に腰かけている白いパーカーの人影が見える。ここから数えるだけでも20人はいそうだ。
「私をどうする気?」
強い口調で言ったつもりだったが、思っていたほど声に張りはなかった。
「猿水から聞いているだろう? 俺たちは『バーシャナ』を潰したレボリューションを絶対に許さない。まずは、仲間を……友が傷つけられる痛みを教えてやる」
階下の仲間たちに聞こえるように、城里は大声で告げる。
「殺しはしない。死んだ方がマシだと思うことをするだけだ」
城里の言葉に、切の全身に怖気が走る。
サテライトという土地で暮らしている以上、こんな事態になることを覚悟はしていた。それでも、体の震えを止めることはできなかった。
城里が、階下にいる数人に「上がってこい」と手で合図をする。
階段を上って切の前に姿を見せた男たちは、まるで飢えた野獣だった。
「へへ……」
「ひひひ……」
下品な笑い声が響く。
切の豊満な胸を、肉付きの良い太ももを、美麗な顔を、舐めるような視線が這いずりまわる。その視線だけで、犯されているような気分になった。
「あ……や……」
悲鳴を上げないようにするのが精一杯だった。必死にもがいて両手の戒めを解こうとしても、鎖はビクともしない。
恐怖に耐えかね、両目をつぶった。
だからだろうか。
「ここは……」
両目を開くと同時、すぐに違和感に気付く。
切の両手は上に持ち上げられた状態で、鉄柱に鎖で繋がれていて、自由に動かすことはできない。繋がれているのは両手だけだが、嗅がされた薬品のせいか体に力が入らない。
視線を動かす。どうやらここは廃棄された町工場のようだ。何に使うかは分からないが、錆びた機械が所狭しと並んでいる。
切が縛られているのは2階部分で、背の低いフェンス越しに1階の様子が一望できる。
「お目覚めのようだな」
すぐ隣から野太い男の声が聞こえてくる。
見れば、短い金髪をオールバックにした目つきの鋭い男が、鉄製の椅子に腰かけている。男が来ている白いパーカーの右胸には、花びらを模したマークがあった。
「城蘭……」
「察しがいいな。俺がリーダーの城里蘭(しろさとらん)だ。このあいだは猿水が世話になったな」
名前の挙がった猿水は、1階の入り口付近にいる。他にも、錆びた機械に器用に腰かけている白いパーカーの人影が見える。ここから数えるだけでも20人はいそうだ。
「私をどうする気?」
強い口調で言ったつもりだったが、思っていたほど声に張りはなかった。
「猿水から聞いているだろう? 俺たちは『バーシャナ』を潰したレボリューションを絶対に許さない。まずは、仲間を……友が傷つけられる痛みを教えてやる」
階下の仲間たちに聞こえるように、城里は大声で告げる。
「殺しはしない。死んだ方がマシだと思うことをするだけだ」
城里の言葉に、切の全身に怖気が走る。
サテライトという土地で暮らしている以上、こんな事態になることを覚悟はしていた。それでも、体の震えを止めることはできなかった。
城里が、階下にいる数人に「上がってこい」と手で合図をする。
階段を上って切の前に姿を見せた男たちは、まるで飢えた野獣だった。
「へへ……」
「ひひひ……」
下品な笑い声が響く。
切の豊満な胸を、肉付きの良い太ももを、美麗な顔を、舐めるような視線が這いずりまわる。その視線だけで、犯されているような気分になった。
「あ……や……」
悲鳴を上げないようにするのが精一杯だった。必死にもがいて両手の戒めを解こうとしても、鎖はビクともしない。
恐怖に耐えかね、両目をつぶった。
だからだろうか。
ガコォン!! と。
壁を叩きつける轟音が、やけに大きく聞こえたのは。
「何だ――?」
音の発生源は、工場の入り口からだった。
切を襲おうとしていた者たちを含め、城蘭のメンバーが一斉に入口に目を向ける。
そこにいたのは、1人の青年だった。
くたびれたスーツを着ていて、ところどころ髪が跳ねていて。
左腕には、デュエルディスクを身につけて。
全身に怒りを漲らせて――
「何だ――?」
音の発生源は、工場の入り口からだった。
切を襲おうとしていた者たちを含め、城蘭のメンバーが一斉に入口に目を向ける。
そこにいたのは、1人の青年だった。
くたびれたスーツを着ていて、ところどころ髪が跳ねていて。
左腕には、デュエルディスクを身につけて。
全身に怒りを漲らせて――
「――人の女に手を出してんじゃねぇぞッ!! クズ野郎共ッ!!!」
高良火乃は、叫んだ。