にわかオタクの雑記帳

にわかオタクがそのときハマっていることを書き殴るブログです 主にアニメ・ゲーム中心

遊戯王 New stage サイドT 7

「――ほら、アンタのターンよ。早くカードを引きなさい」
 竜美の言葉によって、ティトはデュエルが終わっていなかったことに気付いた。
「…………」
 無言のまま、カードをドローする。
 引いたカードは<貪欲な壺>。墓地のモンスターカードを5枚デッキに戻し、新たに2枚のカードを引く魔法カードだ。逆転のきっかけを掴むためには、最良のカード。

<貪欲な壺>
通常魔法
自分の墓地に存在するモンスター5体を選択し、
デッキに加えてシャッフルする。
その後、自分のデッキからカードを2枚ドローする。

 だが、ティトに戦いを続ける気力は残されていなかった。
 もし、彼女が「サレンダー」という行為を知っていたのなら、迷わず降参していただろう。
 勝てない。
 <ジュラック・タイタン>を攻略する術はない。
 仮に勝てたとしても――

 もう、少年は戻ってこない。

「無様ね」
 そんなティトの心中を見透かしたように、竜美が嘲りの言葉を口にする。
「結局アンタは、他人から与えてもらったことしかできない。『処刑人』だって、レビンが与えてくれた役目……自分1人の力では何もできないのよ」
 辛辣な真実が、ティトの壊れた心をさらに砕いていく。
 1人でも大丈夫だと思っていた。
 「処刑人」に戻れば。「氷の魔女」に戻れば。1人でも戦えると思っていた。
 ずっと1人で生きてきたのだから。

 ――しかし、ティトは知ってしまった。

 少年の優しさを。
 少年の温もりを。
 少年と共にいる心地よさを。
 それを知ってしまった以上――ティトは「氷の魔女」に戻ることなど出来ない。
 今のティトは、ただの女の子だった。
「……わたしのターンは終わり」

【ティトLP800】 手札1枚
場:ウォーターハザード、リミット・リバース(使用済み)
【竜美LP2400】 手札3枚
場:ジュラック・タイタン(攻撃)、大進化薬

「むかつくわ。はらわたが煮えくりかえりそう」
 竜美は、最早ティトを見ていない。
「これじゃ輝王を指名していたほうがマシだったわ。途中まではいい感じだったのに……やっぱり、アンタは特別扱いの『お嬢様』だったわけね。『氷の魔女』が聞いて呆れるわ」
 憤慨する竜美は、八つ当たりするように<ジュラック・タイタン>を殴りつける。
 へたり、とティトが尻もちをつく。
 竜美に向けていた敵意はどこへやら、何かを呟きながら顔を伏せる。
「もういいわ。死になさい、グズ」
 <ジュラック・タイタン>の口から、再び火球が吐き出される。
 少女を守る氷の龍は、もういない。
 ――1週間前。支部の前で泣いたのを最後に、ティトはずっと涙をこらえてきた。

「そうし……」

 こらえてきた涙が溢れる。
 少女の顔が涙でぐしゃぐしゃになる。
 そして――

【ティトLP800→0】

 少女の孤独な世界は終わりを告げた。