遊戯王 New stage サイドT 5
「<氷結界の龍グングニール>……話には聞いていたけど、実際にこの目で見られるときが来るとわね」
呟いた内容とは裏腹に、竜美の瞳は余裕を失っていない。
現在、ティトの手札は2枚。手札を捨てることで相手フィールド上のカードを破壊できる「タービュランス」の対象に選ぶのは……1枚は<ジュラック・ギガノト>で確定だ。
<ジュラック・ヴェロー>は表側攻撃表示で戦闘破壊されたとき、デッキから攻撃力1700以下の<ジュラック>をリクルート出来る効果を持つ。竜美のデッキの中には、<氷結界の龍グングニール>に対抗できるモンスターが眠っているのだろうか。
だが、伏せカードも気になる。このデュエルで初めての伏せカード。強力なカードである可能性は高い。
――臆しちゃ、ダメ。
ティトは少年の姿を思い出す。
ティトの<氷結界の龍グングニール>に対しても、セラの<マスタージーグ>に対しても、輝王の<AOJ>に対しても、少年は自分の力を信じて立ち向かっていた。
自分が、少年の代わりに果たさなければならない目的。
彼の弟を救いだす。そのためにも、ここで立ち止まっているわけにはいかない。
信二を救いだし、そして――
「……どうしたの?」
突然、竜美が疑問の声をかけてくる。
その言葉の意図が分からずティトは混乱するが、
呟いた内容とは裏腹に、竜美の瞳は余裕を失っていない。
現在、ティトの手札は2枚。手札を捨てることで相手フィールド上のカードを破壊できる「タービュランス」の対象に選ぶのは……1枚は<ジュラック・ギガノト>で確定だ。
<ジュラック・ヴェロー>は表側攻撃表示で戦闘破壊されたとき、デッキから攻撃力1700以下の<ジュラック>をリクルート出来る効果を持つ。竜美のデッキの中には、<氷結界の龍グングニール>に対抗できるモンスターが眠っているのだろうか。
だが、伏せカードも気になる。このデュエルで初めての伏せカード。強力なカードである可能性は高い。
――臆しちゃ、ダメ。
ティトは少年の姿を思い出す。
ティトの<氷結界の龍グングニール>に対しても、セラの<マスタージーグ>に対しても、輝王の<AOJ>に対しても、少年は自分の力を信じて立ち向かっていた。
自分が、少年の代わりに果たさなければならない目的。
彼の弟を救いだす。そのためにも、ここで立ち止まっているわけにはいかない。
信二を救いだし、そして――
「……どうしたの?」
突然、竜美が疑問の声をかけてくる。
その言葉の意図が分からずティトは混乱するが、
「震えてるわよ」
カードを取ろうとしていた右手が、小刻みに震えているのに気付く。
「え……?」
右手だけではない。デュエルディスクを構える左腕も、地面を踏み締める両足も、何かに脅えるように震えていた。
どうして自分の体が震えているのか分からず、ティトは困惑する。
「情けないわね、氷の魔女。負けるのが怖いのかしら?」
違う、と否定したかったが、ティトの口は動かない。
竜美の言うとおり、敗北を恐れているのだろうか。それとも、デュエルの疲労が急に出てきたのだろうか。
「…………」
気持ちを改めるためにふるふると首を振り、自らを奮い立たせるティト。
「え……?」
右手だけではない。デュエルディスクを構える左腕も、地面を踏み締める両足も、何かに脅えるように震えていた。
どうして自分の体が震えているのか分からず、ティトは困惑する。
「情けないわね、氷の魔女。負けるのが怖いのかしら?」
違う、と否定したかったが、ティトの口は動かない。
竜美の言うとおり、敗北を恐れているのだろうか。それとも、デュエルの疲労が急に出てきたのだろうか。
「…………」
気持ちを改めるためにふるふると首を振り、自らを奮い立たせるティト。
――この時点で、すでに少女は気付いていた。
しかし、目を背けた。そうしないと、自分は戦い続けられなかったから。
「氷の魔女」でいられなくなってしまうから。
「氷の魔女」でいられなくなってしまうから。
皆本信二を救いだしたとしても、少年が戻ってくるわけではない。
支えを失い、折れそうになっていた銀色の少女は、仮の目的にすがりついただけだった。
少年が果たせなかった思いを、自分が代わりに果たそうと。
その思いを果たしたところで、少女に残るものは何もないというのに。
「……<グングニール>の効果発動。手札を2枚捨てて、<ジュラック・ギガノト>と伏せカードを破壊する。タービュランス!」
<ジュラック・ギガノト>の周囲に氷の屑が集まり、カキン! と金属同士を打ち合わせたような高音が響く。
「――ッ!」
腹に突き刺さった巨大な氷柱を認識した太古の竜から、炎が消えていく。
ズズン、と<ジュラック・ギガノト>が崩れ落ち、フィールドから姿を消した。
同時に、竜美の場の伏せカードも、氷柱によって大穴を開けられていた。
「いい読みじゃない。私の伏せカードは<炸裂装甲>……あのまま攻撃してきていたら、<グングニール>は破壊されていたわ」
少年が果たせなかった思いを、自分が代わりに果たそうと。
その思いを果たしたところで、少女に残るものは何もないというのに。
「……<グングニール>の効果発動。手札を2枚捨てて、<ジュラック・ギガノト>と伏せカードを破壊する。タービュランス!」
<ジュラック・ギガノト>の周囲に氷の屑が集まり、カキン! と金属同士を打ち合わせたような高音が響く。
「――ッ!」
腹に突き刺さった巨大な氷柱を認識した太古の竜から、炎が消えていく。
ズズン、と<ジュラック・ギガノト>が崩れ落ち、フィールドから姿を消した。
同時に、竜美の場の伏せカードも、氷柱によって大穴を開けられていた。
「いい読みじゃない。私の伏せカードは<炸裂装甲>……あのまま攻撃してきていたら、<グングニール>は破壊されていたわ」
<炸裂装甲> 通常罠 相手モンスターの攻撃宣言時に発動する事ができる。 その攻撃モンスター1体を破壊する。
ティトの戦術を素直に褒める竜美。
だが、ティトの表情が和らぐことはない。
「バトル。<グングニール>で<ジュラック・ヴェロー>を攻撃。フリージング・ランサー!」
氷の龍の口に青色の光が収束し、内部の紅色の光が輝きを増す。
放たれた蒼は、瞬時に<ジュラック・ヴェロー>の体を貫く。
だが、ティトの表情が和らぐことはない。
「バトル。<グングニール>で<ジュラック・ヴェロー>を攻撃。フリージング・ランサー!」
氷の龍の口に青色の光が収束し、内部の紅色の光が輝きを増す。
放たれた蒼は、瞬時に<ジュラック・ヴェロー>の体を貫く。
【竜美LP3200→2400】
それだけでは止まらず、竜美のすぐ側に着弾した光は、恐竜たちの熱気で温まっていた床を再び氷漬けにする。
「チッ……<ジュラック・ヴェロー>の効果発動! 表側攻撃表示のこのカードが戦闘で破壊されたとき、デッキから攻撃力1700以下の<ジュラック>を特殊召喚出来る! 来い、<ジュラック・ガリム>!」
<ジュラック・ヴェロー>の置き土産として現れたのは、ダチョウのような嘴を持った恐竜だ。腹に付いた太鼓のような部分からは、やはり炎が迸っている。
「チッ……<ジュラック・ヴェロー>の効果発動! 表側攻撃表示のこのカードが戦闘で破壊されたとき、デッキから攻撃力1700以下の<ジュラック>を特殊召喚出来る! 来い、<ジュラック・ガリム>!」
<ジュラック・ヴェロー>の置き土産として現れたのは、ダチョウのような嘴を持った恐竜だ。腹に付いた太鼓のような部分からは、やはり炎が迸っている。
<ジュラック・ガリム> チューナー(効果モンスター) 星2/炎属性/恐竜族/攻1200/守 0 このカードが戦闘によって破壊され墓地へ送られた時に発動する。 相手は手札を1枚捨ててこのカードの効果を無効にする事ができる。 捨てなかった場合、このカードを破壊したモンスターを破壊する。